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読んだ本、観たもの

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「ぜひだれかとシェアしたい!」と思った本や展示を書き留めています。同じものを読んだり観たりした人、これ読みたい観たいと思った人と「スキ」やコメントでやりとりできたらうれしいです。
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記事一覧

ウェイリー版「源氏物語」の沼にはまる

2024年のNHK大河ドラマは「源氏物語」の紫式部が主役なんですよね。楽しみー! いまから2年前の春、私はずぶずぶにはまっていました。源氏物語の沼に。 きっかけは仕事のご縁で、100年前にアーサー・ウェイリーが英語に訳した源氏物語の日本語訳を読んだこと。 ちょっとややこしいですが、 1000年前に紫式部が書いた源氏物語を、 100年前にイギリス人のウェイリーが英語に訳し、 そのウェイリー版を日本語に訳し戻した本 を読んだのです。 ウェイリーの訳は100年前のイギリ

『最前線に立つ研究者15人の白熱!講義 生きものは不思議』ーー鯨骨生物群集とバイオロギング編

読書週間ですね。今日のような夏日と読書週間のとりあわせはややちぐはぐ感もありますが、気温はともあれ空気はからりと気持ちいい。木陰でのんびり読書するならちょうどいいぐらいかもしれません。 前回のアマミホシゾラフグ編からの続きですが、この記事はこの記事で完結しています。どうぞ気にせず読み進めてください。 本書には、前回ご紹介したアマミホシゾラフグ研究の川瀬裕司さんを始め、わたしがこれまで取材でお話を伺ったことのある、めっぽう魅力的な研究者さんがほかにも二人、名前を連ねていまし

『ヤングケアラー 介護する子どもたち』の記者の姿に心揺さぶられる

『ヤングケアラー 介護する子どもたち』(毎日新聞取材班)を読みました。個々のケースがそれぞれに人生の深みを感じさせ、ケースごとにつまみ読みしていたら止められなくなった本でした。 ヤングケアラーは、「自分が10代のときは大変だった」だけでは終わらず、その時期のことが一生を左右してしまうんですよね。必ずしも負の影響ばかりではないので、一口に「かわいそう」と言うのはおかしいのだけど、それでも、ケアの日常を知ると胸が痛みます。 私が「ヤングケアラー」という言葉に初めて出会ったのは

危険! 時間とお金が溶ける「エルマーのぼうけん展」

数年前、実家で発掘した『エルマーとりゅう』の表紙をあらためて見て、びっくりしたことがありました。いくら逆光の場面を描いたとはいえ、森の中とはいえ、不吉な予感さえ抱かせるほどの暗さ。 足元で円陣を組んでいる鳥の輝きとのコントラストを出そうということなんだろうけど、主人公の顔が逆光でこんなに暗くなってる装画ってなかなかない。 ほんとにこんなに暗いの? もしかして印刷の問題だったりして……と福音館のサイトを覗くと、表紙画像はやっぱり強い逆光。なんならこっちのほうが黒い。 あれ

魚津の「埋没林博物館」で、水底に眠る巨大切り株に息を吞む

とある取材で、富山県にやってきました。海上に幻影のような風景が浮かぶ「蜃気楼」で有名な、魚津という町です。 天気はどんよりとした曇り。こんな日に蜃気楼が見られることはないのだけど、ここには「埋没林博物館」なる不思議な博物館があります。 埋没林って知ってますか? 河川の堆積や火山の噴火で森ごと地中に埋まり、朽ちることなくそのまま保存された森のことだそうです。森ごと地中に……。なんでしょう、このファンタジー感は。 魚津では100年ほど前、海岸工事で広大な埋没林が発見されまし

血沸き肉踊る『最前線に立つ研究者15人の白熱!講義 生きものは不思議』ーーアマミホシゾラフグ編

自分の本をつくるときにひとかたならぬお世話になった研究者さんや、取材でお話を伺ったことのある研究者さんが何人も書き手に名前を連ねているのを見て、即買いしました。 たとえば、アマミホシゾラフグの川瀬裕司さん。 わたしが『アマミホシゾラフグ 海のミステリサークル』という写真絵本をつくったとき、この魚の生態を研究している川瀬裕司さんには実に多くのことを教えていただきました。その川瀬さんが、本書のトップバッター。 アマミホシゾラフグのサークルは「生きものは不思議」を象徴するよう

絵が下手でも自分で線を引いてみたくなる『だれでもデザイン』

去年(2022年)の1月、プロダクトデザインの山中俊治さんと、グラフィックデザインの寄藤文平さんというちょっと異色のとりあわせのトークイベントがありまして。オンラインで聴きました。 本はその前に買ってあったんですけど、トークの日はまだ読んでいませんでした。トークは軽妙で深く、ライブドローイングも見事で、心に水をやるようないい時間でした。 で、後日、あらためて本を開いて読み始めると、この本、思っていたより読者参加型の本だったんです。わたしは文字ならいくら書いても苦にならない

『白黒つけないベニガオザル』は、ボノボ好きにお勧めしたい

ベニガオザルって知ってますか? 文字通り、この本の表紙のように「顔が赤い」サルです。 ニホンザルも秋から冬にかけての交尾期には顔が赤くなりますが、ベニガオザルは顔の皮膚自体が赤と黒のまだらで、ま、一見ちょっとこわい。 でも、ベニガオザルの赤ちゃんは顔はうすいピンク色で毛は全身まっしろ。天使のように愛らしいのです。 ベニガオザルの社会では、この天使が大人の喧嘩の仲裁役をします。その様子は以前、「ダーウィンが来た!」で観て驚愕しました。 類人猿のボノボは、「性行動」によっ

「極楽鳥」展は、鳥とジュエリーの美しさを心ゆくまで堪能できる

東京駅からすぐの「インターメディアテク」ではいま、剥製の鳥の美しさと鳥モチーフの宝飾品の美しさを同時に味わえる超贅沢な展示、「極楽鳥」展をやっています(2023年5月7日まで)。会期終了間際+大型連休で混雑する前に、と、外出ついでに行ってきました。 これはもう、行ける人はぜひ行ってみてほしい。鳥が好きな人も、標本や剥製が好きな人も、アートやデザインが好きな人も、ハイジュエリーが好きな人も、どれにもあんまり興味ないけど映える写真を撮りたい、という人にも胸を張ってお薦めします。

はじめにーー読んだ本、観たもの

面白い本を読んだり面白いものを観たりすると、「うっわ~これシェアしたい!」と強く思うのだけど、写真も文字も両方たっぷり熱量こめて書き残しておきたい、と思うわたしにとって、twitterやinstagramやfacebookはそれぞれ一長一短がありました。 しかしnoteを使いだして9カ月。このプラットフォームならうまくいくかも…と思い始めました。 日記みたいに、「江口絵理の推し本」「江口絵理の推し展示」を記録していきます。同じものを読んだり観たりした人、これ読みたい観たい