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「明け星のサンダーバード」企画書

キャッチコピー

「宙軍学校のエースの訓練過程? エンスーのお遊び? そんな偏見、わたしがぶっ壊して優勝してやる!」

あらすじ

人類の火星移住から150年目の節目。レシプロ飛行機による火星一周レース『ミッレミリア・マーズ』がまた開催される。港町ベイルンで育ち、銀翼の環境観測機『ビッグバード』に憧れる高校生の少女・雛奈木=明星(ひななぎ みょうじょう)は『ミッレミリア・マーズ』の参加を望む、しかし前回優勝者で航宙軍士官学校のエースの少女・クインティ=チャンにその夢を否定され、今回の優勝もどうせ自分たちで、レースは宙軍学校の訓練生の訓練課程とエンスーのお遊びでしかないと言われる。明星はそれに納得できず高校でともに火星一周に挑む仲間の少女たちと機体を集めて、開催された『ミッレミリア・マーズ』に挑むのだった。

第一話のストーリー

 人類の火星移住から150年目の節目の夏。火星はテラフォーミングされ、大地の上を5機の銀翼の全翼プロペラ環境観測機『ビッグバード』が飛ぶ新天地となっていた。
 クリュセ海に臨む港町ベイルンで環境観測士の母とパティシエの父と住むベイルン高等工業学校飛行士科の高校2年生・雛奈木=明星(ひななぎ みょうじょう)はプロペラ飛行機に憧れる男勝りの勝気な少女で、今年も開催されるレシプロ飛行機の火星一周レース『ミッレミリア・マーズ』の開催に沸き立っていた。
 入学以来の友人で情報処理科の図書部員・果鈴(かりん)=ベルモントと共に前回優勝チームのパイロットである火星航宙軍士官学校の天才候補生・クインティ=チャンのインタビュー会に行く。
 将来の航宙軍エースと呼ばれるクインティの質問タイムに明星は自分もレースに参加して彼女と競い合いたいと語るが、インタビュー会の終わった後に彼女は明星を呼び出し、変な夢を見ない方がいいと語る。
「所詮あのレースは宙軍学校の訓練生の訓練課程の一つと、金持ちの飛行機エンスーのお遊びでしかない。貴女みたいな何にもない女の子は出ても意味がない」
 そう言われ、憧れていたクインティ自身に自分の憧れや好きなものすべてを否定された気分になった明星。一部始終を見ていた果鈴は帰り道に彼女を慰めようとする。が、明星は気落ちしたまま帰宅した。
 その夜、明星は自宅のベランダで父の作ったバターサンドを父と紅茶とともに食べながら空を見上げる。そこに銀翼の全翼プロペラ機『ビッグバード』が黒い影と二重反転プロペラの轟音を立てて飛来する。
「お母さんの『サンダーバード』かな」
「『サンダーバード』だ」明星は言う。「左舷の3番プロペラと右舷の2番プロペラが調子悪いもん。『ズムドゥルアンカ』と『ヤタガラス』はそれぞれ片舷の3番だけ調子悪くて、『ネヴァン』は一番最後にオーバーホールしたから全部調子いい」
 明星は『ビッグバード』のことに関しては詳しい。環境観測士の母の乗る機体であることもあるが、あの巨大な風を切って飛ぶプロペラ機が大好きなのだ。
 そして改めてクインティに言われたことを口にし、「そんな偏見全部ぶっ壊して、わたしが優勝してやるからな!」と叫ぶのだった。
 翌日、明星は登校と同時に担任のアニー=ワンに『ミッレミリア・マーズ』への学校からの出場を許可してほしいと迫るのだった。

第二話以降のストーリー

 ベイルン高等工業学校からの私設チームの『ミッレミリア・マーズ』の参加は、顧問をワンが務めるとしても最低でも4人のメンバー――パイロット2名・航法士・整備士――と飛行機を揃えないといけない。それを出場登録の日までにクリアできないと出場は不可能だと明星はアニーから言われ、その条件をクリアすべく動き出す。
 飛行機は高校の訓練機は全て電気駆動なのでアウト、適当なスクラップを再生するか中古のレプリカ機を探すしかない。しかし飛行機はまだモノがあるが、問題はメンバーだ。
 メンバーは果鈴がナビゲーターに立候補したものの、他が居ない。整備科で内燃エンジンや航空機の整備が出来る整備士、そしてもう一人のパイロットだ。明星は自作の飛行機とパイロット・整備士募集の電子ポスターを学内のサイネージ全てにインストールさせたが、無断で爆音ポスターをインストールし流したことで風紀委員会に呼び出される。
「私に頼めば作ったのに」とぼやく果鈴と明星は揃って鬼の風紀委員長ビル=ククラからきついお灸を据えられていると、彼の後ろからひょっこりと姿を現した少女が居た。例の爆音サイネージの張本人を見に来たと挑発的な態度で口にする、一年生のリボン色と飛行士科のエンブレムの少女。
 ポレット=ククラ。ビルの妹で飛行士科の所属を名乗る少女は真剣さに明星の真剣さに興味を持ちながらも、無謀でしょ、と言って明星の挑戦を鼻で笑う。ビルに真剣に事に挑むものをおちょくるなと窘められるが、ポレットはどこ吹く風で出ていく。

