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羅生門 柳生街道の思い出

黒澤明監督の羅生門を見たのは家族でハイキングに行った奈良の柳生街道でロケをしたと知ったからです。

柳生街道は柳生新陰流の里、柳生から奈良、若草山にいたる古道です。途中、春日大社の神山、春日山を通るので手付かずの広葉樹の原生林を通ります。これが一種の神秘体験でした。子供だったんだけど、自然の恐ろしさにびっくりしました。真っ暗な中、木漏れ日だけが頼りです。夕日地蔵なるところに至る道もあり、いい加減な父の案内で日没が迫り、恐怖におののき、自然の闇にびっくりしました。

子どもだったから、強烈な体験でした。今はどうかな。結構、開けてるのではないのかな。元々は生活道だったらしいですが、車が当たり前の時代になってました。ハイキングもさびれてた時代だったので、荒れていたのかもしれません。うん、今、鬼滅の刃ブームで人来てるみたいですね。

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 映画雑誌を見てみると、この地で黒澤明がベネチアで大賞を撮った羅生門が撮られているではありませんか。見るとあの時の自然の凶暴さがよみがえってくるのですね。作品のテーマである人間の心の不確かさがあの森にぴったりです。そして、名撮影監督の宮川一夫の渾身の野外撮影でそれが再現されていました。

たまらない野蛮さ、若さの青春の野蛮さが漂ってくる映画でした。三船敏郎の肉体と京マチ子の肉感がたまらないのね。表題にもなった、京都の場末の羅生門の降る土砂降りの雨のなかで語られるおどろおどろしい話。

勢いがある。ああ、確かにええもんでけた、海外に見せたいって思いますわ

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あの頃1950年代、60年代の時代劇は江戸時代を生きた人の話を直接聞いた人がまだいて、電灯がなかった時代の闇やそこにある自然の恐怖を実感できたんだと思います。戦争で南方のジャングルを体験してる人もいるわけだし。

今見ると、羅生門は実験映画めいてピンとこないかな。私も黒澤明を全部見たんではないけど、用心棒とか、仲代達也が出てたりして見やすいかな。

でも、実体験を伴った羅生門は私にとって自然の凶暴への恐怖の記憶なんですね。

うん、黒澤明はデルス・ウザーラも好きなんですね。やっぱり大したもんだと思うよ。


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