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3000人の栄養指導で見つけた「やらないこと」

「栄養指導ってマルチタスクでないと出来ないのでは?」
「一度にたくさんのことに気を配らなければならないの、正直大変…。」
栄養指導ってやらないといけないことがたくさんあります。

  • 最初の挨拶

  • 自己紹介

  • 指導の目的の説明

  • 検査値の説明

  • 生活習慣の聞き取り

  • 適切な提案やアドバイス

  • 行動計画の策定

  • 笑顔でうなずきながら話を聞く

  • クライアントの名前を呼ぶ

  • 時間配分

  • 脱線した話を修正する

  • 聞き取った内容をメモする

  • クライアントからの質問に答える

  • 報告書を書く

  • 過去の指導履歴を確認する

  • 検査値を確認する

  • 面談資料を準備する

  • パソコンなどの通信機器を準備する

思いつくだけでも多くのやるべきことがありますし、きっと書いていないこともたくさんあるでしょう。
ここまで書いて、「栄養指導ってこんなにやることがあるんだ…」と正直げんなりしました。

実際に栄養指導の現場に入ったときに、大変さに気づいた方も多いのかもしれませんね。

改めましてこんにちは。北村絵梨子と申します。
2016年より、個人事業主として特定保健指導を始め、栄養指導事業に携わっています。
延べ3,000人以上の方に栄養指導を実施してきました。

SNS(主にX)やメルマガなどで、「教えない栄養指導」について発信しております。栄養指導の経験で学んだこと、実際に感じたことや思いを伝え続けています。
最近では見ていただける方も増えてきました。ありがとうございます!

少し、私の話をさせてください。

私は学生の頃、授業は割と理解できる方でした。なので、友だちやクラスメートに授業の内容を教えることが多かったのです。
私が教えている姿を見て、また別のクラスメートが「教えて」とやってくる。当時の私は、「勉強」というカテゴリーで注目を浴びて、かなり調子にのっていました。

そんな子どもの頃の経験から、「自分の知識を誰かのために役立てたい」という思いが芽生えるようになりました。

友だちやクラスメートに勉強を教え、「ありがとう」と言われる。やっぱり嬉しかったのだと思います。ただ、勉強を教えていた全員が、私の話を理解してくれたわけではありませんでした。
私の妹と、大学の友人とのやり取りは忘れられません。

私が高校生の頃、当時中学生の妹に数学を教えていました。
妹は数学が大の苦手。「数学が得意かも」と勘違いをしていた私は、「この公式を使えば問題は解ける!」と、スキルだけを教えていました。

ですが、公式を使うことに対して腹落ちしていなかった妹にとって、私の言葉は意味がわからない状態。私自身も教えているのに理解してもらえないこと、何度も同じことを教えることに対して苛立ちを感じてしまい、どんどん妹に浴びせる言葉がきつくなっていきました…。最後に妹は涙を流して勉強は終了。
妹は問題が解けない、私も泣かしてしまった後ろめたさから、後味の悪い感覚しか残りませんでした。

大学の友人も同じ理由。塩分濃度の計算に困っていたようなので、使い方を教えてあげました(今思えば、かなり上から目線ですね…)。

塩分濃度の計算も、同じく公式に当てはめれば解けるものでしたが、きっと公式の意味もあまり理解していなかったのだと思います。
教えるために私が使った言葉は、きっと彼女にとっては意味を持たない言葉。そして私自身は、理解してもらえないことにまたまたいらだちを感じ、つい語尾を強めてしまう…。

そして、ポケットからハンカチを取り出し、友人は涙を流してしまいました。あの時の、笑っているのに涙でうるんだ目は今でも覚えています。

「自分の知識を誰かのために役立てたい」という思いはありつつも、「教えること」で誰かを苦しめることもある。
私にとって「教えること」は、恐怖だったのかもしれません。

大学を卒業してから数年後、長年の夢だった栄養指導業務に従事することになりました。

最初は健診結果から数値が悪い箇所を見つけ、原因となっている生活習慣を予想し、話す内容を決めて栄養指導に臨んでいました。
「自分が話すと決めた知識」を話すために生活習慣を聞き取り、一般的に良くないと言われている生活習慣について、自分の持っている知識を伝える栄養指導。
今思えば違和感があるのですが、やりたい仕事に携われることが楽しかったですし、今まで必死に勉強したことも活かせていると感じていました。

ところが正しい知識を伝えても、生活習慣の改善につながらない、体重が減らない、健診結果の改善に繋がらないなど、どうも成果が出ないことに気がついてしまったのです。

「正しいことを伝えているのに、どうして行動してくれないの?」
「いい話が聞けましたと感想ももらっているのに、実際に取り組んでくれないのはどうして?」

良かれと思ってやっていることが本当に正しいことなのか。だんだんとわからなくなったのです。

もしかすると、「自分の知識を伝えるため」という体で、クライアントのできていないところ、悪いところを知らず知らずのうちに探していたのではないか?

何のために栄養指導の仕事をしているのか、目的が見えなくなりました。

もやもやでいっぱいになったある日、とある管理栄養士さんの栄養指導講座を受講しました。
次の日の栄養指導で、講座で学んだことを実践してみたところ、クライアントが話す時間が2倍に増え(私の体感ですが)、「これやってみるよ」と行動につながるコメントを頂けるようになったのです。

その後、
「半年で3kgの減量に成功しました」
「夕食後のポテトチップスを卒業できました」
「散歩の習慣が身につきました」
とクライアントの行動が明らかに変わってきました。
成果が出るようになったのはもちろん、私自身も「栄養指導が楽しい」という気持ちを思い出せるようになりました。

栄養指導以外の時間でもスキルを活用することで、新たな仕事の依頼が舞い込んだり、家族や友人との関係が良好になったり、SNSで多くの方と繋がることができ、リアルでお話ができたり、事業を立ち上げる話になったりと、大きく変わることができました。

私が取り組んだことは、栄養指導を自分目線から相手目線に変えることでした。クライアントの思いを聞く栄養指導にやり方を変えたのです。
講座で学んだやり方が私の栄養指導のベースになります。ですが、その後3000人以上の方に指導をする中で、私が大切にしていることが少しずつ見えてきました。

記事の最初に、栄養指導でやらないといけないことをたくさん挙げました。もちろん、必要なことではありますし、「栄養指導のやり方」を学ぶ上で、やるべきことを一つずつ出来るように取り組んでいくことが、上達のポイントです。

ですが、あえてここでは、「栄養指導でやらないこと」について書いていきます。私自身、栄養指導しかやってこなかったので、ベースは栄養指導での経験です。ですが、普段のコミュニケーションでも活用できます。ここからは、5つの「やらないこと」をご紹介します。


言い訳をしない

「◯◯さんは◯ヶ月で何kg減らしたいですか?」
栄養指導で減量目標を立てる際に、最初に聞いていた質問です。

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