見出し画像

性格診断を占いで終わらせない。パーソナリティタイプ診断ツール、MBTIとは?

マイヤーズ・ブリッグス・タイプ・インディケーター(通称MBTI)というパーソナリティタイプ診断ツールをご存知でしょうか。

カール・ユングのタイプ論に基づき、人はそれぞれ異なる選好(preference)を持っており、それが各人の行動パターンを決めるという前提のもと、人を16タイプに分類したツールです。

私たちを支配する「習慣的な行動」と脳

自己啓発本を読んで意識は変わったものの、行動は変わらない。
研修に参加して新しい知識は手に入ったものの、デスクに戻れば昨日までと同じ働き方をしている。

「本当は変えたい、変えた方がいい」と分かりつつも繰り返してしまう習慣的な行動を、私たちは皆それぞれたくさん持っています。

「チャレンジしたい」と思うのに、リスクが目に付いて気付けばいつも安全な選択肢を取っている。
「今この瞬間に全力投球したい」と思うのに、気付けば思考はいつも未来を追いかけている。
「たくさんのタスクをこなしたい」と思うのに、気付けば自分がそれをやる意味を考えて手が止まっている。 などなど

自分という一人の人間の中に、互いに両立し得ないようにも思える相反する二面が存在し、押し合い引き合いを繰り返しているような感覚を抱くかも知れません。
そんな自分を振り返り、自己嫌悪したり、自己啓発本を読んでみたりしますが、また気付くと同じような行動を繰り返していることも多いのではないでしょうか。

私たちの行動を決めているのは、私たちの中にある情報処理システム=脳です。
そのシステムの働き方は人それぞれ異なり、自分自身の基盤システムをマスターすることでしか、行動を本質的に変えることはできません
つまり、自分の脳の働き方を知ることこそ、私たちが理想の自分自身に近付くカギとなると思うのです。

MBTI(マイヤーズ・ブリッグス・タイプ・インディケーター)とは

MBTIは、カール・ユングのタイプ論に基づき、1950年代にアメリカ人のイサベル・マイヤーズとその母が構築した、人を16タイプに分類したツールです。人は異なる選好(preference)を持っており、それがその人の行動パターンを決めるという前提に立っています。

当時第二次世界大戦下で、職歴のない女性たちが突然労働力として駆り出されることになり、その際各人の適性を測り適職をアサインする目的で使われたそうです。

現在、元UCLAの教授であるDario Nardi氏がここに脳科学を掛け合わせ、EEGを用いて各タイプが最上位の知覚機能を使った時に脳にどんな反応が現れるか等の研究を進めており、MBTIを心理学というソフトサイエンス領域からデータの裏付けのあるハードサイエンス領域に持ち込もうとしています。

日本ではまだあまり知名度が高くありませんが、アメリカでは多くの大学や企業等で導入されている、最もポピュラーなタイプ診断ツールの一つです。


個人のパーソナリティタイプは、4種の二項(dichotomy)のうち自分の選好により近い方の頭文字を繋げて「INFP」「ESTJ」のように4文字のアルファベットで表現されます。
(Introversion/Extraversion(内向型/外向型)、iNtuition/Sensing(直観型/五感型)、Thinking/Feeling(思考型/感情型)、Judging/Perceiving(計画型/適応型))※英語のリソースを参考にしており、和訳は私の解釈によります。

これら二項は、人間の「行動」に表出する個人の選好を指しています。他人から見ても比較的捉えやすい特徴と言えるでしょう。

パーソナリティタイプの4つのアルファベットの意味

Introversion/Extraversion(内向型/外向型)
多くの人がなんとなく知識を持っているものの、多少の誤解を伴っていることが多い二項です。
内向型の人は物静かで人付き合いが好きでなく、外向型の人は口数が多くパーティーが大好き、といったイメージがあるかも知れません。
そういった側面もありますが、この二項の決め手は「自分の内と外、どちらの世界をより大切にしているか」です。

