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どうか終わらないで、優しい時よ

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ずっと読みたかった

ヴィルジニー・グリマルディの

Et que ne durent que les moments doux

( どうか終わらないで、優しい時よ)

のコレクター版を誕生日にもらった。

ベビーピンクと金色の表紙、そして小口が

たまらなく可愛い小さな本。

でも内容は決して甘くない。

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物語は章ごとに

2人の女性によって語られる。

子供たちが巣立って急にひとりになった

バツイチ、アラフィフのエリーズと

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妊娠7ヶ月の早産により

新生児集中治療室で

眠れない日々を過ごすことになった

20代のリリー。

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そこに

エリーズと巣立っていった子供達との

ショートメッセージ( SMS)が挟まれる。


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エリーズの第5章にはこう書かれている。

この23年間を、私は子供たちに捧げた。

犠牲になったのではない。

母親になるということは

私の人生に意味を与えてくれた。

私は誰かの役に立っている、

誰かに頼られていると、やっと思えた。

自己中心的なのは承知だ。

でも計算したわけではない。

母性が、私の傷んでいた子供時代の何かを

治してくれたのだ。

(中略)

子供たちと一緒に私は

何よりも強い喜びや何よりも強い恐れ

そして何よりも美しい思い出を経験した。

子供たちが痛い時には私も同じように痛かった。

彼らの涙を拭きながら自分の涙を堪えた。

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一方新米ママのリリーは娘を「あなた」と呼びかけ

物語は彼女に綴った手紙のように書かれている。

読み進めるうちに

二人の女性の辛い過去や

彼女たちを取り巻く人々の様子がわかってくる。

孤独だったエリーズは仕事仲間に誘われて

アフリカンダンスのレッスンや

病院で新生児のお世話をするボランティアを始める。

義両親から早産を責められ

自己嫌悪になっていたリリーは

病院で同じような小さな赤ん坊を見守るパパママ、

そして愛情深くプロフェッショナルな

看護士やカウンセラー達に助けられる。

ラストはグリマルディお得意のサプライズがあり

あっと驚きながら、とても幸せな気持ちに包まれた。

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ヴィルジニー・グリマルディは

ギョーム・ミュッソに続いて

今フランスで最も人気のある作家だ。

私がここ数年で

無理なくフランス語の読書をするようになったのは

彼女の本を読んでからだ。

私と同じ1977年生まれ

(先週末に第2期が決定したマクロン大統領も!)

だから

やはり「中」意識が強いのかもしれない。

読みながら

娘が産まれた日を思い出したり

いつか娘が旅立つ日を想像したりして

胸が引き裂かれるようにな気持ちになった。

なんて思っていたら後書きで

思いがけず授かったふたり目の息子さんが

早産だったことを明かしている。

そこで見て感じたドラマから、

この本が生まれたそうだ。

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エリーズとリリーのまわりの人々も魅力的だ。

エリーズに「ひとりもいいものよ」と教える

独身生活を楽しむダンスのマリアム先生。

食事も旅行もひとりで好きな時に好きな場所で、

という彼女にエリーズが

強いのねえ、とため息をつくシーンがある。

マリアムは答える。

私はあなたより強いわけじゃないの。

いつも心配や恐怖に脅かされているわよ。

でもそれを超えることを決めただけ。

人生は恐怖の向こう側にあるからよ。

心配や恐怖は私達が頭の中で作り上げている

予想でしかないのよ。

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見返しも素敵 !





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