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【スパイスの科学】みんなが知らないバニラの秘密

アイスクリームと言えばだれもが思い浮かべるバニラですが、スパイスとしてバニラの使われ方について知っている方はどのくらいいるでしょうか?

意外とバニラという名前は知っていても、いったい何なのか正しく説明できる人は少ないと思います。

今回はそんなバニラについて紹介していこうと思います。

バニラの始まり

バニラの栽培は約1000年前からメキシコ東岸で始まりました。最初はカカオ飲料の風味付けとして使われていたそうです。


その後、スペイン人のコルテスの征服により、バニラとカカオはスペインに持ち帰られることになりますが、バニラの生産はメキシコのみで行われていました。

というのも、バニラという植物はとても特殊で受粉するためには、現地に生息するハリナシバチの存在が必要だったようです。

1830年にベルギーの植物学者がバニラの受粉の謎を解き明かし、受粉テクニックを開発してからは他の地域でも栽培が可能になったようです。

さらにそれから約40年後、ドイツ人科学者の手によってバニラの香り成分であるバニリンが人工的に合成され、以降貴重なバニラの香りが一般大衆にも広まりました。

バニラの抽出方法・加工方法

そもそもバニラってどんな形をしているのか、想像するのが難しいでしょう。バニラはインゲン豆のような莢(さや)の部分を使います。

その莢に熱湯をかけるか蒸気にさらしてから密閉容器に入れてスウェッティングと呼ばれる酵素反応を起こさせます。

そのとき植物の防御機能によりフェノール類の分子を放出し、空気と触れることで黒っぽい色に変わります。

さらに重さが20%になるまで乾燥させて、ようやく香り豊かなバニラが誕生します。

こうして出来上がったバニラの莢をアルコールに漬け込むことで甘い香りを抽出することができるんです。

バニラの香りを作り上げるのは少々骨が折れそうですね。

バニラの成分と料理への応用

バニラの主成分はバニリンと呼ばれるフェノール類の物質で、バニラの風味の85%を占めると言われています。まさにバニラの香りの根幹を担っているといっても過言ではありませんね。

現代では人工合成されたバニリンがバニラエッセンスやバニラオイルとして一般的に使用されており、バニラ食品の97%は人工バニリン由来だとも言われています。


バニリンについて調べてみると想像以上に面白い科学的なお話がたくさん見つかりました。せっかくなので、記事を分けてまた次回紹介したいと思います。

加えてバニラには他にもスモーキーな香りのグアヤコール、甘い香りのアニスアルデヒド、チェリー風味のフローラルなピペロナールが含まれています。

このスモーキーな香りはカカオと非常に相性が良く、そのような点もあって昔から現地で利用されていたのでしょうか。

かなり高価なスパイスですが、いざバニラビーンズを使用するときはどうしたらいいのでしょうか。またどんな料理に使えるのでしょうか。

バニラの成分は揮発しやすいため、バニラビーンズはすぐに使い加熱は低温で行うことが推奨されています。莢から香りを引き出す必要があるため、使用時には軽く叩いて、調理の最初の方にいれてゆっくり繊維から風味を抽出するといいそうです。

そしてバニラの使い道はスイーツやデザートだけでありません。

バニラビーンズはニンジンやトマトを使った野菜料理と合わせるレシピが紹介されています。レシピの中身を見てみると、オリーブオイルを使ってあらかじめバニラの香りをオイルに移しておくと良いそうですね。

私は食べたことがないですが、バニラビーンズを手に入れる機会があったら是非挑戦してみたいです。

また野菜料理だけでなく、魚介類にもあうようです。バターソテーした魚や魚介類と一緒にバニラを加えてみるといいみたいですね。

最後に

今回はスパイスとしてのバニラについて紹介しました。言葉としては馴染みのあるバニラですが、その実態は意外と知られていないものだったのではないでしょうか。私自身初めて知ったことがたくさんありました。

本来は超高級品であるバニラも科学技術の発展によって私たちの身近な存在になったというのは面白い話です。

もしかしたら、科学と文化の発展の中で、100年後には聞いたこともないような高級スパイスが身近な香料として使われているかもしれないですね。

参考



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