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環境配慮建築から宇宙建築まで、建設業界のイノベーションを牽引する ―enXross協賛企業インタビュー・鹿島建設

皆さん、こんにちは。
enXross事務局です。

日本最大級のエンターテインメントシティ・東京ドームシティの新プロジェクトenXross(エンクロス)は、デジタル技術を活用した経済圏創出や、お客さまの感動体験アップデートの実現を目指す取り組みです。

こちらのnoteでは、世界のエンターテインメントとイノベーションの交差点・enXrossのプロジェクトに携わるスタッフや、web3・ブロックチェーン領域の有識者、協賛企業の皆さまへのインタビューを通じて、イベントのビジョンと魅力などをお伝えします。

今回は、enXrossゴールドポンサーで、日本の建築界を支える1社である鹿島建設株式会社の皆さんに、建築業界でのデジタルテクノロジー活用と、「宇宙建築」の取り組みについて、お話をうかがいました。


変化を続けるニーズに対応 環境配慮型社会の構築に挑戦する鹿島建設

― enXrossにゴールドスポンサーとして参画されている鹿島建設さんは、スーパーゼネコンの1社としてご存じの方も多い企業ですが、事業の概要と特徴を教えていただけますか。

松井さん 当社は建設事業だけでなく、不動産開発も中核事業にしています。建設および不動産開発においては、日本国内だけではなく、海外に現地法人をおいて取り組んでいることが私たちの特徴のひとつです。

技術開発では安全性や品質に対しての信頼性の高さにフォーカスしていて、例えば国内であれば、他社に先駆けて制振や免震構造の建物をつくるなどしてきました。


鹿島建設株式会社 イノベーション推進室 次長の松井康史さん


大野さん 
昨今は、脱炭素やサステナビリティの観点を重視するお客さまが増えています。環境配慮設計は私たちの得意とするところですので、ニーズにあうような設計、あるいは稼働後もエネルギーコストが少ない建物、環境負荷の低い建物の設計が増えています。


サステナビリティやSDGs(持続可能な開発目標)の重視が叫ばれる
昨今だが、鹿島建設はかねてから環境配慮建築に積極的に取り組んできた

建築とブロックチェーン 高い改ざん耐性に着目

― 脱炭素社会の実現に貢献すべく、2022年には、コンクリートの製造・運搬時のCO2排出量の見える化への取り組みを発表されました。一見縁遠く思う建設業界とデジタルテクノロジーですが、この取り組みにブロックチェーン技術を活用されていますね。

松井さん 建設会社が扱うもので非常に炭素排出量が多いのは、鉄骨、鉄製品、あとはコンクリートです。コンクリートがプラントで製造されてから現場に運搬されるまでの間にどのようにCO2を排出し、どんな形で現場に入り、最終的にどう建物の一部になったかというトレーサビリティをしっかりと管理し、それが改ざんされない形で外部からも確認できるようにするためには、真正性・透明性・改ざん防止性のあるブロックチェーン技術が非常に適していると考えて、実証実験をはじめたところです。

web3やブロックチェーンの技術を直接的に建設業で使うのはなかなか難しいですが、トレーサビリティ管理には非常に可能性を感じています。

その他には、契約管理にも使えると思っています。建設プロジェクトには非常に多くの関係者がかかわります。一口に契約と言っても、お客様や協力会社との契約、建物ができた後、所有権が変わっていく中での契約などさまざまあり、そういう契約にブロックチェーン技術は使う余地があるのではないでしょうか。

とはいえ、技術の成熟や、技術に対する世の中の一般的な認知度の向上が伴わないと、すべての契約をブロックチェーンで進めていくのは難しいとも思いますね。

― そうですね。イノベーション推進室に所属されている松井さんは、web3やブロックチェーンなどのデジタルテクノロジーや、社会の価値観の変化に日々触れていらっしゃると思います。デジタルテクノロジーにどんなインパクトを感じていますか?

松井さん 「分散」はやはり一つのキーワードでしょう。これまでの中央集権的な考え方から離れることは、技術的な話に留まらず、これからの時代に合っていると思います。

私たちは建物というリアルなものをつくることを生業にしていますが、建物をつくる前には設計が必要で、これはある意味、バーチャルな領域です。今後はフィジカルとバーチャルの融合が進み、メンテナンスや建物の所有権を移す際にデジタルツインを想定顧客に渡すといったことも起きると思います。そのときにもブロックチェーンが改ざんを防止したり信頼を担保したりしていく技術のひとつになると期待しています。

