【第6回コラーゲンの世界】ウナギからサメまで、動物界のコラーゲンに迫る
みなさんはプリプリしたウナギは好きですか?もしくはフカヒレはどうでしょうか?
きっと多くの方があの触感を楽しむのが好きというはずです。実はあの触感の秘密にはコラーゲンが関わっているんです。
ということで、今回は人間以外の動物のコラーゲンについて紹介したいと思います。
ウナギはコラーゲンがたっぷり
ウナギっておいしいですよね。高級料理なので滅多に食べれませんが、そんなウナギもコラーゲンとは切っても切れない関係にあります。
実はウナギの身や皮にはコラーゲンが多く含まれておりサンマの3倍、サケの身の7倍にもなるようです。
そんなウナギの皮はI型コラーゲンでできていますが、私たち人間のものとは異なります。
以前、コラーゲンにも種類があるというお話をしましたが、まさにその種類が異なるということなんです。人間が持つI型コラーゲンは2本のα1鎖と1本のα2鎖がらせんを組んでいますが、ウナギが持つI型コラーゲンは3本のα1鎖からできています。
コラーゲン分子のわずかな差で、こんなにも違いを生むのは面白いですよね。
このウナギのI型コラーゲンは柔軟性が高くプリプリした食感を生み出しています。私たちはそれを美味しくいただいているということなんですね。
サメの軟骨
魚に詳しくないとあまり知られていないかもしれませんが、サメやエイはサンマやサケと異なり硬骨を持っておらず、軟骨のみで骨を構成しています。このような魚類を軟骨魚類といいます。
サメの場合はII型コラーゲンでできた軟骨が体を支えているんです。
加えて、サメは全身にわたってコラーゲンを豊富に含んでいます。骨だけでなく、肉や皮、ひれもコラーゲンが多く、ひれなんかはフカヒレとして食べますよね。(これも高級ですが…)
ちなみにトロッとやわらかいフカヒレはI型コラーゲンで、私たちが想像するコリコリした軟骨とはコラーゲンの種類が異なります。
また、軟骨というと焼き鳥のイメージが強いですが、サメの軟骨も居酒屋で食べられるかもしれません。みなさんは梅水晶という料理を聞いたことがあるでしょうか?
これはサメの軟骨を細かくスライスし、それを梅肉のタレとあえたおつまみです。見かけたら頼んでみてはいかがでしょうか。私も個人的に好きなおつまみですね。
カイコ
カイコは絹を生み出す昆虫です。幼虫のときに口からフィブロインと呼ばれるタンパク質の繊維を吐き出し自らの繭とします。
絹=シルクというと高級な織物というイメージがあるかと思いますが、現代の科学において生物が生み出す繊維状タンパク質という意味でのシルクはいつも注目の的になっています。
これまでこのnoteで紹介をしてきましたが、カイコ、クモ、ミノムシが吐き出すシルクはそれぞれ異なった特徴を持ち、医療やデバイスといった先端科学への応用が期待されているんです。
さらに、このカイコの幼虫が持つタンパク質繊維を吐き出す能力を利用して人間にとって有効活用できるコラーゲンを吐き出してもらえないかという研究が進められています。
最近ではカイコの幼虫の中でI型やIII型コラーゲン分子を作りだすことに成功しました。まだ、これらを口から吐き出してコラーゲン繊維とするまでは至っていないようですが、もしかすると近い内にコラーゲンを吐き出すカイコも生まれるかもしれませんね。
単細胞生物とコラーゲン
太古の昔、生物はもともと単細胞生物でした。当然、単細胞では持てる機能もそう多くはありません。
そこで様々な機能を持つ細胞が結合し多細胞生物が生まれました。私たち人間も多細胞生物ですよね。
進化の過程はまた難しい話になるので触れませんが、このような多細胞生物が生まれるには細胞間を結びつける材料が必要になります。
それが細胞外マトリクスであり、これまで見てきたコラーゲンというわけです。中でも細胞外の基底膜の主成分であるIV型コラーゲンは全てのコラーゲンの起源とも考えられているそうです。
つまり、コラーゲンは私たち人間どころか多細胞生物を作るための不可欠な材料だったといえるでしょう。
植物にはコラーゲンがあるのか?
ここまで読んでもらうと動物は豊富にコラーゲンを持っていることがわかりますが、植物は一体どうなんでしょう。植物もまた多細胞生物ですが、こちらは少し様子が違います。
実は植物の体を支えているのはコラーゲンではなくリグニンとセルロースになります。
これらは植物が持っている動物よりも固い細胞壁に含まれます。セルロースという言葉は何となく聞いたことがあると思いますが、私たちも普段使う紙の成分ですね。
一方、リグニンは植物が木になるときに獲得した高分子フェノール性化合物です。3次元網目構造をもつことが知られており、さらにその物質としての複雑さからいまだに未解明の点も多いようです。
最近では、リグニンの研究も進められており、今後の発見に期待できますね。
最後に
私たちが好んで食べるプリプリとしたうなぎやフカヒレがコラーゲンであるというのは驚いたのではないでしょうか
生物学的にどうかはわかりませんが、本能的にコラーゲンを好むようになってるのかもしれませんね。
こうして私たちの体の中に取り込まれたコラーゲンはペプチドにまで分解されて体内に吸収されます。吸収されたコラーゲンの成分は今度は私たちの体の様々な箇所でいろいろな働きをするようです。
ということで次回はコラーゲンの代謝について紹介したいと思います。
参考文献
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