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【パリ1日1話】18 在仏コロナ休暇雑感 29日目、そしてあと1ヶ月

もうすぐ1ヶ月が経とうとしている外出禁止生活。なにも変わらず、淡々としている。日にちの感覚は、仕事の締め切りでしかつかめず、それさえないときは、きょうが何日か、何曜日だったかも忘れてしまう。

朝起きて窓を開けると、空気がおいしい。そして、鳥の声が高らかに聴こえる。パリの街中でだ。野鳥は周囲の騒音が少なくなると自らの声を大きくする、と最近ニュース記事で読んだ。パリの鳥たちも、これまでにない大きさで、鳴いているのだ。

街の空気がこんなにきれいになったのは、数十年ぶりだという。あれほど大気汚染に悩まされていた街が、いまでは清らかな空気に包まれている。人間は、環境になにもいいことをしていなかったのだと、日々考えさせられる。

東京や大阪にも緊急事態宣言が出て、そっちの情報を追うのに忙しい。パリにいる自分たちは、家の中にいさえすればいい。でも、日本にいる仲間はどうだ?出社せざるを得ないひとも多くいて、心配が募る。

きょうで29日目、そして昨夜の大統領発表で、また外出禁止が1ヶ月延びた。予想はしていたものの、やっぱりな、と心の中にたまった疲れをかすかに感じる。ただ、国全体としての経済的な心配はあるものの、徹底的に外出禁止を続けてほしい。命以上に大事なものはないから。

日々増え続ける死亡者の数。重症入院者数。家の近所でも亡くなった方がおり、死はいまや身近であることをひしひしと感じる。まだまだ、気を抜くタイミングではない。春の陽気に誘われているひとも多くいるけど、もう少しのがまん。最前線に立たない自分たちにとっては、生き残りをかけての、静かな戦いなのだから。

もともと1日1時間と決められていたスポーツでの外出は、朝10時まで、そして夜は19時からとさらに区切られた。毎日行くモンマルトルでは、朝の9時ごろになるとランナーズパークかと見まごうほどのひとの多さ。そして、10時になると皆、ポリスの車に追われて丘から地上へ降りていく。

外出許可証はQRコード付きになって、スマホ画面でも表示できるようになったので、前よりポリスのコントロールも簡単そうだ。

そろそろ30日が経とうとしていて、なにが恋しいかなと考えてみた。せっかくみんな休みなのに気軽に会えないのは、たしかに寂しい。でも、日本の友達からいろいろ連絡をもらったり、オンラインで飲み会にも参加させてもらったりして、むしろひととのふれあいは増えているような気がする。うれしい。もっと誘ってください。

直接会うのは、相変わらずアパート管理人のおばちゃんと、あとはベランダ越しに会うアパートの住人たち。ワイン屋のおにいちゃん。ひとと接触がなさすぎて、わたしのフランス語は、あっという間に地の底に落ちていってしまった。まあ、ドンマイ。

そうそう、いまなにが恋しいかというと、やっぱり美術館と映画館の空間にいられないことだった。おいしいものは、毎日夫が作ってくれるので、レストランはそれほど恋しくない。それは実にラッキーだ。美術館と映画館なんて、気取った文化系のようだが、というより、あの「みんないるのに、ひとりぼっち」の感じが、自分は好きなんだ。

うちは1LDKで日当たりも良く、一日中いても苦痛ではない。これも、とてもラッキーだ。夫婦に鳥が2羽いるから、飽きることもない。いまのところ、夫婦で大きな喧嘩もしていない。できるだけ、穏やかに毎日を過ごさないと、逃げ場はないので、みなさん、穏やかに暮らしましょう。

メンタルの管理は、外出禁止中で一番大きな課題かもしれない。自分は悩みは少ないほうだけど、それでも仕事が減ったり、外に出られなかったり、将来が不安だったり、まあいろいろあって、少しは落ち込む。そんなときには、鳥にちょっかい出したり、植物の世話をしたり、ちょっと大きな音で音楽を聴く。おそらくだけど、ひとに頼るのは難しい。だって、みんな自分のことで精一杯だから。

うちの、たぶん唯一のルール。食事のときに、シリアスなニュースを見すぎない。気楽なアニメなんかを観て、笑ってごはんを食べる。

再掲します、うちの対策。マスクは夫が作ってくれたけど、まだほとんどしてない。アルコール除菌ジェルは、未入手。

・外出は一日一回。商品を取る、ドアの開閉以外は手で触れない。
・人とは1m以上距離をとる。
・外出時に着た上着は玄関に置き、着ていた服は全部洗濯。
・戻ってすぐ手洗い、うがい、洗髪含めた全身シャワー。
・食物は基本加熱。生で食べるものはよく洗う。

3密を守るだけでは、不十分だと個人的には思う。フランスで得る情報と照らし合わせると。とにかく、外に出ないこと。でも、何日も家から一歩もでないとメンタル的に滅入るので、1日1度はなんらかの方法で日に当たること、外の空気に触れること。窓からでも。

まだまだ続く、おこもり生活。なにも生み出せずに終わるかもしれない。失うものは多いかもしれない。でも、生きてこそ。生きましょう。





















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