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整形外科医の葛藤

私は普段、整形外科医として働いています。
noteをはじめてからまだ仕事ネタを書いていなかったので、今回は仕事に関する内容を書いてみます。

医師になって10年が経ち、一通りの仕事はできるようになりましたが、いまだに「うまくできない!」と悩んでいることがあります。
それは、「外来」の仕事。
高齢化によって外来を受診する患者さんが増える中、私が頭を悩ませているのが、「診察にどのくらい時間をかけるべきか」という問題です。

手術だけじゃない整形外科医の仕事

「外科」である整形外科のメインの仕事は手術です。骨折をプレートで固定したり、人工の関節を入れたり、切断された指をつなげたり。
しかし、手術を必要としない病気も多く扱います。腰痛、打撲や捻挫、関節の痛み(五十肩など)、手や足のしびれ、交通事故後の鞭打ちなど多種多様です。これらは「外来」で診察と治療を行います。
最近は、高齢化のために整形外科を受診する患者さんは増えていく一方で、多くの病院の整形外科外来は他の科に比べても混雑する傾向があります。
混雑によって待ち時間も増え、病院によっては2,3時間待つことも珍しくありません。
多くの患者さんを診察するためには、診察時間を短くせざるを得ないのが現状です。
よくこのような現状を「3分診療」などと皮肉的に言われたりしますが、実際は3分未満のこともあります。

理想と現実

しかし、私としてはできるだけ患者さんの話をゆっくりきいて、時間をかけて診察したい、という思いがあり、この現状が苦しいのです。とっても。
一人ひとり違う患者さんの立場や背景を知り、具体的に何に困っているのかを把握し、適切な治療を提案するためには、どうしても時間をかけて患者さんと人間関係を作りながら診察をする必要があります。
でも、これは理想論でもあります。実際にそれをやってしまうと、数多くの患者さんを診察することができません。
他に待っている患者さんの待ち時間が増え、診察人数も減ることで病院の収益にも影響し、ひいては自分や看護師などのスタッフの拘束時間にも影響します。
時間は有限です。
そして自分も一人の人間。プライベートの時間を全て捧げて患者さんを救いたい!という聖人のような人間でもありませんので、仕事は楽に済ませて早く家に帰りたい、という気持ちも正直あります。
まさに「理想と現実」。
外来の仕事のたびに葛藤しています。

得する患者と損する患者

混み合う整形外科の患者さんの中には長い待ち時間にイライラし、診察室に入ってくるなり「何時間待たせるんだよ」とか、「時間かかるね」と憤る患者さんもいらっしゃいます。
朝から休み無しで働いている中で、そのような言葉を言われると一瞬ムッとしてしまうこともあります。
しかし、そんなときこそ憤る気持ちを抑え、笑顔で「待ちましたよね、お待たせして申し訳ございません」と言うと多くの患者さんの怒りはたいてい収まります。
逆に、「先生も休み無しで大変だね」と労いの言葉をかけてくださったり、「お昼食べてないでしょ?これ差し入れ!」と言ってジュースやエナジードリンクを差し入れしてくれる患者さんもいます。
そういう患者さんにはできるだけ良い診察をしてあげたいという気持ちになります。医者も人間、単純です。
どちらの患者さんが得するかは、、言うまでもないでしょう笑。
もし、自分がより良い治療を受けたいとお考えでしたら、「待ったよ〜」と言うのではなく休み無しで辛い思いしている医者を労ってあげると医者もやる気を出しますので、ぜひトライしてみてください笑。

まとめ

高齢化で患者さんが増え続ける整形外来。時間をかけずに"適当"にやってしまうことも正直できます。
でもそれだと患者さんにとっては不利益だし、自分のポリシーにも反してしまう。だからといって時間かけすぎると様々な弊害が生じてしまう。
そんな葛藤を抱えながら日々外来業務に奮闘しています。
いつかちょうど良い塩梅がわかる日が来ると嬉しいのですが、もうしばらくこの葛藤は続きそうです。

最後まで読んでくださりありがとうございます。


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