月の鳥

 一人の少女が宇宙空間を航行する。彼女の名はジョナサン。人型の宇宙探査船、その試作品だった。
 人工衛星と同じようにロケットの弾頭として打ち上げられ、彼女は宇宙空間に放出される。
 ジョナサンはそこで目を覚ますと腰部に備え付けられたナノマシン散布機を起動し、太陽風を受けるための帆を作り出す。
 それはまるで鳥の翼のような形状をしていた。
 ジョナサンは地球を見据える。彼女の目を通してモニタリングされていることを知っているからだ。地上で待つスタッフに見せたかった。
 衛星を通してジョナサンにテスト用のルートが送信される。目的地は月だった。
 月。人類が到達した中で最も遠く、最も近い地。
 人類でない自分が到達することを許されるだろうかとジョナサンは思う。
 太陽風を受け、彼女はゆっくりと月へ向けて動き出した。スラスタの燃料は主に帰路で使うように指示されている。
 スペースシャトルよりもはるかに小さいジョナサンは宇宙空間を航行するには向いていた。
 質量が小さい故に翼に受ける太陽風の量も少なくて良いからだ。
 17時間ほどでジョナサンは月の重力圏に到達する。
 わずかな月の重力に引かれ、ジョナサンは月面に着陸した。
 周囲を見ていると地上スタッフから祝福のメッセージが届く。ジョナサンは短くThank Youとだけ返した。
 月を歩いていると過去に派遣された探査機の残骸をいくつか見つける。
 ジョナサンはそれらの残骸をナノマシンに捕食させ、ナノマシンの保有量を増やした。
 宇宙にあるものは誰の所有物でもないし、何よりも人類の捨てたものは人類のものの手で始末するべきだろうとジョナサンは考える。
 不意にメッセージが届いていることに気づき確認すると太陽が昇る時間であることを教えてくれていた。
 彼女が振り向くと地球の影に光が見える。
 そしてその中に動くものがあった。

 人型ロボット探査船の話。
 なんというか設定の開示に尽きてしまっている感じがしてボツ。

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