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パリ1日1話 7〜マダムとマドモワゼルの話

 フランス語を学んだことがある方ならご存知かと思いますが、フランス語にも英語のミスター、ミセス、ミスにあたる敬称があります。名前の前につけるあれです。ミスターはムッシュー、ミセスはマダム、ミスはマドモワゼルとなります。マドモワゼルは敬称として機能するのかというほど長いですが、特に略することはしません。英語同様、既婚女性にはマダム、未婚女性にはマドモワゼルです。

 ところで、フランス語の敬称は呼びかけにも使われます。こんにちは、と男性に言うときには「ボンジュール、ムッシュー」というというふうに。問題は女性のほう。どこからがマダムで、どこからがマドモワゼルか?フランス人の友人たちに以前たずねると「まあ、なんとなくだよね」という返事しか返ってこない。明らかにお嬢さんならマドモワゼル、そこそこの年齢ならマダムには敬意的なものも含まれるのでマダム。その線引はどこにあるのか?顔なのか雰囲気なのか服装なのか?

 アジア人の例にもれず、しかも背が低いこともあり、わたしも比較的若くみられます。そして、まあまあの年齢まではマドモワゼルと呼ばれていました。しかし、あるときからマダム比率が高くなってきたのです。その言うなれば「マダム・マドモワゼル移行期」の象徴的な事件は、おそらく38歳のころでしょうか?プラス・ド・クリシー近くの少しおしゃれなオーガニック食材店がニューオープンだったので入ってみました。野菜などを見ていると背後から店員のお兄さんに声をかけられました。「ボンジュール、マドモワゼル!」と。いやしかし、振り返ると「あ、ボンジュール、マダム」とわざわざ言い直しました。その時のわたしの気分としては「こいつ、言い直しやがって・・・」という感じです。店員さん的にはマダムと言わなくて失礼したな〜と思ったのでしょうが、ごまかしのきかない寄る年波を感じてしまったのでした。まあ38歳にもなって、お嬢さんと呼ばれて喜ぶなって話ですが、それから数年経ったいまに至っては間違ってマドモワゼルと呼ばれたら大喜びしています。

フランス人は成熟した女性も好むと言われますが、やっぱり少しでも若くみられたい。そんな自分の浅はかな願望を、いまでは仕方なく受け止めています。

写真は近所の花屋さん。5月の第4日曜日はフランスでは母の日なので、花屋さんの品揃えが華やかでした。ちなみにフランスではカーネーションではなく、芍薬を贈るそうです。

では、パリ1日1話、今日はここまで。

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