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ゴールドシップは隠したい

ウマ娘の耳は正直だ。

宝塚記念、ゴルシは盛大にやらかした。
既に2連覇、マックイーンが春天で3連覇を逃したこともあり、より一層気合を入れて挑んでいたのだからプレッシャーも相当だったに違いない。本番前に声を掛けたときにはいつも通りの気丈な振舞いで追い払われたが、その耳はたしかに強張っていた。ゲートでは様々なことを思い出していたのだろう。そんなときに隣のウマ娘がエアシャカールときたもんだ…ああなるのも無理もない。いくらゴルシとはいえ相当メンタルにきたようで、夏合宿に向かうバスの中でも―――

「トレーナー?トレーナーったら!本日はこれでおしまいですの?」
「おっと…すまない。うん、今日はこのあたりにしておこう」

ついつい考え込んでしまっていたようだ。合宿も3日目。丸一日練習に充てる夏合宿ではケガも起こりやすい。それに今日は夏祭りなので早く切り上げることにしたのだ。

「そんじゃアタシ、ハヤヒデとタイシンと夏祭り行ってきまーす!」
「ブ、ブルボンさんはもう支度すんでるのかな…はやく着替えなきゃ…」

チームメンバーの多くは一緒に回るメンバーがいるみたいだ。マックイーンは?と尋ねると、
「実はその、イクノさんに誘われてまして…べ、別に特に変な意味はありませんわ!それより…」
何を恥じらう必要があるのか。紅潮したマックイーンはこう付け足した。ゴールドシップがまだ落ち込んでるようだから話に乗ってあげてくれ、と。
幸いなことに今年は夏祭りの見回り当番もなく、まだ時間がある。ゴルシはどこかと探そうとした矢先、

「お前は夏祭りどうすんだ?行くやついねーならアタシが同行してやるよ。もちろんトレーナーの奢りでな!」

背後から馴染みのある声が聞こえてきた。しかしマックイーンの言う通り、声の調子にキレがない。

「そうだね、今年は一緒に行こうか。なにが食いたい?」
「オメーやけに素直じゃねーか!アリでも食ったか?病院ならアタシの足でひとっ飛びだからよ」
「体調は大丈夫だよ。長い付き合いであんなゴルシ見たのはじめてで。せっかくだから今日くらい好きにしてもらいたくて」
「んじゃお好み焼きと~カラシたい焼きと~…想像しただけで腹減ってきた!行くぞ!はやく!」

段々といつものゴルシが戻ってきて自然とこちらも笑顔になる。これで元気を取り戻してくれたらと思い耽っていると、合宿所にダッシュで向かうゴルシが突然歩みを止めた。

「やだ、ゴルシちゃん惚れちゃったかも~///」

いつものふざけた調子でそんなことを言うゴルシの耳は、彼女の勝負服と同じくらい真っ赤に染まっていた。


ウマ娘の耳は正直だ。

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