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ログラインの作り方②究極の二者択一・ジレンマ型ログライン

前回は、基本型と応用型のログラインを紹介しました。

これらはどちらも、主人公の前に「障害」が現れて、それを何とかしようとする「問題解決型」のログラインでした。

打って変わって今回は「どちらも選びたいけど、どっちかしか選べない!」という悩ましい選択肢が主人公に提示される「ジレンマ型」のログラインを紹介します。

問題解決型ログラインが冒険ものやサスペンスで使いやすい型なのに対して、ジレンマ型は恋愛ものやミステリーのような複数の選択肢が与えられるストーリーで使いやすい型となっています。

問題解決型よりも構成要素が多く複雑ですが、ぜひ試してみてくださいね。

ジレンマ型ログライン(基本型)

ジレンマ型ログラインの基本型は、次の8つの要素から構成されます。

① 人物
② 状況
③ 選択肢
④ ナラティブクエスチョン
⑤ 解答
⑥ 理由
⑦ 結果
⑧ 結末

問題解決型から「③障害」が消えて、代わりに3つの要素が加えられています。この内「①④は推奨項目、⑧は任意項目(あってもなくてもよい、ない場合もよくある)、それ以外が必須項目」となります。

これを当てはめた文章は次のようになります。

①(人物)が、②(状況)。③(選択肢1)。一方、(選択肢2)。④さて、(ナラティブクエスチョン)?⑤(解答)。⑥なぜなら、(理由)からだ。⑦それにより、(結果)。⑧結局、(結末)。

問題解決型から変更された要素について、説明していきましょう。

③選択肢

選択肢は最低でも2つ必要です。多い分には3つでも4つでもいいのですが、ここで重要なのは選択肢のラインナップを「どれも選びたいくらい魅力的な選択肢」か「どれも選びたくないけど一番マシな選択肢」、要はメリット同士かデメリット同士で組み合わせる必要がある、ということです。

あくまで、このジレンマ型ログラインは主人公にとって悩ましい選択肢を提示してアレコレするものです。とすると、一方が素晴らしく、もう一方はしょぼい組み合わせだと、主人公が悩んだり葛藤したりすることはありえなくなります。

例えば、主人公がお菓子屋さんで今日のおやつをどうしようか悩んでいるとしましょう。お店には評判のどら焼きと季節限定のケーキがあります。もし、この主人公があんこが嫌いだったら?けしてどら焼きは選びませんし、ただケーキを買って帰るでしょう。あるいは、この主人公がドラえもんだったら?絶対にどら焼きを買って帰るので、これでも悩みは生まれません。

つまり主人公にとってどっちも選びたくなる、例えば「季節限定のフルーツケーキと人気No.1のチーズケーキ」のような選択肢を提示する必要があるということです。

または、辛いものとパクチーが嫌いな動画配信者が、再生数のために「激辛カップ焼きそばかパクチー大盛即席パスタ」のどちらかを食べる企画をするでも良いのです。

もしも「二つの魅力的な選択肢があるけれど、一方には裏の思惑があって……」のようなストーリーなら、問題解決型の障害にそれを据えるのが適しています。言うなれば、悟りを開こうとするブッダと、それを誘惑する悪魔マーラの関係ですね。例を出しましょう。

勤勉真面目な男子高校生の太郎がいました。彼は二週間後に期末テストを控えており、そこで高得点を取れれば有名大学に推薦入学できるはずです。しかし、彼の前にクラスで人気の女子生徒の由美が、テスト直前の土日に本屋に一緒に行ってほしいとお願いしてきました。さて、太郎は誘いを断って勉強に打ち込めるのでしょうか?

この場合、主人公にとっての正解がナラティブクエスチョンとしてすでに決まっています。ですから焦点は、勉強を頑張るか?由美とデートに行くか?ではなく、由美の誘いを断れるか?の方にあるのです。

大雑把にいうなら、どちらが正解かハッキリしているときは問題解決型、ハッキリしないときジレンマ型にするといいでしょう。

また、ここの項目でメリットとデメリットを上げるのも効果的です。

来週、友達とプールに行く予定の女子高生・リカが下校途中にとあるケーキ屋さんの前を通りがかりました。そのお店には今日が最終日の限定ケーキのポスターが貼ってあります。ここのケーキは美味しいと評判で、リカも昔は足しげく通っていました。しかし、それを食べたら太ってしまいます。一方で、彼女は友達にスレンダーな水着姿を披露したいと考えています。ぽっこりお腹なんてとんでもない!ですが、今を逃せば限定ケーキはもう食べられないでしょう。さて、リカは限定ケーキを買って帰るのでしょうか?それとも大人しく家に帰って筋トレに励むのでしょうか?

