38.最後まで心を弄ぶ愚鈍な者

そのうち年が明けてA兄弟は統治体から特別開拓者としての任命を受けることが金曜日奉仕会の最後で発表され、目標の巡回監督への階段を一歩上っていきました。

私はあんな人間でも特別開拓者に任命されるのね、エホバって人間のなにを見ているんだろうか?
あ、そもそもエホバは存在しないんだったと改めて思っていました。

それに伴い彼は異動となり、半月もしないうちに新潟県の会衆へ引っ越すことも同時に発表されました。

発表があった次の日土曜日の群れの奉仕でたまたま彼と私のふたりしか集まりませんでした。

独身男女ふたりきりもどうかと思ったのですが、母と妹が先に再訪問を済ませてあとから来ることになっていて20分程と聞いていたので、私は彼と先に奉仕活動を始めます。

すると彼は母と妹が合流する直前私の両肩に手を置き、

『ERIE姉妹と離れるのは寂しい、(2月1日付で任命&異動となり、私が2月4日が誕生日だったことを知っていたので)ERIE姉妹が20歳になるのを見届けたかった…。』

と涙ぐんで話してきたのです。

この男はまだ私を弄ぶ図太さを持っているのだろうか。

私はここまで経てもまだこの男は私を馬鹿にするのかととても悔しくなり、
涙が出そうになるのを、未練があると勘違いされたくなくて必死で堪えました。

彼が勘違いロマンチストなことを言うたびに、私が呆れて心の中で笑うしかないとは露程にも思っていないのだろうか。

もうどうでもいい、さっさと私の前から姿を消してくれないだろうかと心の中で切に願いました。

1月末で彼はK会衆を去ることになり、最後の火曜日にM家での書籍研究のあとに彼の送別会を開くことになりました。

私は参加したくない早く帰りたい気持ちのみで座っていて、あの小学生の女の子も参加していて、
彼女が彼に抱きついて大泣きし鼻血を大量に出していて、だいぶ引いたことしか覚えていません。

彼女の鼻血を出してまでのあの泣きぶりに彼はなにを感じだろう。
私があの日話したことは思い出しもしないのだろうな。
そんなことをぼーっと考えてその場を過ごしました。

2月に入り私の目の前から彼の存在が消え、私は本当の意味で清々しいきもちとなりました。

さよならA兄弟、もう二度と会いたくない、
ただ新しく異動する新潟県の会衆の、さらに将来異動するかもしれない予定の、さらには巡回監督としてまわるかもしれない会衆の心のきれいな若い姉妹たちの心が弄ばれることはありませんように、
と強く願うだけでした。

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