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めちゃくちゃ面白かった短編小説の話をします。

お久しぶりです。

忙しさにかまけて、気づけば最後に何かしらのアウトプットができたのが5か月前。
「続けるのは難しいけれど何もしなければ半年間はあっという間に過ぎる」という事実が一番モチベを蝕みますね。

今回はもともと好きだった日本のSF作家『伴名練』
最近まとめて読んだ二冊の電子短編があまりにもツボだったので感想を書いて、願わくば布教したい。

伴名練についてはSF好きにとっての認知度はまず抜群として、自分のように読書の中でたまにSFを読むライト層にとってもだいぶ普及している作家かと思います。

特に表題作(たぶん)の『なめらかな世界と、その敵』
SF短編集として全編を通して物語のクオリティや表現力が素晴らしく、3年前の作品にも関わらずいまだに本屋やネットでよく見かけます。(最近『かぐや様は告らせたい』の連載終了で話題になった『赤坂アカ』が表紙を書いてるのも強い)

次にハヤカワ文庫JAから出てる短編集『日本SFの臨界点』シリーズ。
どの作品も編者として関わっている伴名練の異常なまでの読書量と知識、なによりもSF愛が溢れていてます。SF好きはもちろん、SFに馴染みのない読者にとって「間違いなく面白いSFを解説付きで読める」という最高の場が提供されてます。おすすめです。

このシリーズは、短編集として掲載されいている作品の性質に焦点を当てた『恋愛篇』『怪奇篇』のほか、作者に焦点を当てた『新城カズマ篇』などもあるので、気分に合わせて是非読んでみて欲しい。


さて本題。
今回語りたいのはそんな稀代のSF作家『伴名練』が電子版として出版している二作品について。
一つが小説すばるにて連載された『全てのアイドルが老いない世界』
もう一つがコミック百合姫にて連載された『百年文通』

もしこの段階で「ちょっと読んでみようかな?」と思ってくれる人がいたら、是非ここから先は読まずに上のリンクを辿って、物語の冒頭から作りこまれた伴名練の世界にぶん殴られてください。

両作品ともページ数が100p前後ながら描き方が本当に魅力で、「ページを捲りながらまったく新しい物語が少しづつ頭の中で形作られていく快感」という中編小説の魅力が致死量で摂取できます。

そんな中編小説、「何も知らずに読んで自分の中にその世界を1から創る」ことが一番の魅力だということは承知の上で、少しだけ触れます。(語りたいので、だから興味のある人は先に読んでね)

まずは一冊目『全てのアイドルが老いない世界』。

「不老不死の存在」として人々を魅了し続ける伝説的なアイドルユニットの片割れが表舞台を去り、「普通の人類に戻る」ことを宣言した場面から物語が始まるSFアイドル小説。

その魅力は物語の中心となる「アイドル」のキャラクター性や展開の作りこみのみならず、文字として読んでいるだけにも関わらずワクワクしてしまうほどのライブの描写力でした。

堅苦しくよく分からないとも思われがちなSFにおいて、文字で音楽ライブを表現しその上魅力的かつSF要素として成り立たせるのは異質だし、その魅力と力量を50p程度で読者に「分からせている」点には圧倒されるしかないです。

次に二冊目の『百年文通』。

令和の世にマスクを付けながら読者モデルをする女子高生が、撮影で訪れたお屋敷で偶然見つけた「100年前と繋がっている机」。大正時代を生きながら好奇心旺盛で未来へ思いを馳せる大正少女と、令和時代を肩を窄めて窮屈に生きる令和女子高生が、100年の時を手紙によって繋ぎ思いを通わせていく(百合)SF小説。

令和と大正を繋いだ少女同士の友情ほっこり小説かと思いきや、実際の過去を交えながらSFらしく世界線が次々と揺れ動き、かと思えば読者が生きる現実へリンクしていきます。
百年という時間差と、物語の舞台となっている神戸という土地も巧妙に物語へ組み込まれており、ストーリー展開が圧巻過ぎて読了後には「天才?」とそわそわしっぱなし。強すぎる〜

今すぐ読める分量であり、そしておそらく「今すぐ読むのが一番面白い」作品でもあると思うので是非ともオススメしたい一冊です。

ちなみに『百年文通』は、コミック百合姫の「表紙」で12ヶ月にわたって連載されていたようで、その無茶苦茶な連載方法からも話題を呼んでいたそう(この作品を12か月小出しで読まされていたら多分狂っていた)。


というわけで以上、伴名練の短編小説
『全てのアイドルが老いない世界』『百年小説』
めちゃくちゃ面白いから是非読んで欲しいという話でした。

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