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専門として救急科を選ぶメリット

読者ターゲット

将来の専攻を決めていない医学生、初期研修医
転科を検討している他科医師

この記事を読むと達成できること

救急科を専攻するメリットを知ることができる。

執筆動機

・医学生や研修医に向けて救急科の魅力を伝えたかったから。
・セカンドキャリアとして救急科が適しているということを皆さんにしてほしかったから。

メリット①習熟までの期間が短い

救急医学の専門性は未だに確立されたものではなく、救急医の中でもその専門性とはなんたるかについて意見が分かれています。
これは救急医学がカバーする範囲が広く、ニーズに合わせてその在り方を柔軟に変えるからであり、一概に悪いことではありません。他科のように「ここまでできて一人前」というコンセンサスが生じにくいため、「習熟までの期間が短い」と言えるのです。

例えば、消化器外科の医師であれば、外科専門医を取得してすぐの学年で他の病院へ転職をするというのは難しいと思います。それは外科専門医取得年次では一般論として消化器外科医として一人前と言えるほどの技量が身につかないからです。

しかしながら、救急医の場合は救急専門医さえ取得していれば、転職して一人前として働くことが可能です。
もちろん、重症多発外傷や体外循環の管理など専門性の高い事柄に関しては、ある程度のトレーニング期間を要すると思います。しかしながら、それらの診療は個人の実力というよりは施設やスタッフ、他科のバックアップに依存するところも大きいため、「一人で○○が出来なければいけない」という話にはなり得ません。

長い時間をかけて救急の専門性を突き詰めていくもよし。早期から多様な働き方を検討するもよし。
まさに潰しが効く専門の一つと言えるでしょう。

メリット②あらゆる学び無駄になることがない

前項でも述べたように、救急医学がカバーする範囲は非常に広いです。
どんな学びであっても無駄になるということはほとんどありません。
がんの化学療法など救急医学と関係がないように見えることであっても、救急医として働く限りは無駄になりません。化学療法中の患者さんが合併症で救急搬送されることもありますし、重篤な感染症を起こすことだってあるからです。
一見、無関係な知識のように見えても全く無駄になることがないのが、救急医学を専門に選ぶメリットの一つです。

メリット③他科の研修・修行をすることに理解が得られやすい

皆さんは皮膚科の先生がいきなり「内視鏡の勉強をしたいので研修させてほしい」と言ってきたらどう思うでしょうか?
嫌だとは思わないまでも「どうして?」と思うでしょう。

救急医をやっていると他科に研修へ出ることは珍しくありません。
私は過去に様々な科で研修を行わせていただきましたが、研修を希望する理由について問われたことは一度もありませんでした。むしろ最初から研修の必要性について十分理解していただいており、研修への協力に前向きな先生の方が多かったくらいです。
意外かもしれませんが、形成外科や精神科、泌尿器科などいわゆる「マイナー科」に研修に行く救急の先生方も多くいらっしゃいます。
中には「ミイラ取りがミイラになる」ではないですが、そのまま救急に戻ってこない人もおります。
これは救急科を基礎として、セカンドキャリアで他科に進むキャリアプランの一つとも言えるでしょう。

メリット④集中治療専門医を取得できる

救急科専門医を取得すれば、サブスペシャリティとして集中治療専門医を目指すことができます。
世の中には専門医と名の付く資格はたくさんありますが、診療報酬に直結する(資格が病院の利益につながる)ものは多くありません。集中治療専門医は特定集中治療管理料を算定するにあたり必須の資格であり、算定を念頭に置いている病院にはある意味不可欠と言えます。
また、集中治療専門医の数は今現在は2000人ちょっとしかいないため、非常に希少な存在です。
もちろん、実力・実態の伴わない専門医を支持するわけではありませんが、救急医になって集中治療専門医取得を目指すことは、救急科のキャリアの強みだと思っています。

メリット⑤完全シフト制を築いている職場が存在する

私は、医師の働き方を悪くしている一番の原因を「オンコール制」と「主治医制」だと考えています。
決して「悪しき文化だから無くすべきだ」という言っているのではなく、ここをうまくコントロールしないといつまでも医師の実質労働時間は減ることはなく、真の自由時間が増えないと思っているということです。
他科は様々な理由からシフト制が実現できずにいますが、救急・集中治療領域に関しては「完全シフト制・チーム主治医性・オンコールなし」を実現できている領域の一つだと思っています。
私自身、今現在も勤務時間以外に電話がかかってくることはありません。
完全な自由時間があると、家族と大事な時間を過ごしたり、医業以外の仕事にも時間を費やすことができます。
他科をおとす意図は一切ありませんが、ここは救急のセールスポイントの一つだと思っています。

メリット⑥重篤な病態や生死にかかわる事態へのリカバリーに有利

私が救急に進んだ理由の一つとして極度の心配性だったということがあります。
もともと内科医になろうと思っていたのですが「いきなりこうなったらどうしよう」「目の前でああなったらどうしよう」と考え出すと止まらなくなってしまう性格だったので、「蘇生学としての限界はどこにあるのか」を知らずに医師をやるのは無理だと思いました。
気管挿管一つにしても、うまく行かなかったら用手換気、自発呼吸の回復、気管支鏡下挿管、輪状甲状靭帯・穿刺切開、ECMOバックアップなど引き出しを多くもっているからこそ、落ち着いて行うことができます。
「これがダメなら次はこれ!」と次の手を打ち続けることができ、なおかつ最大限の限界を知っているということは、重篤な病態に対するリカバリーとして非常に有利であり、精神衛生上も良いのではないかなと思います。

最後に

最後までお読みくださいましてありがとうございました。
少しでも救急科を専門として選択するメリットは伝わったでしょうか?
救急医のキャリアの多様性があまり知られておらず、専攻医の人数も伸び悩んでおりますが、今後少しでも救急科を専攻してくれる先生が増えることを切に願っております。

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