― デジタルツイン、さらにメタバースは、バーチャルの空間ながら建設にかかわりが深いところですね。実際に進んでいる取り組みもあるのでしょうか。

大野さん 最近、宇宙ビジネスの話題を多く聞くようになりましたが、宇宙空間で居住環境を構築することは建設業界の役割だと思っています。鹿島建設では月に居住区をつくることをビジョンに「宇宙建築プロジェクト」を進めていますが、すぐに実現できるものではないので、まずはメタバース等での構築が有効であると考えています。


鹿島建設株式会社 イノベーション推進室 担当部長(宇宙)で、
京都大学大学院総合生存学館(思修館) ソーシャルイノベーションセンター
SIC有人宇宙学研究センター SIC特任准教授も務める大野琢也さん


人類が宇宙空間に「滞在」ではなく、「生活」をすることが実現性を帯びてきていますが、低重力空間に長期間滞在すると再び地球の重力環境に戻り暮らすことが困難となる可能性があります。自分の意志で月に行く第1世代はある程度覚悟の上かもしれませんが、現地で生まれた第2、第3世代になると、意図せず地球に自力で立てない可能性がある。そのような状況を防ぐため人工重力施設「ルナグラス」を構想し、メタバース空間に再現したいと思っています。現状でのハードルは、人が乗れるような実験施設をいかにつくるかだと考えています。


宇宙空間で人工的に重力を発生させ、地球に近い居住環境を再現する
「ルナグラス」のイメージ図

イノベーションを起こすには偶然を起こす「場」が不可欠 ― enXrossへの期待

― 今回、enXrossへ協賛した理由を教えてください。

植村さん きっかけは東京ドームさんに誘っていただいたことでした。

私は営業担当で外回りをしているため、ブロックチェーン、web3といった単語を聞いても、正直なところ、全くわかりませんでしたし、会社がどんな反応をするか、どんな対応ができるかも想像できませんでした。それでも調べていくと、ものすごいことが起きそうだぞと感じましたし、ブロックチェーンやweb3は、近い将来、自社のためにもなる可能性を含んでいるとも思えました。それで社内に働きかけてみたところ、松井さんたちが属するイノベーション推進室にたどりつきました。個人的には、新たな知識を吸収するきっかけを今回いただいたのはよかったなと思っています。

鹿島建設株式会社 営業本部 営業部 営業部長の植村直弘さん


松井さん
 私たち建設会社は、デジタル領域は決して得意ではありません。ですから、新しい取り組みを考えたり始めたりするときには、建設業界の中で生まれたアイデアよりもスタートアップ企業やまったく違う業界のアイデアの方が意外とマッチすることは珍しくなく、外部と協業しながら技術実証する場を提供するなどのかかわり方をしてきました。

web3、ブロックチェーンに関しても、オープンイノベーションで進めていきたいという思いがあります。

― やはり、外部の方々との共創が重要だということですね。さまざまな人が訪れる東京ドームシティという場所に感じる魅力などはありますか?

松井さん そうですね。東京ドームシティはアミューズメント施設やホテルなどがある複合エリアで、用途についても、コンサート、スポーツなど多様です。いろいろな利用の仕方がある非常に面白い場所だと思っています。

デジタルやメタバースの世界なら何でもできると思われがちですが、実際何らかのイノベーションが起きるには、人と人とが会うことが不可欠で、しかも、予定してない人と出会ったときにこそ、イノベーションは起こるという実感を私は持っています。そういった意味で、デジタル化が進んでも、リアルな場所が大事なのは変わりません。

複合エリアである東京ドームシティ、そしてenXrossでは、想定外のつながりができたり、新しい発見をしたりもできるだろうと楽しみです。

― enXrossでは会場展示もされるそうですが、内容について教えてください。

大野さん 人工重力施設「ルナグラス」をJAXA(宇宙航空研究開発機構)が月面で発見した溶岩孔内でつくってみることや、木星ならどうかなど、いろいろな構想をしていますが、このままでは地に足がつかないため、地上で過重力施設をつくりたいと思ってきました。

地上で回転させることで1G以上の重力を生み出し、体に負荷をかけていくのですが、これは遊園地施設と親和性があるものと言えます。ですから、東京ドームシティの施設に隣接したところに、人が乗れる実験施設をつくり、アピールしていけたら有効なはずです。これに関連するポスター等を展示する予定です。


人類が宇宙に飛び出し、長期間生活する未来は
そう遠いものではないかもしれない

― enXrossが掲げる「エンターテインメントとイノベーションの交差」を実現する展示になりそうですね。建築業界でのデジタルテクノロジー活用から宇宙建築まで、鹿島建設さんの取り組みに今後も注目していきたいと思います。本日はありがとうございました。


東京ドームシティの新プロジェクトenXrossについてはhttps://www.tokyo-dome.co.jp/enxross/をご覧ください!

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