高校生を対象にした結果の結果、アメリカでは内向型が25%、外向型が75%と言われたこともありましたが、高校時代はもっとも外向性が問われる時期であること、その他の年代を対象にした複数の調査では内向型と外向型が約50%ずつという結果が出たことから、こちらが正とされているようです。

内向型にとって、真の世界は自分の内側にあり、そこで過ごす時間からエネルギーを得ます。
自分の思考、洞察、価値観、経験等を大切にしており、外の世界からのフィードバックがそれと食い違うことに大きなストレスを覚えます。
よって、他者との交流や外からフィードバックのある活動にエネルギーを奪われ、それが一定量を超えると自分の内に戻る時間を強く求めます。

外向型にとって、真の世界は自分の外にあり、そこで過ごす時間からエネルギーを得ます。
他者と交流したり、外の世界で活動することで自分に返ってくるフィードバックこそが真実だと考えています。
よって、自分一人で過ごす時間や外からフィードバックがある形で活動ができないとエネルギー不足を感じ、他者との交流や外と関わりのある活動を強く求めます。

つまり、必ずしも内向型は孤独を愛し、外向型はいつも人と一緒にいたがるというわけではなく、たとえば家族やパートナーを自分の「内の世界」の存在と見なすようになった場合には、内向型はその相手と四六時中一緒にいても苦を感じないのに対し、外向型はその相手とだけ過ごすのではエネルギーが不足し、辛くなってしまいます。

Sensing/iNtuition(五感型/直観型)
まず、なぜintuitiveの頭文字IでなくNがコードに使用されるかですが、すでにintrovertにIを使われてしまっているためです。

新たな情報を収集したり学習する際の脳の働き方の基盤となっており、4種類の中でもっとも個人に与える影響の大きい二項です。
最も偏りが大きな二項で、五感型が75%、直観型が25%とされています。
今の世の中は五感型を中心に作られているため、直観型の中には「人と根本的に違う」と肩身の狭い想いをしてきた人もいるかも知れません。

五感型は、自分の五感やその他の感覚(時間感覚、平衡感覚他)を使って確かめられる、信頼できる情報を大切にします。地に足がついた人と言えます。
抽象的な話題が長く続くと飽きてしまい、whatやhowに焦点を当てた具体的、現実的な話を好みます。
時間軸では、過去か現在にフォーカスする傾向にあります。

直観型は、直接五感等で確かめられない、物事や言動の背景を知りたがり、パターン認識に基づく推測や洞察を好みます。信頼できるかどうかよりも、情報収集のスピードや読みの斬新さ・深さを大切にします。空想しがちで、斬新な発想の持ち主です。
具体的な話題が長く続くと飽きてしまい、whyやwhat ifを問うような抽象的な話を好みます。
時間軸では、未来にフォーカスもしくは時間軸に縛られない傾向にあります。

たとえば、企業の採用面接でこれまでの経験について聞かれることが多いですが、これは五感型の質問と言えるでしょう。一方、応募者の過去でなく、「こんなことが起きたらあなたはどう対応するか」「この企業の将来についてどう考えるか」等を問う企業には、直観型のリーダーがいる可能性が高いです。

Thinking/Feeling(思考型/感情型)
この二項は、何に基づいて意思決定するかを指しています。(紛らわしい名前ですが、個人が思考と感情どちらで動いているかを指しているのではありません。人間皆どちらも持っています)
思考型が45%、感情型が55%とほぼ半数ずつですが、性別を考慮すると優位な差があります。男性は思考型55%、感情型45%ほどなのに対し、女性は70%が感情型なのです。
思考型の女性の中には、女性の集団の中でやりにくさを感じてきた人もいるかも知れません。

思考型は、データやリソース配分など、人に関係のない情報を基に意思決定をします。人もリソースとして考慮はされますが、あくまで他と並列の一要素です。
意思決定の質を下げないために、他者と感情的なつながりを築くことを割ける傾向にあります。
意味をなさない感情は、自分のものも他者のものも認めません。

