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【お茶の科学】なぜ玉露は甘くておいしいのか?

日本を代表する飲料である緑茶、その中でも高級とされるのが玉露です。
玉露は高くておいしいと言われますが、なぜ普通の緑茶と違うのか説明できる人は少ないでしょう。

今回は、そんな玉露とほぼ兄弟のような関係にある抹茶について紹介したいと思います。

玉露と抹茶は茶摘み前が大事

私たちが普段飲んでいる安価な緑茶は煎茶でしょう。

それに対して高級品とされる玉露は何が違うのでしょうか?

実は、煎茶と玉露の違いは茶摘みをする前に遮光性のカバーで覆うか否かで決まります。通常の煎茶は特にカバーを使わず、そのまま収穫しますが、玉露の場合は20日程度カバーを使って光を遮ります。

そうすることで、少ない光で光合成をするために、葉緑素(クロロフィル)が多く作られ深い緑色の茶葉に育ちます。

また、お茶のおいしさの秘密でもあるうまみ成分のテアニンは光を浴びるとカテキン(タンニン)に変化し渋みの原因となります。それに対してこのカバーで覆う被覆栽培では、テアニンがそのまま残るため渋みが少なくうまみの強い茶葉が収穫されるというわけです。

このひと手間があるため、玉露の方がつくるのが大変でお高くなってしまうんですね。

ちなみにかぶせ茶と呼ばれるのは玉露ほどではないものの収穫前10日ほどカバーを被せるようですね。

うまさの秘密テアニンとは

テアニンはあまり聞いたことがないという人もいるかもしれませんが、実は強力なうまみを持つアミノ酸の一種です。

うまみ成分というと昆布や鰹節から採れるグルタミン酸やイノシン酸が有名ですが、お茶から採れるテアニンはグルタミン酸とよく似た構造をしています。

テアニンはチャノキとその仲間、そしてキノコの1種からしか見つかっていないようで、あまり聞きなれなくても仕方ありませんね。ある意味貴重なアミノ酸であるテアニンには単なるうまみだけでなくさまざまな効果があるとも言われています。

中でも有名なものがストレスを軽減させる効果です。

睡眠の質の改善や集中力の向上などテアニンは脳に直接影響を与えると考えられています。

またテアニンはカフェインの効果を抑制するはたらきも持っており、お茶に含まれるカフェインを弱めるとも言われています。カフェインに弱い人でも玉露は飲みやすいお茶かもしれません。

玉露と抹茶は加工方法が違う

さて、玉露がなぜ高いのか?なぜおいしいのか?についてはわかりましたが、もう一つ高級茶がありますよね。

そうです、抹茶です。

アイスやラテなどさまざまなところで耳しますが、本物の抹茶はちょっと高いし作法もわからないしでなかなか手を出せない高級品ですよね。
この抹茶は玉露とどう違うのでしょうか?

実は抹茶も玉露と同様に被覆栽培にて育てられた茶葉を使います。
違うのは具体的な加工方法なんです。

玉露は煎茶と同様に、殺青(蒸し)→揉捻(揉み)→乾燥の順で作られます。

それに対して、抹茶は蒸して酸化酵素の働きを止めた後、揉みの作業がなく乾燥されます。

こうして作られた茶葉を碾茶(てんちゃ)と言います。

引用元:http://kyotofurukatsu.jp/tennteanohanasi

この碾茶を茶臼で挽いて粉末状にすると私たちの知っている抹茶となります。

抹茶の定義は明確ではなく、世の中には粗悪品もたくさんあるようですが、本物と呼べるものは碾茶を茶臼で挽いたものだそうです。

抹茶は5~10μmの粉末であるため、吸湿・吸臭しやすく、保存が難しいと言われています。これは粉末状になったことで表面積が増えて外界の水分や匂い物質と反応しやすくなってしまうためでしょう。

ちなみに、碾茶をお湯で抽出して飲むこともできるようで、玉露のような高級な味わいがあるそうです。ただし、玉露と違って揉む工程を行っていないため、ゆっくりと長時間かけて抽出する必要があります。

最後に

今回は玉露と抹茶が普通の煎茶とどう違うのか紹介しました。私自身調べてみるまでは全く知りませんでしたが、茶の栽培方法に違いがあるとは驚きですね。

紹介したうまみ成分のテアニンも日本の研究者が玉露から発見したらしく、その名も茶の旧学名が由来とされています。

振り返ると、被覆栽培という生物学的な観点から化学物質としてのテアニンを上手に生み出し、うまみとリラックス効果に応用している日本の文化は、科学的に見てもとても面白いものです。

しかし、日本が生み出したお茶の科学はまだまだ深い領域に突入します。
次回は茶道で点てられる抹茶について物理の視点から見てきます。

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