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問題解決力〜このマガジンが目指すもの

IoTや機械学習できるAIがますます発達する昨今です。これまで当たり前にあった職種が消滅し、新たな職種が生まれ、産業構造が大幅に変化するであろうと言われています。これが第4次産業革命と呼ばれるゆえんです。

そんな新しい社会はもうすぐそこまで迫っています。これからの時代に必要な能力やスキルはこれまでと同じでしょうか?若いうちにどんな経験と学びを積み、どんなスキルと能力を身につければいいのでしょうか?

このノートではこれからシリーズとして、私のこれまでの長年のイノベーションの現場で、グローバルな技術リーダーとしての経験から、未来に必要なスキルを紐解き解説し、その学びの方法を紹介していくつもりです。

多くの人が将来それぞれ自ら選んだ道で活躍されることを応援したいと思って書いていきます。初回はその前提となる、第4次産業革命とその後に私たち一人一人に必要となるスキルについてまとめました。

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第4次産業革命が起こっている

私たちは、今まさに第4次産業革命の真っ只中にいます。何が第4次産業革命を引っ張っているのでしょうか。コンピュータで制御されるIoTと呼ばれる様々な機械です。IoTはInternet of Things、つまりインターネットで繋がれた(パソコンなど以外の一般の)物のことで、新しいものが続々と出てきて世の中はどんどん便利になってきています。

例えばAmazon USではDash Buttonなるデバイスが$4.99で売られています。これは例えばお気に入りの洗濯洗剤を使い切った時、洗濯機の横に貼り付けておいたこのボタンを押すだけで、あなたのお気に入りの洗剤がAmazonで発注され、数時間以内から翌日までには届けられるというものです。いちいちパソコンやスマホで発注しなくてもいいのです。台所洗剤のボタンをキッチンの横に貼り付けておく。コカコーラ6本入りパック、ケチャップ、牛乳などそれぞれのボタンを冷蔵庫に貼り付けておく。無くなったら必要なもののボタンを押すだけです。配送は人件費のかからないドローンによって完全自動化されつつもあります。

これだけユーザーにとって簡単でかつ安く買い物ができるということは、例えばパソコンが不要であったり、トラック配送の人出が不要であったりします。つまり「人の作業」が減るのです。そしてそれは直接あるいは間接的に、人の仕事が機械やコンピュータに置き換えられているということなのです。

そしてそれら様々なIoTを制御するアルゴリズムや、膨大な情報の宇宙の中から必要な情報を見つけ出すアルゴリズムは、ML(Machine Learning=機械学習)のできるコンピュータを活用したAI(Artificial Intelligence=人工知能)によって制御されるようになってきています。身近なところでは、Google翻訳やTeslaが既に実用化している自動運転自動車などがあります。これらは目に見えるほんの一例に過ぎず、その他にも目に見えない様々な部分でビジネスの最適化などでMLとAIが活用されています。

過去の産業革命と不要となった人たち

IoTやML、AIが変えつつある産業社会が第4次産業革命と呼ばれ、その後の社会はIndustry 4.0とも呼ばれます。そこでは今当たり前の職業が機械に取って代わられることになります。どんな職業が機械に取って代わられるでしょうか。それは過去の3度の産業革命を振り返れば想像できます。

第一次産業革命はスチームエンジンで機械を動かすことによって社会の仕組みが大幅に変わりました。それまで手工業として作られていた衣類などは、多数のミシンをエンジンが一手に回すことで、一人当たりの生産高は大幅に上がりましたが、それまでの手工業のマイスターたちは、ごく一部の高付加価値をつけられる職人以外は不要となり、多くの人は機会のオペレーターとなるか、その他のことを始めなければなりませんでした。

第二次産業革命は電気機器を活用した大量生産でした。これによりさらに単位生産高あたりの人の数が減ることになりました。この頃からサービス産業というものが勃興してきます。そこでも例えばスーパーマーケットなど、人手をかけずに大量に商品を売ることのできる仕組みが出来上がったりしました。

そしてコンピュータを活用したオートメーションが第三次革命で、ここでも人手は大幅に減ったわけです。そして新たにIT分野というものが生まれ、多くの人が従事しているのが現在です。

第4次産業革命で機械に置き換えられるであろう仕事

では今後どのような仕事が消えて機械に取って代わられるのでしょうか。いくつかのカテゴリーに分けられるでしょう。

一つは、繰り返し作業です。商店の店員はますます不要になります。日本は自動販売機の先進国としてすでに世界を先行しています。銀行もさらにATMやインターネットバンキングが主流となり、店舗は激減するはずです。機械が高度化すると、ますますオペレーターが不要になります。バスやタクシー、電車は全てが無人という時代はすぐにやってきます。ホームにドアが設置されてくれば、駅員も不要になります。オフィスで決まり切った書類の処理をする事務職も不要になります。