感情型は、自分もしくは他者にどのような感情的な影響があるかを基に意思決定します。人の要素に焦点を当てます。
意思決定の質を上げるために、他者のストーリーに耳を傾け、他者と感情的なつながりを築こうとします。
意味をなさないものも含め、自分・他者のあらゆる感情を認めます。

男女間の衝突の典型的な例として、感情に寄り添ってもらうことを期待して悩み事を話す女性と、それに対し「くよくよしていても無意味だ」といって解決策を提示する男性が描かれますが、これはまさに思考型(男性)と感情型(女性)のすれ違いを表しています。

Judging/Perceiving(計画型/適応型)
この二項は、「内の世界と外の世界、どちらに自由を求めるか」を指しています。

分かりにくい概念ですが、内の世界の自由というのは、何にも邪魔されることなく好きに思考活動等を楽しめる状態を指し、外の世界の自由というのは、何にも邪魔されることなく心の赴くままに行動できる状態を指します。

計画型が55%、適応型が45%とされていますが、学校や企業の中では計画型が評価されやすい傾向にあるため、適応型の中にも計画型のように行動することを身に付けた人は多いはずです。

計画型は、内の世界の自由を求め、それを可能にするために自分の外を秩序立てます。
計画を立てたり、早めに意思決定をし、その通りに物事を進めることを好みます。結果、期限のあるタスクはその前にしっかりやり遂げ、人との待ち合わせには時間前に到着する傾向にあります。
また、自分の動きの効率や集中力の妨げとならないよう、整理整頓を好むのも特徴です。

適応型は、外の世界に自由を求め、それを可能にするために自分の内を秩序立てます。
自分の考えや感情を整理し、いつでも必要な情報にアクセスできるように蓄えておきます。結果、アドリブや土壇場対応が得意な傾向にあります。
その時の状況や気分に応じて自由に行動できるよう、きっちりした計画を立てたり、早期に意思決定をすることを嫌い、選択肢を残すことを好むのも特徴です。何か関心を引かれるものに気を取られ、期限や待ち合わせ時間に遅れることも少なくありません。

まとめ

人は、これら4種類の二項のどちらかに100%当てはまるわけではなく、両方の要素を持ち合わせています。より強い方の要素がその人の選好とされます。
たとえば、シーソーの両側が「内向型」と「外向型」だとして、ある人のシーソーが少しでも「内向型」寄りに傾いていれば、その人の選好は「内向型」となります。(両要素が全く同じ比率で、シーソーがどちらにも傾かないことはないとされています)

ある人の選好が、「内向型(Introversion)」「直観型(iNtuition)」「思考型(Thinking)」「計画型(Judging)」だった場合、その人のタイプは4つのアルファベットをつなげて「INTJ」となります。

おまけ

ここまでも面白く、上記に絞って解説しているソースも多いですが、これだけの情報で自分の行動の源泉を知り、更にはそれをより良い方へと変えていくことは難しいでしょう。巷に溢れるたくさんの性格診断と同様、「たしかに当たっている気がするな」と娯楽目的で使われ、数日後には忘れ去られてしまうのが関の山です。

MBTIの真の魅力は、ここからさらに掘り下げ、人間が主に使っている8種の知覚機能の内(Extraverted Thinking、Introverted iNtuitionなど)、個人が特に頼りがち/逆に盲点となりがちな4つの機能を明らかにし、どういった行動をとりやすい傾向かを知ることができる点です。

各知覚機能の特徴、4機能の関係性などをさらに詳しく見ていくと、何度も繰り返される自分の習慣的な行動の引き金になっているものが分かり、どうすれば自分をもっとバランスの取れた状態に持っていけるのかのヒントが掴めます。

MBTIについてはブログにも情報を挙げています。もしご興味があれば以下からどうぞ。
Journey to SELF NY発、MBTIで自分のパーソナリティと脳を知り、ベストバージョンの自分を生きる

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?