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嘘がつける大人になった。

しばらくの間、言葉をきちんと綴ることから離れていたのだけれどまた再開してみようと思って、今日はその1日目。

先日、仕事おわりに今泉力哉監督/脚本の『窓辺にて』を見に行った。

公開からまだ数日。その日はちょっと忙しく、「行けたら行こう」っていう、もうこの言葉を発してしまったら気持ちが降下気味になってしまう状態だったのだが、丁度行く予定の映画館に今泉監督がいらっしゃるとのことだったので、なんとか仕事を終わらせた。

とは言いつつも、ギリギリの到着。程よく上映予定映画の告知映像を見て、『窓辺にて』は始まった。

フリーライターの市川茂巳(稲垣吾郎)は、編集者である妻・紗衣(中村ゆり)が担当している売れっ子小説家と浮気しているのを知っている。しかし、それを妻には言えずにいた。また、浮気を知った時に自分の中に芽生えたある感情についても悩んでいた。ある日、とある文学賞の授賞式で出会った高校生作家・久保留亜(玉城ティナ)の受賞作「ラ・フランス」の内容に惹かれた市川は、久保にその小説にはモデルがいるのかと尋ねる。いるのであれば会わせてほしい、と…
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今泉作品を見た後は、人間が愛おしい、ことばが愛おしい、毎日凪のように生きてるけどまぁ大丈夫だな。そんな感情で、エンドロールを眺めることが多い。が、今回のその時間は、私にとって、これまでと少し異なる時間だった。

作品の中で、稲垣吾郎さん演じる市川茂巳は何度も「君はどうしたいの」「君はどう思うの」と聞く。もう答えは持っているけれど、背中を押してほしい、共感してほしい、そんなささやかな我儘のためにオブラートに包んだものを一気に剥がしにかかってくる。淡々と映画は進むけれど、私、これがすごく怖かった。なんで怖かったって、私、ことがうまく運ぶように嘘ついたり、隠したり、調整したりするのが得意なんだろうなって気づいた。だから、きっと「君はどうしたいの」って言われてもちゃんと嘘をつくんだろうな。そして後ですごく心痛むんだろうな。GOING STEADYに感化されて、真っすぐこそ正義だと思ってたあの頃の私は、どうやら知らないうちに手放してしまっていたんだ。年々、感情で突っ走ることなんてどうやったってできない自分になってしまいっている。いいのか悪いのかはさておき、私にとってそれは「つまらない状態」であることに間違いない。

大なり小なり、いや、結構大きな「手放すこと」について語られる映画。いや、彼らそれぞれにとっては「大きな」ことだった気がする。そしてそれについて悩む時間を「悦に浸る」「贅沢」と表現する。これを冒頭に言っちゃうんだからすごい。ここからわたしは一気に引き込まれたような気がする。

確かになぁ。なんて思いつつも、そう言えるのも若さかもな。と、話が進むうちに自分の気持ちも寛大になっていくのがわかる。恐る恐る自分との対話をしながら、他人の心を覗く。なんともこしょばい時間。共感はできない映画だったけど、間違いなくとても好きな映画だった。共感はできなかったけれど、きっとわたしのそばにいる人たちのことを、少しだけ理解した気になって、少しだけ、少しだけでも優しく過ごせそうな気がした。

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