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さよならムーンサルト

プロレスラー、武藤敬司が2023年2月21日のNOAH東京ドーム大会にて引退した。レスラー生活38年。日本のみならず、世界中のファンを魅了してきた。私も武藤敬司に魅了された1人である。97年、小学2年生の頃だっただろうか。親が買ってきた週刊プロレス(※プロレス専門雑誌)に武藤さんがいた。それは新日本プロレス東京ドーム大会の増刊号だった。今でも鮮明に覚えている。武藤敬司の化身、グレート・ムタと佐々木健介の化身、パワー・ウォリアーの一戦を何ページにも渡り掲載していた。初めてプロレスというものに触れたファーストインパクトとして、この一戦は十分過ぎるものだった。試合の詳細については、新日本プロレスワールドで観られるので割愛。赤黒のペイントをしたムタとシルバー一色のパワー・ウォリアー。こんなの印象に残らないわけがないよね笑。そしてこれは私の持論なのだが、プロレスを見た人は好きか嫌いの2極にはっきり分かれると思っている。それくらいインパクトが強過ぎるジャンルなのだと思う。そして、当時小学2年生だった私は、まんまとプロレス大好き人間となってしまったのである。

武藤敬司の魅力はなんなのだろう。なぜこんなに多くの人を魅了するのだろう。昔、天龍さんが引退する直前に書いたことがある。天龍さんが多くの人を魅了する大きな要素の1つは、時代に順応するクレバーさにあると。時代の変化についていけず、業界を去った選手を何人も見てきた。天龍源一郎は移り変わりの激しい業界で自身のアイデンティティを絶やさぬまま生き続けたのである。

では、武藤さんはどうだろう。確かに、時代に順応するクレバーさもあると思う。だが、彼の一番大きな魅力はそれではない。めちゃくちゃ考えた結果、嗚呼、これかと納得出来る点を発見した。

それは今回の大会名にもなっている「LOVE」である。武藤敬司はプロレス愛が誰よりも強く、ファンはそこに魅了されてきたのだ。自身のプロレス愛を包み隠すことなく、己のプロレス道を突き進んだ。そして、その強欲とまで取れる強い信念とこの業界はかなり良い形でマッチングしたのである。

わたしは東京ドームで武藤さんの引退試合を観戦した。最後の最後、武藤さんの希望で蝶野正洋選手、タイガー服部レフェリー、そして実況辻よしなりアナウンサーが実現。小学生の頃、深夜の1:00-3:00、家族が寝静まったのを見計らい、夜な夜なストーブをたいて、ワールドプロレスリングを観るためにテレビに齧り付いたあの頃の風景がそのまま目の前に繰り出された。

武藤さんにはたくさん元気を頂きました。わたし自身も「LOVE」を体現していきたい。誰かを魅了できるそんな人にわたしもなりたい。


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