2番目のカテゴリーは、手に技術を持っている技術職ですが、これも安心はしていられません。外科手術は2年前の時点でロボットの方が人間の手より上回っているという結果が示されました[1]。薬剤師もどんどん不要になりますし、AIが自らコンピュータ・プログラムを書く時代もすでに始まっています[2]。

将来消滅するであろう仕事の3番目は、いわゆるマネージャーです。部下に仕事をさせるマネージャーでも特に中間管理層は、組織の中でのIT化が進むため、今後ますます邪魔になり不要となります。さらにネットでコミュニケーションの垣根がなくなる昨今、大組織の中で仕事をせずとも、自分の能力とスキルを生かして個人で独立するフリーランスが加速度的に増えています。アメリカでは2027年はフリーランスで仕事をする人の数がなんらかの組織内で仕事をする人の合計より増えることが予測されています[3]。

機械に置き換えられないために必要なスキル

機械はAIでますます賢くなり精度も上がってくる。ではどんなスキルを持っていれば人として社会で必要とされ続けるでしょうか。それは問題を定義し解決する力(problem definition & solving)です。これ以外にはないと私は言い切ります。

問題解決とは、小さな例をあげれば、どうすれば嫌いな上司とうまくやっていけるかとか、どうすれば自分の仕事の効率をあげられるかとか、身の回りの実際の問題のことです。

問題を解決する前に、問題を正しく定義することは非常に大切です。間違った問題を解決しても意味がありませんが、この無駄が実に多いのです。アインシュタインは「世界を救うのに1時間だけ時間を与えられたら、私は55分を問題の定義に費やし、5分で解決するであろう」と言っています。私は製造プロセス・エンジニアとして、生産ラインでの品質向上と信頼性向上、生産コスト低減の仕事をしていたました。生産ラインはものすごい良いものになったのに、作っていた製品そのものが全く売れなかった。つまりその商品設計そのものが正しくなかったのです。

ビジネスで売れる商品を開発する、あるいはもっと巨大な問題、例えば世界規模で起こっているプラスチック廃棄物、地球温暖化、貧富の格差、宗教観対立などの問題解決となれば、到底AIなどができる話ではありません。これらを解決するには人間の能力が必要です。しかも一人でできることではありませんから、そこにはリーダーシップ(leadership)協調性(collaboration)が必要となります。

そして多くの場合、問題解決には(リーダーの)決断力(judgment & decision making)が必要になります。データが十分にない場合も決断をしなければいけないことがほとんどです。つまり頭ではなく腹で決めることが必要になるのが世の中の現実です。そうしなければ世の中のスピードに追いつかないからです。

一方、科学的手法(scientific method)を習慣として使えるセンスと考え方が身についていなければなりません。世の中で盛んに言われているリーン・スタートアップはビジネスに科学的手法を応用することに他なりません。科学的手法をきちんと使えるためには、自分の思考を客観的に観察し評価するcritical thinkingが必要不可欠ですし、もちろん創造性(creativity)も重要です。

そしてそれらチームとしての活動を支えるのがコミュニケーション能力インフルエンス(influence)力です。インフルエンスには適切な日本語がありません。Oxford Dictionary of English(英英辞典)には”the capacity to have an effect on the character, development, or behaviour of someone or something, or the effect itself”と定義されています。つまり、命令や地位の力を使わずに、他人の行動や考え方や成長に影響を与えることです。

そのためには、心の知能指数(emotional intelligence)と、年齢や性別、国籍、宗教などにとらわれずに様々な人の能力を最大限に引き出す多様性を活用(leveraging diversity)できる器量が必要不可欠です。

そしてこれらのスキルの底辺に当たることは、自分自身の内にあるパーソナル・リーダーシップ(personal leadership)と、人のため、社会のために心から尽くそうと思えるサービス精神(service orientation)です。

これらスキルをピラミッドに示したのが最初の図です。

これらが積み上げられてこそ、複雑な問題を解決することができるようになります。これからの世の中は、こういったスキルを身につけた、あるいはそこを常に目指しつつ切磋琢磨できる人がもっと多く必要になります。そしてこれらスキルは、学びと訓練の方法によって自分で身につけることができるものです。

今後、これらスキルについて私の経験や様々なケース・スタディを紹介しながら、定期的に紹介していき、多くの方の将来の夢を実現する一助になりたいと考えています。


Reference
[1] Strickland, E., Autonomous Robot Surgeon Bests Humans in World First, IEEE Spectrum, May 4, 2016
[2] Boyd-Rice, J., New A.I. application can write its own code, Futurity, Apr. 25, 2018
[3] Kasriel, S., 4 predictions for the future of work, World Economic Forum, Dec. 5, 2017

Header Image: llustration of Industry 4.0 by Christoph Roser at AllAboutLean.com.

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