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当初構想『パラドクス研究所の迷宮』(パラドクス自己解説・その5)

自己解説・その4までは重く堅めの話が続いたので、今回は少し話題を変えて、パラドクスのゲームがどのようにしてできたか、経緯を記したい。

1.パラドクス研究所の迷宮

僕の好きなものを色々詰め込んだゲームにしたい、という想いがあり、これらの要素を「パラドクス」という切り口で横軸を通して描く、というコンセプトはわりとすんなり決まった。

が、どのような舞台で、どういったキャラを出すかということに悩んだ。

パラドクスの元ネタは、数理系のものが多いことから、謎の研究所を舞台にするという方向で当初(2021年秋から冬あたり)は考えていた。

『パラドクス研究所の迷宮(仮)』である(なお「パラドックス」とするか悩んだが、タイトルの語感を考え、「ッ」は外す表記とした)。

当初構想していたキャラ達。

キャラはそれぞれ、パラドクスの概念を体現する存在としていた。

左から、双子(地球にいる子と宇宙船に乗る子で時間の進み方が違う、粒子・反粒子)、主人公(自己言及)、猫の子(シュレディンガーの猫)、自分の体を自分で手術しまくって姿が変わるミイラの子(テセウスの船)、ギャンブラー(モンティホール問題、パスカルの賭け)、ドアにたどり着けないと言い張ってコタツの中にカメのように引きこもる子(連続体仮説)である。

ステージも考えていた。

左上:猫の子の部屋、右上:研究所の倉庫、
左下:カフェ、右下:研究所の廊下。

怪しい場所をクリックしてヒントを探し、謎解きをして、ストーリーを進めていく形である。

ストーリーは
・主人公が、猫の子から研究所内の探索を依頼される。
・一人称的に探索していくが、実は主人公は犬であり、その後、人間の体を得る(その後、三人称視点へ)。
・各キャラ(パラドクス)と遭遇し、謎を解いていく。
・研究所からの脱出を目指して先へと進んでいく。
・すべての謎を解いて脱出できると思いきや、空間が歪んでおり、元の場所に戻ってくる。
・最後に、ラスボスである黒の女王(ブラックホールを体現。目に見えないのでキャライラストには描いていないが存在する)が目覚め、すべてが飲み込まれそうになる。
・各キャラたちと協力し、無限の時間の果てにホーキング放射によってブラックホールを蒸発させる(が、黒の女王も無事であり、ハッピーエンドを迎える)。
というものであった。
(それぞれの要素が少しずつ形を変えて、『パラドクス研究部の解けない謎のナゾとき』のストーリーとなっている)

六角形をモチーフに、それぞれのキャラのマークなども考えていた。

が、なぜ「6」なのか?という必然性がなく、この違和感がどうも払拭できなかった。
また、研究所と言われても、人それぞれ思い描くイメージが違うだろうという懸念が大きくなった。
このため、多くの人が共通認識できる舞台として、学校を舞台とする方向に転換した。
(学校は、中学とも高校とも、どちらともとれるようにしたつもり)

2.パラドクス学園のマッドな実験

科学系の部活で、怪しいキャラがマッドな実験をする、という方向で考えた。

レミ(当時まだ名前はないが)の初期稿。

マッドサイエンティスト的な性格が出るような表情にした。ゴーグルをかけさせ、それを指で上に上げている絵にしようかと思ったので、手がこうした形になっている。

パラドクスに関する実験を次々と行って、学校どころか、世界を滅亡に追い込むというストーリーを考えていた。
しかし、2022年年始の世界情勢を受け、マッドはいけないと思い直し、学生たちが困難に立ち向かうという王道の物語とすることにした。(僕は創作に時事ネタを入れるつもりはないが、今を生きている人間が創作をしている以上、現実の動きから無縁ではいられないと思っている)。

このため、レミは当初のマッドキャラから一変して、頼れる姉御肌のキャラとなった。

一方で、どうしても狂気的な要素も必要であることから、もう一人のヒロインであるカサコが、その役割を担うことになり、カサコは色々な面を持った性格となった。

そして学校を舞台としたことで、学校の七不思議になぞらえて、パラドクスの数を六から七とした。

キャラは、各自がパラドクスを体現する存在とするつもりであったため、7人のキャラ(7つのパラドクス)を出す予定で、レミやカサコも、パラドクスのキャラの一人、という位置づけであった(レミがゼロ、カサコが無限をそれぞれ体現)。

パラドクスのキャラたちが所属する部活同士のバトルという案も考えた。

最終の第七パラドクスを体現する存在は、パラドクス研究部の創始者である初代部長(レミは二代目部長)とするつもりだったが、目に見えないことを表現するために、写真を黒塗りにすることを考えた。
が、これはいじめを想起させるリスクがあり、そうした話にしたいわけではなく、あくまで人間を超えたパラドクスの性質を強調したいことから、パラドクスは「現象」であり、キャラがそのパラドクスの力を使う、という位置づけに変更となった。

3.第零パラドクスの転換点

どのパラドクスを「七大」として位置づけるか、ゲーム部分をどうするか、小噺、部室の会話、用語解説はどのようなものをどの順番でどう出すか、などなど、2022年春頃に全体の構想を詰めていった。

しかしこれが想像以上に大変なボリュームで、頭が完全に追いつかなかった。

物語を生み出すには、頭の中でこねくり回す必要があるが、一度に強く意識できる量には限りがあり、これを超えてしまったのだ。

取り上げたいパラドクスについて記憶はしており、いわばストレージとしての僕の脳みその容量はあったのだが、メモリに相当するものが足りなかった。
このため、パラドクスを紙に書き出し、できるだけ脳みそと一体的にしてメモリを疑似的に拡張しながら、取り上げるパラドクスとその配置を決めていった。

このとき、パラドクスの王道とも言えるタイムパラドクスを扱うかどうかが、一つのポイントであった。

しかし、時間ものを入れてしまうと、話が広がりすぎてきりがなくなる恐れがあること、エントロピーの増大を強調するためには、時間遡行はない方が良いこと、などを考えてタイムパラドクスはあえて外した。

こうしてパラドクス研究部を舞台に、七つのパラドクスを解いていくという現在の形がほぼ決まったのだが、何か物語が単調で、起伏に乏しいという思いがつきまとった。

そんなモヤモヤを抱えていたある日のこと。ふと、第零パラドクスを思いつく。これを第七の前に挿入することで、それまでの話の転換を行うというものである。

パラドクス的にも、ストーリー的にも、これによって一気に物語の姿が(僕の中で)明確となった。

(パラドクス自己解説・その5/了)

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