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ワインの飲みごろ

桜に見ごろがあるように、ワインにも飲みごろがある。

少しずつ酸化したりする関係で、タイミングごとに味が変わっていく。同じワインでも、開ける時期により味が変わる。

タイミングの「まだ早い」とか「ちょっと過ぎた」とかを避けるために、ワイン飲みたちは「最高の状態」を待ったり、「そろそろかな」とかを探したりする。

飲みごろを知るのは、経験をもとに、そのワインの諸条件を詳しく調べるとだいたいわかったりする。自分の手元に届くまでの保存状態がわからない場合もあり、一筋縄ではいかないことも、あるにはある。

そのあたりは難しい話なので割愛するが、ここらへんも、ワインって難しい、と思われる部分。だって、ジンもウォッカもウイスキーも、よほど保存状態が悪くなければ、何年たってもほぼ同じ味で、ガッカリすることは(わたしの知る限り)ないから。

知識も経験も必要なく、ワインのボトルの中の正確な状態がわかって、飲み頃まで示してくれるチェックマシンがあったら、ノーベル賞ものだろう。

そんなこんなで、知識あるワイン飲みは、何年もたった「早飲み用」ワインを買ったりしないし、飲み頃を過ぎた高級ワインも買わない。おいしくない可能性が高いから。

でも、なんというか、微妙なタイミングのものってある。

最近、近所のスーパー「モノプリ」で、どこから出たかわからない半端モノ特売ワインが売られるようになった。だいたい元値の3割〜5割引。スーパーなのであんまり高いものはなく、デイリーから週末用という品揃えだ。

たとえば、これ。

2010のボルドー、ポムロール、ボナルグ、27.9ユーロでだいたい3600円。どうだ、賭けだけど、うーん、10年後かーイケそうだけど、うーん、どうだろうー。。。。

安くはないけど、結局特売価格に負けて、購入。飲みごろ、ほんのちょい過ぎてた気がするけども、週末家飲み用には、値段考えるとアリだった。

このギリギリのスリル感。絶対失敗したくない勝負。

でもそれよりも、「今のギリギリを救ってあげないと、この子は廃棄処分なんだろうか」と考えてしまう。

誰にも見つけられないまま、誰にも飲まれないまま、このボトルは冷たいスーパーの倉庫の中で、ワインとしての生を終わらせてしまうんだろうか。

そして、レスキュー隊の気分で勝負に出てしまう。

旬がちょっとくらい過ぎても、いいじゃないか。

自分らしい楽しみ方を見つけようぜ、である。

上のワインはほんの一例。5年くらい前ビンテージの早飲み用白ワインが置いてあることもザラで、わたしは「うわー、ぜったい酸低くなってそうだけど試したい」と、うっかり買ってしまう。

やっぱり開けて「酸低いしマッタリしてるー(笑)」になるわけだけど、グラスに注いでしばらく置いておくくと酸化のニュアンスが出て、「なんか高級っぽくなった!」なんてことも、たまにある。

飲みごろは正確にわかったほうがいいし、お客様に提供するならプロとして間違うべきではない。でも、家での楽しみ方としては、飲みごろのギリギリのとこ攻めるのも、楽しい遊び。

そう、ワインも、自由にやればいいのだよ。

と、咲きほこるパリの桜を見ながら思う春。

パリはまた、ロックダウンになりました。

写真は、17区マーチン・ルサー・キング公園の日本の桜。




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