 そして明星と果鈴が飛行機がどこかにないかと検索をかけると、ベイルン郊外の農場にTBFアベンジャーのバイオディーゼル駆動の内燃レプリカ機が売りに出されているという個人売買情報があった。額はクレジットの分割を最大限使えば高校生のバイト代でも買えなくもない値段。
 早速明星が一人でその農場に行ってみると、確かにトウモロコシ畑の中の格納庫に翼をたたんだ少しやれたTBFが置かれていた。
 しかし近づこうとすると、明星は目の前に現れた長身の褐色の肌の少女に放り投げられる。そして目を回している明星に、「あれ?爆音サイネージの子?」と声を掛けられる。トウモロコシ泥棒と勘違いされていたらしい。
 褐色肌の彼女――農業科3年のソニア=フィルキッシュに明星は事情を話し、TBFを譲ってもらえないかと頼む。が、ソニアに逆に維持費や燃料代、保険料の話をされ、何も考えてなかったことに明星は項垂れる。
「それにこの機体は売れない」とソニアは言う。叔母が死んだ祖父の遺産管理で勝手に売り出しはしたものの、畑の手入れ用としても重要な機体だし、何より火星開拓世代の祖父の想いや自分のルーツが詰まってると言うのだ。
 それなら仕方ないと諦める明星は帰ろうとするが、ソニアは彼女を呼び止める。売れないけど、少し考えさせてと言う。
 その夜、ソニアは自室で昼間に来た少女のことを考えていた。『ミッレミリア・マーズ』に心から憧れ、憧れた相手にレースの実情を伝えられてそれでも折れない、考え無しだが勝ち気な少女。彼女のことは気に入ったものの、飛行機を貸すことは果たして良いのだろうか。祖父と祖母の遺影や、オリジナルのTBFを背にした先祖の写真を見てソニアは問いかける。

 同じ夜、ポレットは社会人の彼氏と郊外のダイナーで食事をしていた。そこで爆音サイネージ事件の話をして、宙軍士官学校のエリート様たち相手に勝負を挑んでも負けるに決まってる。と口にする。それに彼氏は「その子が羨ましいなあ」と呟く。自分はそう言う青春を無理って諦めて捨ててきたからポレットに常々言われるくらい弱いし情けないんだし。と零す。
「それじゃあわたしも弱っちい事になるじゃん」と彼氏に向かってポレットは口を尖らせた。
  ソニアとポレット、そして果鈴と明星が見上げた空には青の明星ーー地球が浮かんでいた。

 サイネージ事件で有名人にこそなったが、明星のもとに一緒に『ミッレミリア・マーズ』に挑もうという生徒は来ない。来ても冷やかししか居ない。飛行機も見つからず、もう申し込みのタイムリミットは三日でやって来る。
  焦る明星はもう一度あのサイネージを流そうと逸るが、そこにソニアと彼女に捕まえられたポレットがやって来て、叔母に頼んでTBFの名義替えを行い自分のものになったことや、TBFを明星のチームに貸すことと整備士としての参加を申し出る。
  そして教室の前で迷うようにウロウロしていたと言うポレットも、自分が弱っちい奴になるのはゴメンだから、と意地を張りながらもう一人のパイロットに申し出た。

 TBFの機体名称とチーム名を『ペンギン号』『フライング・ペンギン』と名付けられ、『ミッレミリア・マーズ』への参加登録を行った4人。飛行計画を立て、夏休みの始まりと共に訪れる『ミッレミリア・マーズ』に挑もうとする。オリジナル機では魚雷を入れていた貨物ベイに野営道具や個人の荷物を詰め込み、出発地点であるベイルン対岸の港町ポート・クリュセまで飛んだ。
 レース開始直前、明星はクインティを見つけると声をかける。現実を突きつけて遠ざけたはずがレースに参加した明星にクインティは呆れながらも、彼女をライバルとして認め、その上で宙軍士官学校のチーム『サイレン』がまた優勝するとドライに告げる。
 明星たちはクインティたちや珍しいものを見てウザ絡みする他のチームを見てそれぞれの胸に静かに反抗心の闘志を燃やし、スタートの合図とともに総距離6,779㎞の火星一周エアレースに挑むのだった。

途中、旅先の人々の悩みを解決したり、環境観測機『サンダーバード』に助けられるなどの沢山の出来事を経ながら、徐々に上位に躍り出てゆく明星たち。しかし宙軍士官学校の『サイレン』には一歩及ばないまま終盤へともつれ込む……と言った様子にできたらと思います。

#週刊少年マガジン原作大賞 

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