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編集者のトレンドの見つけかた -抽象化→具体化を繰り返す

「トレンド」と聞くとみなさん何を思い浮かべるでしょうか。

ファッションやメイクから始まり、今どんな写真が好まれているのか、食べ物は何が流行っているか、色、芸能人…と多岐にわたる上に、特に雑誌の企画では「トレンド感」は1企画に1つは盛り込みたい、とてつもなく大事な存在です。

この、ふんわりしてるくせに大事な存在「トレンド」。
若手の編集者から「トレンドってどうやったら見つけられるんですか?」と質問された数は数え切れません…。


一朝一夕では見つけられない、それがトレンド

正直、「トレンド 春  2020」とかで検索すれば出てきます。特にファッション・メイクは一発です。今年の春夏はボタニカル柄がトレンドらしいので、ボタニカル柄アイテムやファッションを紹介しよう!みたいな企画も…全然良いと思います。

気をつけたいのは、ググって見つかるトレンドはすでに時代遅れである可能性があるというポイント。誰かがわかりやすい答えとして記事を用意してる時点で、最先端ではないのです。

トレンドは、直近の業界や生活者全体の価値観の変遷を汲み取った上で、この先の予測をなんらかの形にしたもの。例えば、今年流行ってると言われるボタニカルも

・「サスティナブルな価値観」の強まり
・色見本帳メーカーであるパントン社によって決定された2020年のカラー「クラシックブルー」のように落ち着いた色味が好まれそう
・春に必ず流行る花柄の進化版っぽい

みたいな背景が伺えます。

こういう社会の流れを汲み取って、自分なりに点と点を繋げていくことで、トレンドの先読みができるようになります。

一見とても難しそうに見えるこの作業ですが………そう…お察しの通りとても難しいのです…。偉そうに書いている私も、出来てるかと言うと…怪しい。毎日ちゃんと情報を摂取して、2〜3年続けてはじめて出来はじめる、それくらいの感覚だと思います。


トレンドの種集めをする

じゃあ日々どんな情報を収集し続ければいいの?というと

・できるだけ幅広く、たくさんの情報を収集する
・ほぼ毎日継続的に集めることが大事(1ヶ月やって3ヶ月休んで…とかは多分無意味)

です。まずはトレンドの種集めが必要で、これを集め続けていくと業界の流れがなんとなく見えてきます。ファッション、メイクがわかりやすいので引き続き例えにすると

「1年前も赤リップ流行ったな。でも今年は質感がマットなんだな。」
「ドラマや映画はでかっこいい自立した女性が主人公のものが多かった。その影響で可愛らしいより、かっこいい系が流行ってる?」

…みたいな感じで、去年との差分や、流行る時期や期間に対する感覚が付いてきたり、他の業界の影響を考えられるようになってきます。

ちなみに私が会社を退職する時、まさに赤リップが流行っていて。秋冬で流行してた赤リップが春過ぎてもまだわりと使われてたので、次の秋も何かしらリップが主流のメイクが続くだろ、というカンのもと2019年の1月くらいに2019年9月号とかの雑誌巻頭企画に「赤リップがテーマの編集記事」を突っ込んで、そのまま退職しました。(結果、リップ系の企画が実現したっぽい。当たっててよかった…!)


抽象化→具体化を繰り返していく

こうやって具体的な情報の種を集めていった結果「あー、この影響なのか」みたいなのが理解できるくらい情報の紐付けができたら、先の予測ができたり、トレンドを盛り込んだ企画が作れるようになります。

ここで大事なのが抽象化→具体化。

3年前くらいかな?「大人の○○〜」みたいな名前のコンビニお菓子が結構出回り始めた時期がありました。その頃ちょうどセーラームーンの25周年なんかもあって。この時私は、これから「ノスタルジー消費」が盛り上がってくるかもね、と定義したのを覚えています。

私が当時考えたノスタルジー消費は、20代後半〜30代くらいの世代が、子供の頃に慣れ親しんだお菓子やアニメを懐かしがって商品を購入する消費のこと。商品は、子供向けの商品そのままでなく、ちょっとリッチな商品にリメイクされたものです。実際にセーラームーンなんかは、大人女子でも普段使いできるようにちょうど良い塩梅でモチーフが入ったデザインのメイクグッズとか売ってて、戦略がすごく上手だなぁと思いました。目ん玉飛び出るような高額なアクセサリーも売ってたような気も…。(ノスタルジー消費という言葉自体は前からあったっぽいです。定義は多少違うかもしれません。)

これは、具体的な情報の種

・大人の○○というお菓子が増えてきてる気がする
・セーラームーンが25周年企画を実施する

のエッセンスを取り出して、抽象化した結果「ノスタルジー消費」という言葉になった事例です。

これくらい抽象化できると、お菓子やセーラームーン以外の「ノスタルジー消費」に気づけたり、いろんな企画に落とし込むことができるかと思います。

企画に落とし込むと、一度抽象化された「ノスタルジー消費」がまた具体化します。こうやって具体→抽象化→具体化を繰り返していくことで、自分なりにトレンドを読んで、企画を作りだして行けるようになります。

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