新学期
四月が始まって間もない頃でした。駅に向かう私の目の前を、3人の中学生が歩いていました。どの子も学生服は皴一つないおろしたて、袖は手の甲のあたりまでありました。ズボンも引きずりそうな丈、背中のリュックサックも、新品です。見るからについこの間入学したばかりの一年生でした。
ねぐせのついたタテガミのような髪の毛を揺らしながら。楽しげに何か話しています。
「…じゃぁ、終わったら廊下で待ってればいいかな。」
「そうだよ、待っててよ。」
(あぁ、髪の毛を直す時間がなかったのかなあ)、(寝癖なんて気にならない、色気より食い気の年頃なのだなあ)そう思いながら後ろを歩いているうちに、あまりの可愛らしさに、つい声をかけてしまいました。
「おはよう!1年生?」
「はい、そうです。」
「明大中? 一中かな?」
「一中です。」
「柔道のオリンピック選手の出身校でしょう?」
「え、そうなの?」
図書館近くまで、話しながら一緒に歩いて行きました。別れ際、「楽しい?」と聞くと、3人で顔を見合わせました。まだ始まったばかりなので、不安が大きいのかもしれません。
「きっと楽しくなるわよ。」
この3人が中学校生活を謳歌できますようにと、一中に向かうのを見送りました。
今は通りを、みずみずしい若葉が道行く人を覆っています。植物も動物も伸びやかに成長する季節となりました。
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