と、このようになります。ジレンマ型は、ある種「仮説検証」的側面を含みます。「こっちの選択肢を選んだら、きっとこんないいことが起きるだろうなぁ」という判断材料を主人公(や読者)に提示することが、物語を進める原動力なのです。

特に恋愛ものでは選択肢、言い換えるならお相手となるキャラクターとくっついた場合のメリットやデメリットを具体的なエピソードに絡めて、匂わせて描いていくといいでしょう。これで尺をいくらでも伸ばせます(悪知恵)。

④ナラティブクエスチョン

問題解決型のナラティブクエスチョンの項目でも述べた通り、必ず選択肢として、全てを列挙することをオススメします。例えば次のように。

三匹の子豚
家を出ることになった3匹の子豚は、草原に自分の家を建てることにしました。長男はわらの家を建てました。一方、次男は木の家を建てました。さらに、三男はレンガの家を建てました。さて、平和に暮らすために3匹の子豚が選ぶのはわらの家?木の家?レンガの家?

問題解決型では、目的≒ナラティブクエスチョンは明示的でした。しかしジレンマ型では曖昧になりがちです。なのでナラティブクエスチョンに「○○のために~」という文言を入れておくと、話の筋が分かりやすくなります。

⑦結果

主人公が選択をした結果を書いてください。それによって、成功しても失敗しても構いません。

例えば、先ほどの再生数がほしい動画配信者が激辛カップ焼きそばをヒイヒイ言いながらも完食し、その動画を投稿したとします。しかし、再生数は普段の1.2倍くらいしか伸びず頑張りに全く見合わなかった。うーん、微妙!となってもいいのです。

重要なのは、「目的が達成できたか」ではなく「選択の結果を書くこと」なのです。選択肢の提示と、それを選んだ結果がジレンマ型のサビです。最も読者が気になる、楽しみにするところです。なので、必ず入れましょう。

その上で、さらに何かを付け加えたい場合「⑧結末」を入れるといいです。例えば、先ほどの動画配信者が「今度は激辛ラーメンにパクチーを盛って食べよう!」と性懲りもなく考えて終わるとかですかね。

ジレンマ型のログライン(応用編)

問題解決型ログラインと同様に、ジレンマ型でも中心人物とそれを手助けする援助者を分けて描くことができます。この援助者はサブプロットの場合、主人公が担当することが多いです。

① 中心人物の特徴
② (中心人物の)状況
③ (中心人物の)選択肢
④ 援助者の特徴
⑤ 援助者が勧める選択肢
⑥ (中心人物の)ナラティブクエスチョン
⑦ 解答
⑧ 理由
⑨ 結果
⑩ 結末

これを文章にすると次のようになります。

①(人物)が、②(状況)。③(選択肢1)。一方、(選択肢2)。④そのとき、(援助者の特徴)が現れます。⑤(援助者)は、(援助者が勧める選択肢)を勧めます。⑥さて、(ナラティブクエスチョン)?⑦(解答)。⑧なぜなら、(理由)からだ。⑨それにより、(結果)。⑩結局、(結末)。

選択肢と連動させて援助者を増やしても構いません。例えば、主人公の男の子が、同級生の女の子と世話焼きの先輩の間で揺れるラブコメがあるとしましょう。この同級生の女の子には親友の女の子がいて、女の子の片想いを応援してくれます。一方、先輩には妹がいて、妹ちゃんは姉と主人公がいい仲だと勘違いして、いろいろ気を回してきます。さらに、同級生の女の子のお父さんは主人公くんに娘を任せたいと思っている……などなど。増やそうとすればいくらでも増やしていけます。

リトマス法

リトマス法とは、同じようなシチュエーションに異なる人物を放りこむ手法で、その反応からキャラの違いを浮かび上がらせることができるというものです。

例えば、映画が大好きな二人の人物がいたとしましょう。一人は品行方正な熱血漢、もう一人は無愛想でクールな性格をしています。その二人がそれぞれ朝早くに家を出ました。今日は3年間待った、あるシリーズの最新作がロードショーされる日。二人とも前売り券を買ってずっと楽しみにしていました。ネタバレなしで見たい!それに人気作ですから、席が取れなかったら困りますものね。そんな映画好きが道を歩いていると、とっても困っているおばあさんをが!さて、映画好きはおばあさんを無視して映画館に向かうのか?それとも開演に間に合わないのを覚悟でおばあさんを助けるのか?

……という風に、同じ状況・選択肢でも行動や対応の違いでキャラクターの違いを表現できるのです。このようにジレンマ型は、登場人物のキャラクター性を読者に伝えるちょっとした小話を作るときにも重宝するのです。

おわりに

このnoteは、前回から丸々2年後に書いたものです。この型については、当時から薄っすら脳内にありました。が、なかなかまとまらず……。最近になってやっと形になったので改めて投稿しました。

構成が複雑になりますが、問題解決型の「障害」をこのジレンマ型に組みこむこともできます。あるヒロインを選んだものの、その子が問題を抱えていて……というお話、あるあるですよね?

なので頭を柔らかくして、いろいろな要素を組み合わせてログラインを書いてみてくださいね。よろしければ、スキを押していただければ幸いです。


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