いちごのショートケーキ
1996年に発表された華原朋美のうた、「I'm proud」の歌詞で「いちご」が出てくるのは彼女が提案したことらしい。女の子がいちばん好きなものだからだそうだ。その話を聞いて、いちごはケーキに乗っているいちごなんだと私は感じた。
人混みをする抜りぬける 大人が誘いの手を引く と二番の歌詞がはじまり、I'm proud 届きそうでつかめない いちごの用に 甘く切ないこと 夜中思い浮かべていた と続いていく。
小室哲哉の歌詞だけど、恋人同士だったふたりがあの時代経験したこと、その当時の若い人が経験したこと、あの時代を知るものが感じていたところに刺さっていたなと思う。そういえば、浜崎あゆみがデビューしたのもそのあとすぐだ。彼女もガリガリで寄る辺ない不安定さとゴージャスさがいりまじった歌を歌っていた。かつてクリスマスの子供の夢だったショートケーキは、温室栽培のいちごが安定的に出るようになって、ふつうに食べられるお菓子になった。でも、やはり、いちごと生クリームで出来てるので、すぐいたんでしまうのだ。このケーキはアンデルセンのマッチ売りの少女の人混みのなかの死にいたる甘やかな夢のまやかしのお菓子に似ている。夢をみることの絶望と若い人の不安定さにぴったり寄り添ってやさしい。
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