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スポーツ全般とスポーツ医療について、アスレチックトレーナーの視点から、書いていきたいと…

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スポーツ全般とスポーツ医療について、アスレチックトレーナーの視点から、書いていきたいと思います。(ときどき、妻からの投稿もあります。)

最近の記事

体幹トレーニング:腹筋運動の真実

今も昔もウェイトルームや治療室で見られる風景の一つに、腹筋運動があります。 エクササイズのバリエーションは色々ありますが、共通している体の動きは、上半身を前方に屈曲する動作です。 これは、主に体幹の安定を目的に行われていると思います。 本当に体幹は安定するのか そのエクササイズに一石投じたのが理学療法士の故フローレンス・ケンダルさんです。 ケンダルさんは、著作「筋:機能とテスト―姿勢と痛み」において、以下のように述べています。 腹筋を収縮させて腰椎を屈曲させる運動

    • ヒップアップ・トレーニングをやるべき理由

      「ヒップアップ・トレーニング」や「ヒップアップ・エクササイズ」が市場に出回って久しくなります。 Victoria's Secret BUTT WORKOUT (Get an Angel Booty!!) そのトレーニングの主な目的は美しいヒップラインをつくるという表面的なものですが、私は別の理由から全面的にそのトレーニングを男女を問わず支持します! ヒップには、いろいろな筋肉がありますが、ヒップアップ・トレーニングで機能を上げるとされているのが、大殿筋(一番大きい筋肉で

      • 失敗のすゝめ

        「マーケティング感覚を身につけよう」でいいことが書いてあったので、少し紹介します。 とりあえずやってみろ 「失敗と成功の関係」の章で、新しいことを始めるにはとりあえず市場に出て試してみることを勧めています。 アカデミアや机の上での試算や会議などは後にして、とりあえずやってみろと言うことです。 市場での失敗は、そこから得るものがとても大きい、と書かれています。 「失敗のすゝめ」もとい、「市場での失敗のすゝめ」です。 失敗リスト一挙公開 さて、選手のケガが効率よく治る

        • マニュアルセラピーの威力

          マニュアルセラピーってなんぞや? マニュアルセラピーまたは徒手療法は、選手や患者さんの関節や筋肉に直接アプローチします。 この定義だと、マッサージはマニュアルセラピーに含まれるようです。 ここではマニュアルセラピーとは、主に動くべき関節が動いていないときにこの用法でその関節を動くようにする手法を指すことにします。 何故わざわざ手を使わなければいけないの?と文句が聞こえてきそうです。 「動くべき関節、動き過ぎは良くない関節」で述べたように、多くのケガは動いていない関節

        体幹トレーニング:腹筋運動の真実

          寝る姿勢は何気に重要

          どんな体勢で寝ていますか? 実は、寝る姿勢は重要です。 8時間睡眠は8時間ストレッチ 以前に筋肉が伸びている姿勢で休んでいる状態で筋肉繊維が伸びる、と述べました。 筋繊維が伸びるということは、筋肉が弱くなることです。 つまり、8時間の睡眠中にある筋肉が伸びている状態だったら、その筋肉は間違いなく弱くなります。 筋肉が弱くなる寝る体勢の代表格は、横向きに寝ている状態です。 大概の人は上になっている足を前に出します。膝が布団の上で休む状態でしょうか。 その状態は、太

          寝る姿勢は何気に重要

          アスレティックトレーナーがしてはいけないこと

          いろいろ失敗している経験の中で、さらに苦い経験をシェアしたいと思います。 球審が倒れていた あの初春のまだ肌寒い日の大学野球の試合は延長戦に入り、予断を許さない展開になりました。 しかし、相手チームにホームランを打たれて痛い失点を献上。 マウンド上にコーチと内野手が集まります。 その時を待っていました。 私はトイレに急行しました。 ベンチに戻ってみると、球場は静まり返り、誰かが私の名前を叫んでいます。 何か起こったのかな? あれ?球審が倒れている! その球審

          アスレティックトレーナーがしてはいけないこと

          ストロング・イズ・ニュー・スキニー

          アメリカでは理想とする女性の体形が男女で異なります。 女性はファッションモデルのような細い体形を理想とし、男性はより健康的な女性を理想とします。 しかし、その女性が理想とする女性の体形が変わろうとしています。 クロスフィットは何をもたらしたか クロスフィットは、フィットネスクラブをハードなトレーニングセンターに変えただけでなく、エクササイズそのものをゲームとして全国に売り出します。 今までソファに座ってチップスを食べながらテレビを見ていた大衆をトレーニングへと駆り出し

          ストロング・イズ・ニュー・スキニー

          ビッグデータが示す腰痛の治療法

          データから治療法を予測 2002年にある文献が発表になりました。 腰痛があった患者さん71名を年齢などの基礎身体情報から痛みに対する恐れなどの心理的なこと、関節可動域など整形外科的な数字まで調べました。 そこから浮かび上がってきたのが、臨床予測指標(Clinical Prediction Rule)です。 腰の痛みが続いているのが16日以下 恐怖回避思考のスコアが19以下(42点満点中) 片方か両方の股関節の内旋角度が35度以上 腰椎の一つは動きが十分でない 痛みが膝よ

