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音程の合うオーケストラになるための5つのステップ

音を物理的に表す4つのパラメーターは、基準周波数(音程)、波形(倍音構成つまり音色)、エネルギー(強弱)そしてそれらの時間変化(発音、余韻など)だ。

この4つのうち、心地よい音楽を聴いてもらうために何が最も重要だろうか。それは間違いなく音程だ。音程がとれていないソロは大概聞くに耐えないが、音程の合っていない合奏ほど聞いている者にストレスを与えることはない。音程の合っていない合奏は苦痛だ。

しかし演奏する側からすると、アマチュアの場合、音程の合っていないのが当たり前になっていることが多い。だからその苦痛に気づかない。しかし一度でもピタッと音程の合った瞬間を体験すれば、音程のずれている合奏やアンサンブルが苦痛で仕方がないことになる。

音程は訓練すればきちんと取れるようになる。あきらめないで練習することが肝心。

管楽器はバルブやキーがあるので、指使いさえ正しければ、それなりの音程で演奏できてしまう。しかし「それなり」とは、半音の半分程度のずれまで含むのだ。だから意識して音程を狙っていかないと、いつまでたっても正しい音程で吹けるようにはならない。もちろん、楽器をきちんと鳴らせていて、コントロールできていることが大前提。そして重要なのが、狙うべき音程を頭の中に正しく持っていることだ。

パート練習や合奏で音程の合わない箇所だけ、なんとか合わそうとする。何度も何度も繰り返して。残念ながらこういったやり方では、心地よいポイントを奏者全員が狙えるようになるのは永遠に不可能。無駄な努力だ。一つの音を絶対値として合わせるのは意味がない。基準となる音程は演奏中、常に変化しているのだから。

絶対値を合わそうとするのではなく、前の音と次の音との間隔を合わせることに集中しなければならない。メロディーを声に出して歌ってみてほしい。最初の音をピアノかチューナー で確認してからだ。そしてフレーズの最後の音をチューナー かピアノで確認してほしい。正しくとれていただろうか。

一人一人がこの訓練をし、音程感覚を取れるようになれば、ハーモニーは苦労せずに合わせられるようになる。

フルーティスの私の場合は、チェロを借りてかなり練習した。スコアを見ながら、全ての楽器のラインを歌うこともやった。そうして自分で全部頭に叩き込むのだ。

ステップ順に整理すると次のようになる。

1. 各自が自分の楽譜の正しい音程を狙い撃ちできるようになること。

音程間隔を意識し、覚えるようにする。長2度(全音)と短2度(半音)の違い、ちゃんと意識していないと意外とできないものだ。完全5度、長3度、短3度、6度、7度など、メロディーのなかできちっと意識して歌えるようになること。チューナー やピアノで最初と終わりの音を確認するやり方なら一人でできる。

1) まずはピアノで弾きながら歌う。
2 )それで正しい音程が歌えるようになったら、ピアノなしで歌い、1小節ごとにピアノの音で確認する。
3) 音程の確認を各小節から4小節、8小節、16小節と、徐々に間隔をあけていく。

ちゃんと歌えるようになれば、音楽が見違えるほど楽しくなるはずだ。音感のしっかりした人に聞いてもらってマンーツーマンで指導してもらうのも良い方法だ。

2. 楽器を持ち、同じように音程間隔を意識して演奏する。

かなりできるようになっているはずだ。開放弦という基準のある弦楽器奏者も、フラット系の調性ならば、ピアノやチューナー などの基準を持つことも良い方法だ。

これを毎日練習することによって、早い人で3日、遅い人でも半年もたてば、きちっとした音程で歌い、楽器が演奏できるようになる。

3. 二人でハーモニーを合わせる練習をする。

デュエットの練習曲などの楽譜を利用したら良い。一人で正しい音階がわかって演奏できるようになったら、違う音を出している人同士でハーモニーを作る練習をする。まずは二人でだ。できればそのうちの一人は先生など音程の確実な人であることが望ましい。一つ一つの音がきれいにハモるように。怪しくなってきたら、ピアノやチューナーで確認すること。そこでずれていたら、もう一度最初からやり直す。ずれている音だけを合わせても無意味である。すべての音程を意識してお互いの音を聞いてハーモニーがピタッと合えば、メロディーも伴奏も、ものすごく気持のいいものになる。

4. 大人数でユニゾンを合わせる。

ユニゾンを合わせること、特に三人以上でやるのは、実は非常に高度な技術を要するのだ。ユニゾンがピタッと合った瞬間は、音がものすごく広がって響くはずだ。そういう瞬間を探してほしい。

5. 合奏でユニゾンとハーモニーを合わせる。

例えば1st ヴァイオリン12人がユニゾンを響かせ、2nd ヴァイオリン12人とのハーモニーを響かせる。これ実は非常に高度なことをしているのだ。ピッコロとフルートがオクターブのユニゾンを合わせる。これも人間の可聴領域の限界に近いところで、しかもピッコロ奏者本人にしてみれば「耳を塞ぎたくなるほどうるさい」音を出しながらなので、簡単なことではない。ピタッと合った瞬間を体感する。そしてフレーズの中でずっとピタッと合っている。それができるようになれば、音程を合わせることは特別な技術でないことになる。


音程は、ピタッと合っている以外は、ものすごく外れていようが微妙に外れていようが、聞いている人にとっては、外れているのに変わりはない。ピタッと合ってはじめて気持のいい響きになる。だからこのピタッと合う体験を一度でもできた人は、微妙に合っていないのでもすごく気になるもの。みんなが合っていなければ誰に合わせていいのかわからない。音程が合っているのが当たり前のオーケストラにできるか、誰も音程を合わせられないオーケストラなのか、そのどちらかしかないということ。音程の合うオーケストラになるには、一人ひとりが上記の練習をきちっと踏んで音程感覚を身につけることだ。

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