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講義を「なぞる」

今日は一日かけて、90分(プラスアルファ)の講座の録音からテキストを起こす作業をした。先生がご自分の話を原稿や本にまとめたりするために、わたしもしばしば頼まれる作業だ。ものすごく時間がかかるので、何名か発注先をお持ちなのだ。

イヤホンをしてパソコンに文字を打ち込むのに何時間も集中していると、家族には「家のこともしないでそんなことばっかり」 と苦言を呈されることがよくある。
しかし、わたしはこの作業を嫌嫌やっているわけではないし、「タダ働き」だと思ったことも一度もない。自分がやりたくてやっているのだ。

今は技術も発達しているし、アウトソーシングの時代でもある。少しお金を払えば自動文字起こしソフトを買えるだろうし、仕事として誰かにお金を払って作業を依頼することもできる。
それでもわたしがこれほどモチベーション高く、文字起こしの作業をやれるのはなぜだろう。

まず、単純に先生の話を聞くのが楽しい。一度聞いた話であっても、先生の語りには何度も聞きたいと思わせる魅力がつまっている。

次に、先生の役に立てる喜びをわたしが感じている。原稿をなるべく読みやすい形に調えることで、先生の仕事をしやすくしたい。しかも先生の本が世に出ることは、わたしにとってはもちろん、世の中にとって良いことでしかない。一人でも多くの読者に先生の話を聞いてほしい。つまり、本を通じて先生の語りがより多くの人に届いてほしい。

ひとつ前の投稿で「まねる」 について考えたことを紹介した。先日行われたこの講座のDAY2は「なぞる」がテーマだったのだが、文字起こしという作業はまさに「 なぞる」行為だ。
先生の肉声を聞いて、テキストを起こす。つまり講座をなぞるということだ。

先生の語りの特徴が、耳で聞いているときよりもよくわかる。
いわゆる口癖のようなものはあまりなく、その代わりに特徴的な言い回しがある。倒置がたびたび起こる。脱線もたびたび起こるが、本題に戻るときはハラハラしている(かもしれない)聴講者をひと笑いさせてからスッと戻る。
現役時代の学生とのやり取りがユーモラス。先生は教えることが好きだったんだなということがよく伝わる。
会話の再現が秀逸。記憶力もすごい。臨場感を出しながら書籍の引用をするその仕方がすごい。
などなど、数え上げればきりがない。

ピンマイクが拾う声の大小、音の響き方、服のこすれる音や聴講者のリアクションも聞こえる。その場にいなくても感じられる臨場感を、しっかりと文字にしていくことは難しい。でも、どういう形に先生が仕上げられるかはわからないし、テーマから逸れる部分はカットされる可能性が高いものの、講義の楽しさそのものはなるべく表現できるといいなと思っている。
そうすると原稿の編集作業も多少は楽しんでやっていただけるかもしれない。

講義を「なぞる」について、走り書きだけれども書き残しておく。

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