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「なんかいいなぁ」と思わせるシズル感の見つけ方・使い方

noteで連載しておりました「じぶん編集」の授業の書籍が10月25日に発売します!

今回は、この『うまくやる~コミュニケーションが変わる25のレッスン~ 』の第2章の一部を公開します。

▼第1章の一部公開はこちら▼

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「なんかいいなぁ」と思わせるシズル感の見つけ方・使い方

コマーシャルで目にする炊きたてごはんの湯気、ビールのポスターに出てくるジョッキやグラスの水滴、人間をより健 康的に若々しく見せるお化粧。全ては、そのものをよりよく見せる演出です。その演出を見つけ理解することが、じぶんの表現の幅をさらに広げます。

モノや人を魅力的に感じさせる演出

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🐻「シズル感を征する者は、表現を征するとは、誰が言ったのか、僕が言ったのかもしれませんが、『シズル感』という言葉をご存知でしょうか?」

👩「まったく知らないです(笑)。」

🐻「僕が教鞭を執っている大学の二十歳前後の学生に問うても、 8割が「知らん」と答えるので、知らなくても大丈夫です。
シズル(sizzle)とは、お肉を焼いた時に出る「ジュージュー」という音の ことを言います。お肉がジュージュー焼ける音を聞くと、ほとんどの人がお肉を食べたくなる、という効果から転じて「モノや人をより魅力的に感じさせる演出」のことを「シズル感」と呼んでいます。
これは、1937年にアメリカの経営コンサルタント、エルマー・ホイラーが書 いた「ホイラーの法則」の中で語られていたことです。
人の深層心理といった心理学のお話にもつながるのですが、現代でもいろいろな側面でこの演出に出会います。」

👩「へー、例えばどんなものがあるのですか?」

🐻「有名なものだと、ビールやコーラのポスターに出てくるジョッキやグラスの水滴がありますが、これはビールやコーラがキンキンに冷えていたほうがヌルいものよりもおいしい!というニーズからの演出です。
最近では凍っている演出のものもありますね。他に言葉や数字や音や香りにも、このシズル感の演出があります。
もっと言えば、主に女性がお化粧するのも世間がイメージする「女性」という像をより魅力的に、健康的に演出しているということでもあるのです。」

👩「えっ、お化粧もシズル感の演出なんですか!じゃあ、魅力的に見せるものは全てシズル感ということ?」

🐻「大きく括ればそうなります。では、このシズル感を別の角度と事例から見ていくことにしましょう。」

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「おいしそう!」を連想させる言葉

🐻「例えばレストランのメニューに同じ値段で「グリーンサラダ」と「シェフの気まぐれサラダ」という種類があるとします。あなたはどちらを選びますか?」

👩「断然「シェフの気まぐれサラダ」です。」

🐻「やはりそうですか。同じ質問を先ほどと同じ大学のクラスでした時も8割以上が「シェフの気まぐれサラダ」を選ぶと答えました。
では、この言葉を要素分解してみましょう。冷静に考えてみると『シェフの気まぐれサラダ』は、シェフが気まぐれでつくるサラダなので、かなり独創的なものが出てくる可能性も否定できないわけですが(笑)、大方の人は気まぐれを選びます。なぜでしょうか。これには大きく2つの理由があります。 ひとつめはシェフがきちんとメニューを考案して、手間暇かけてつくってくれているというイメージの後押し。ふたつめは気まぐれ=明日は内容が変わっているかもしれないので、いましか食べられないという限定感の後押しです。
このふたつで、実際は何がどうだかわからないサラダなのにもかかわらず、イメージだけで「よさそう!オーダーしてみよう!」って思ってしまうものなのです。」

「安い!」と見せる数字

🐻「次は数字です。チラシを見て、980円や、 2万9800円の数字が多いのはなぜなのでしょうか。」

👩「これ、わかります。お得に感じるからですよね!」

🐻「では、なぜ1000円や3万円と比べて、20円と200円しか違わないのに大層お得に感じてしまうのでしょうか。」

👩「 なぜって言われると、わからないものですね。」

🐻「このわけは、1000円や3万円といったキリのいい数字を「高い」という思い込みがあって、そこから少しだけ金額を落としたものと比較して判断する評価関数が頭の中でグルグルするのがその理由です。
ちなみに1000円が980円になるような、桁が少なくなる演出のほうがより効果的だと言われています。
また、だいたいのチラシには定価にバツをつけて値下げ後の値段を書いてお得だと感じさせるようなアカリング効果(下図)を狙っているものも多いです。」

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アンカリングとは?
売るほうが先に提示した価格や情報が、買うほうの購買判断に大きな影響を及ぼす心理効果。


感じのいい人のシズル感を探す

🐻「何気なく過ごす日常の中にも、誰かが意図的に演出したものが無数にあり、その ルールを私たちは無意識のうちに理解し、従っているということを理解いただけたで しょうか?ここに挙げた例はほんの一部です。
無数にあるコードを探すために、日常をよく観察してゲームのように楽しんでください。それが発見できれば、例えばお料理の盛りつけ方にもシズルが大いに関係があることを発見し、自分でも応用できるようになります。」

👩「お店のパスタとかも、クルっとしてあって、出てくるだけでおいしそう、とか?」

🐻「そうですね。それは食べ物に高さを出しておいしさを演出しているのです。お店で食べるパスタってお皿の面積に対して半分くらいで、トングでクルっと捻りながら盛りつけ、三角錐みたいになっている。それに対してあなたの家でつくったパスタはどのように盛りつけられているでしょうか?」

👩「えーっと......。彼が来たときなんかは......。」

🐻「みなまで言わなくても、大丈夫です(笑)。
シズル感は、どんな演出にも、とっても重要な概念です。例えば人においても、 かっこいい芸能人はかっこいいシズル感の演出を、かわいい芸能人はかわいいシズル感の演出をそれぞれ巧みに利用しています。単に顔やスタイルがいいだけじゃない、シズル感の演出もあっての芸能人なのですね。対象が芸能人じゃなくても、感じのいい上司や、近所の人、友達、じぶんがいいなぁと感じている人のシズル感を見つけてみることも、ぜひやってみてください。具体的には、何かを引き立てるために、何が作用しているかという関係を探してみるといいでしょう。」



『うまくやる』「なんかいいなぁ」と思わせるシズル感の見つけ方・使い方 より引用

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本書では、下記の4つのチャプターに分け、コミュニケーションを「うまくやる」コツをまとめています。

(1)じぶん自身を、うまく掘り下げる
(2)じぶんを演出して、うまく魅せる
(3)コミュニケーションをデザインして、うまく伝える
(4)トレンドを読み、うまく発信する

今回のnoteに掲載したストーリーは、第2章「じぶんを演出して、うまく魅せる」から引用しました。10月25日の発売に向けて、各章の一部をnoteで公開します。

また、Twitterでも書籍の発売までの様子や書籍の一部を公開しています。

よりわかりやすく、より理解していただけるようにと、内容を磨いてきた本です。どうぞよろしくお願いいたします。


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