VICTORIUSのライブへ行ってきた
9月9日、ドイツのパワーメタルバンドVICTORIUS(ヴィクトリアス)の来日ツアーの初日、代官山UNIT公演へ行ってきました。バンドの来日は4年ぶり2度目とのことでしたが、なにしろ、わたしにとっては2020年1月に出会った『スーパー・ソニック・サムライ』の衝撃以来、コロナ禍を挟んで3年半以上もの間待ちわびたライブだったから、一報を聞いたときはそれはもう喜んだ。今回は、東京の2か所と埼玉での追加公演を含めて計3日間にわたるツアーで、その名も「偉大なる恐竜たちのツアー(The Great Dino Tour 2023)」!
VICTORIUSはライプツィヒ出身のパワーメタルバンド。いくつかのリリースのあと、2018年のアルバム"Dinosaur Warfare - Legend Of The Power Saurus" から急激に路線転換、10歳の男子のハートでサイボーグ恐竜のカッコよさを高らか歌い上げるバンドに。続く2020年の作品、太陽の裏側からやってきた悪のニンジャ集団の復讐をテーマとした壮大なスペースオペラである"Space Ninjas From Hell"で世界観を確立しました。
このアルバムが、上記のnote記事で書いた通り『ニンジャスレイヤー』ファンであるわたしにあまりにもストレートに刺さってしまい、すぐにでもまた来日アルバムツアーがあるものと期待していたら、あえなくコロナの時代に突入。苦難を経て2022年に発表された最新アルバム"Dinosaur Warfare Pt. 2: The Great Ninja War"では、前々作の「恐竜」と前作の「ニンジャ」を足し算すれば最強になるという緻密な算数のもと、またしてもMVの超かっこいい"Dinos And Dragons"のような新たな名曲が生まれました。
今回の見どころとして、ツアー名の称する通りこの最新アルバムを中心とした構成と、久々の来日ツアーで、サムライやニンジャをテーマにしたあの曲やあの曲はやるのかという期待がありました。ほかに、事前にいくつかライブ映像を見て、シンプルに演奏技術やステージングが上手いというのは知っていたので、一度でいいから生で聴いてみたかった。この日、いよいよその念願が叶いました。
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開演は17時半。UNITはクラブ営業のときに何でも遊びに行っているハコだけど、バンド形式のライブ、ましてや共演を含めてメタルバンドオンリーのライブは初めてでわくわくした。まず、店の前にずらっと並んだ入場待機列のお客さんの9割以上が黒いTシャツなのに面食らった。まるでドレスコード。
前座で登場したFATE GEARとImperial Circus Dead Decadance、どちらも自分のとっては未知の世界でおもしろかったです。特に後者はメタルという音楽で表現したいものが明確で、熱狂的なファンたちの宗教的な陶酔ぶりも含めて、ショーとして最高でした。演奏技術が高いのもよく分かった。
VICTORIUSは20時からの登場。ファンの熱気はすごく、転換で薄く流れている彼らの曲で既にフロアのヴォルテージが上がり始めていて、Super Sonic Samuraiではもう完全に合唱が始まってしまっており、ステージ上でセッティングしていたギターのDirkが苦笑いしていたのが印象深かった。
初手、"Dinos and Dragons"からのスタート。バンドメンバー5人揃って、黒のタイトなアンダーウェアの上に、MVと同じおもちゃみたいな黄金のアーマーを装着している。地を這うようなドコドコしたツーバス、激しく歪みながらもクリーンなギターが重なって鳴り響くと、サイバーグラスをかけて登場したヴォーカルのDavidが録音と同じ、よく通るハイトーンの声で歌う。本物のVICTORIUSだ!
わたしはフロアの中央やや右寄りあたりで見ていました。お客さんは本当に老若男女、けっこうなお年の方もいればイヤーマフを着けたお子さんも見かけて、幅広い層に刺さっているんだろうなと思った。コアなメタラーの方はもちろん、普段全然馴染みのない自分のようなのまで聴きに来ているのだし。それが、揃いも揃ってVICTORIUSの歌を聴き込んでいて、よく歌う! 全曲コール&レスポンスで、要所要所で大合唱の起こるインタラクティブなステージだったのでした。
3曲目にして、チャイナタウンでの壮絶なシュリケン・バトル・トーナメントを歌った"Shuriken Showdown"。セットリストを振り返ってみると、最新アルバムから6曲、前作から6曲、その前のものから1曲という構成でした。前作で深くバンドに親しんだファンも多いと見えて、恐らくはコロナで叶わなかった前作リリースツアーをも意識したサービスたっぷりな選曲でした。聴きたい曲はだいたいやってくれた。
\マイティ・マジック・マンモス!/
アルバムの世界観に関して、前作と最新作の大きな違いは、VICTORIUS自身が前作では竜王Dragongodを頂く悪の復讐ニンジャ軍団に与していたのに対して、黄金のアーマーを着込んだ今回は地球の守護者である復活の恐竜神Dinogod軍団の一員としてダイナソーと共に戦っているという視点の違いです。つまり地球の存亡をかけたニンジャと恐竜の戦争なのだ。
VICTORIUSの大好きなところは、別に人生にとって有益なアドバイスや意味深なメタファーとかもなく、ただ単に小学生男子のピュアな心で好きなものを好きなように、ただし究めた技術で真剣にかっこよく歌うというのを徹底しているところです。このある種信仰のようなスタンスは、わたしからすればジャンルの壁を越えて音楽の楽しみそのものであって、彼らがJ.S.バッハの街ライプツィヒから出てきたというのもまさしく納得なのでした。
Davidがどこからか持ってきたフラッグを掲げると、そこには母なる地球を司る恐竜神のシンボルが描かれており、"Victorius Dinogods"ではまさにその恐竜の復活を讃える。ファンはみんなこの名曲を聴き込んでおり、フロアにマイクが向けられるたびにチャントが沸き起こる。ダイノ・ゴッズ!
そこから立て続けにあの"Super Sonic Samurai"! 共演のFATE GEARのNANAさんが飛び入りで参加して、レーザーカタナをハイアップトゥーザスカイしていました。最高の瞬間。
エンディングテーマめいた壮大な"Cosmic Space Commando Base"では、Davidが煽って観客をジャンプさせる。揺れるフロア! 彼は流暢な英語でMCも行っていて、総じてフロントマンとして旺盛なファンサービスを見せてくれました。
前作から"Evil Wizard Wushu Master"までやってくれたあと、ラストは日本向けファンサの極致"Nippon Knights"! この曲は4年前の初来日のときの映像がそのままMVになっていて、わたしなんかは何度このMVを観て再来日を願ったことか…。やっと実現したんだなあという思いです。
サムライ、ニンジャに始まるVICTORIUSの日本推し、個人的にはもうそこまで日本でなくても全然いいのだけど、最初のフックに勘違い日本要素があったのは間違いなくあるから、嬉しいことは嬉しい。何より、彼ら自身が今回のファンの熱量に驚いていたように見えて、それがまた嬉しかった。次のアルバムがニンジャ、恐竜を経てどんなテーマの作品になったとしても、また絶対日本には来てほしい。
ファンの期待に応えてくれたバンドに対してもそうだし、この来日ツアーの実現に向けて準備してくださった関係者の方々の情熱にも感謝したいです。いま円安の外タレ来日ラッシュでハコを抑えるのも大変と聞いたから…。期待に違わぬ一生もののライブでした。VICTORIUS本当にありがとう!
🥷当日のセットをSpotifyプレイリストにしておきました🦖
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