          ビッグデータが示す腰痛の治療法

          神経より伝達手段が速い組織

          神経伝達の速さは? 皆さんは、神経伝達が身体のシステムの中で一番速い速度を持つと教育されていると思います。 そのスピードは時速10-270㎞と言われています。 ズキズキする痛みはその中でも一番遅く伝達される感覚で、およそ秒速1mだそうです(身長が180mある人は足の指の痛みが1.8秒かかって脳に伝わる)。 神経より早い伝達組織とは? 筋膜の圧迫や張力は振動としてを時速1100㎞で筋膜のネットワーク上を伝達されます。 神経伝達の3倍強の速度です。 筋膜ネットワーク上を

          神経より伝達手段が速い組織

          腹斜筋のケガは筋膜が原因か

          内外腹斜筋は体幹の側方にあり、主に体幹の回旋を司る筋肉です。 野球の打者のバッティングなど身体の回転を繰り返し行う動作では、おそらくこの筋肉が機能していると考えれます。 アルバート・プホルス選手がこの筋肉をケガして長い間戦線離脱しています(2006年)。 では、この筋肉のケガの原因は何でしょうか? 仮説1 -動き過ぎては良くない関節からのアプローチ 筋肉のケガはほとんどの場合、過度な伸張が起こされていると考えます。 ハムストリングのケガも骨盤の前傾により既に筋肉が

          腹斜筋のケガは筋膜が原因か

          動き過ぎは良くない関節アプローチ ー逸話その壱一

          今日、深刻な表情をしている女性が来ました。 何でも、彼女の娘の膝の痛みが治らないそうです。 娘さんは膝にサポーターをつけていました。 彼女に訊くところによると、普段は水泳の競技選手なのですが4月に陸上競技に参加して以来、膝を痛めたそうです。 ってことは、約半年も膝の痛みに苦しんでいることになります。 2か月のリハビリで改善なし 整形外科医が膝のMRIを診たところ、診断は「骨挫傷」とのこと(母親による)。 その後の2か月間の理学療法では改善がみられなかったそうです。

          動き過ぎは良くない関節アプローチ ー逸話その壱一

          筋スパズムの原因は

          腰の筋スパズムを起こした選手の症例が二件ありました。 その共通した原因を興味本位から探ってみました。 動き過ぎは良くない関節アプローチ もしかしたら筋肉が過多に働いてスパズムを起こすのではないでしょうか。 その場合、筋肉が動かす関節が動き過ぎと仮定します。 腰の筋スパズムの場合は、腰椎になります。 股関節が動いてないから、腰痛が動き過ぎて、その腰椎の動きを司る筋肉がスパズムを起こす…。論理的だと自賛します。 ところが、二つの症例とも、股関節は良く動いていました。あ

          筋スパズムの原因は

          骨盤底筋スペシャリストになれ

          骨盤底筋とは、あまり聞かない名前だと思います。 私も実はその複数ある筋肉の名前も機能も良くわかりません。 どうやら、排泄機能や生殖器のコントロールをする筋肉だそうですが…(汗)。 どうやら、スポーツ医療で頻繁に登場してくるハムストリングや肩甲骨のようなメジャーな身体の部位ではないようです。 しかし、メジャーでないからと言って、需要が無いとも言えないようです。 統計によると 統計によると、2500万人以上のアメリカ人が骨盤底筋の機能不全と診断されています。 この数

          骨盤底筋スペシャリストになれ

          上腕二頭筋の痛みはどこから

          週末にビールを飲みながらプレーするソフトボール大会に行ってきました。 そこで上腕二頭筋が痛くなってボールを投げられない、と言ってきた輩がいました。 最初に疑うのは神経 私の経験(野球傷害ビッグデータ?)から第一候補に挙げる上腕二頭筋の筋肉部への痛みの原因は、正中神経の問題です。 その神経がうまくスライドしていなかったり、どこかで圧迫されたりしていた場合にこのケガが起きると勝手に結論づけています。 しかし、正中神経の伸張テストで調べてみても、何の反応もありませんでした。

          上腕二頭筋の痛みはどこから

          場所が違うと評価も違う -仕事場と生活を変えたアスレティックトレーナーの話-

          大きな大学での勤務 先日、アメリカの大学でアメフトに携わっているアスレティックトレーナーと久しぶりに話しました。 彼は、アメリカ南部の大きい大学のアメフト部に就いて、それこそ早朝から夜まで週末無しで働いていました。 そのアメフト部がリーグ戦で優勝することを目標に長時間労働にも耐えていたそうです。 チームの練習や試合中にサイドラインにいることは勿論、朝早くに治療室に待機していて、いつでも選手が治療に訪れてもよい体勢になっていました。 また、選手を病院に連れて行ったり、選

          場所が違うと評価も違う -仕事場と生活を変えたアスレティックトレーナーの話-

          股関節の痛み -格闘編-

          今日のブログはいつものような「こうしたら痛みが無くなった」系の結論がありません。 何故なら、この症例はすんなりと解決に向かわなそうだからです。 股関節の前の部位に痛みがある選手が来ました。 スクワットをする際などに痛みがあるそうです。 動き過ぎは良くない関節アプローチから診ると 選手の立位の状態で横から見ると、骨盤が前のめりになっている姿勢で、股関節は相対的に伸展しているように見えます。 この状態だと、大腿骨骨頭が前にシフトし、股関節を曲げたときに腸骨に衝突してしま

          股関節の痛み -格闘編-