まさか失効6時間前に電撃的な延長となるとは思いませんでした。政府もマスコミも、数々の予想を的中させてきた韓国ウォッチャーさえも想定しておらず、昨夜は半ばパニック状態でした。

ニュースやワイドショーを見ていると、意図的なのか単純に分かってないのか、フッ化水素など戦略物資の輸出管理とGSOMIAをセットで伝え、まるで韓国への制裁であるかのように「輸出規制」と言う。それってもう韓国側の策略に乗ってるよなと疑問に感じます。

韓国側の会見要旨

韓日両国政府は最近、両国間の懸案を解決するために、それぞれ自国が取る措置を同時に発表することにした。韓国政府はいつでも日韓軍事情報包括保護協定の効力を終了できるという前提で２０１９年８月２３日の終了通知の効力を停止させることにし、日本政府はこれに対する理解を示した。韓日間の輸出管理政策対話が正常に行われている間、日本側の３品目の輸出規制に関する世界貿易機関（ＷＴＯ）提訴の手続きを停止することした。

これについて解説を試みます。

韓国側の主張は何か

先日の発表について韓国の主張は以下の4点です。

1.GSOMIAを終了するとした通告を停止する
2.いつでもGSOMIAを終了させることができる
3.輸出管理について対話が進むならばWTOの提訴を取り下げる
4.現在の状況の根本的な原因は日本側にある

先日noteで書いたとおり、韓国は徴用工→輸出管理→GSOMIAと無関係な物を次々と連結させ、我々がこのようなことになったのは日本の世だという形を作り上げました。（アメリカに喝破されましたが･･･）

「延長」ではなく「終了通告の停止」。フッ化水素などの輸出管理について日本が元通り優遇しないならば我々はいつでもGSOMIAを破棄できるという脅しを含ませているのが見て取れます。引き続き、道徳的な優位性は韓国側にあるという立場なのですね。事実、金有根・国家安保室第1次長は「韓国政府はいつでも協定の効力を終了させることができるとの前提」と説明しています。

フッ化水素の優遇を元通りにする協議に応じるならばWTO（世界貿易機関）への提訴はしないでおいてやると上から目線で語ったことからも、自国民に対しては引き続き「悪いのは日本」というスタイルを貫くと思われます。

経済産業省の会見要旨

これに対して日本の経済産業省はすぐさま会見を開きました。

1.GSOMIAと輸出管理は別モノ
2.韓国はWTOの提訴を取り下げた
3.韓国に輸出管理改善の意思があるならば、まずは会合（対話）を行う
4.会合と協議は別
5.日本は輸出管理について一切譲歩していない

ある意味で分かりやすい韓国側の勝手な主張と違い、経済産業省の話はちょっと分かりにくいので解説してみます。

輸出管理のおさらい

高純度のフッ化水素は核兵器や毒ガスの開発に使われます。なので日本から輸入する国や企業は、使用先を日本の経産省へ細かく申請しなければなりません。ホワイト国とは申請手続きを簡略化する物であり、日本側が「よし、この国はちゃんと管理している。細かい申請ではなく毎年の事後報告だけで良しとしよう！」と認めた場合にのみ適用されます。

しかし、韓国はこの3年間、義務である事後報告をしていません。それどころか日本からの呼びかけを完全に無視し、対話にも応じなかった。だから日本は「韓国は管理できているか分からないので、ホワイト国から除外する（＝輸出管理強化）」となりました。

これに対して韓国はブチ切れた。我々を信用しないのか！　これは日本による経済報復である！　徴用工裁判が気に入らないからと報復を仕掛けてきた！　と。輸入したフッ化水素を何に使ったか言えば良いだけの話なのに、話をすり替えたのですね。

でも、韓国の主張に対して他国は冷淡でした。ASEANでも、APECでも、欧州歴訪でも、片っ端から「知るかよ、日本と直接話せや」と言われて終わり。そこで韓国は考えました。そうだ、アメリカを仲裁に引っ張りだそうと。アメリカが深く関与したGSOMIAを破棄するとチラつかせれば、いつものように日本を叱りつけてくれるはずだと。

結果はご存知の通り、アメリカの政府関係者や議会関係者数十人から「GSOMIAを維持しろ！」と叩かれまくったのです。

困ったのは青瓦台（韓国大統領府）。国民に対して日本が悪いと連呼し続けてしまったため、今更後には引けません。世論調査でもGSOMIA破棄を支持する意見は過半数を超えました。

そこで韓国側は日本に対して「振り上げた拳を下ろす名分を日本側で用意してくれ」と言うようになったのです（11/21 NHKニュースウォッチ9でソウル支局長のコメント）

すごいだろ、この言い草。