【MTG】《突撃陣形/Assault Formation》について

 《突撃陣形》というカードがある。

 2マナのエンチャントで、自分がコントロールしているクリーチャーを、パワーではなくタフネスに等しい点数の戦闘ダメージを割り振るようにする。
 また、緑1マナで防衛持ちクリーチャーを対象とし、防衛を持たないかのように攻撃できるようにする能力と、(2)(G)でターン終了時まで自軍のクリーチャーに+0/+1の修正を与える能力を持つ。

 《包囲の塔、ドラン》が持つ、パワーではなくタフネスに等しい点数の戦闘ダメージを割り振るようにする能力の影響範囲を自分限定にし、エンチャントにしたカードだ。
 白黒緑の3色で0/5のクリーチャーだった《包囲の塔、ドラン》と比べると、緑単色の2マナになり、触れられにくいエンチャントとなったことで取り回しが良くなっている。加えて起動型能力でドランではできなかった防衛持ちのクリーチャーを攻撃させられるようになり、3マナ掛かるもののタフネスを増加させることで事実上の打点上昇を行える能力も得ているので見方にもよるが上位互換と言って良いかもしれない。
 およそ10年前に登場したカードで、これについて語れることは今までに重厚(パワーではなくタフネスに等しい点数の戦闘ダメージを割り振るメカニズムの総称)デッキについて語る際に語り尽くしたと思われるので今回は趣向を変えて《突撃陣形》のもう1つの側面について語る。

 世間一般ではこの《突撃陣形》と1マナ0/5や4マナ0/17のカードを組み合わせて殴り抜けるデッキが細々と存在しているが、《突撃陣形》の組み合わせ先はそれだけにとどまらない。
 1/2のような、パワーとタフネスの差が小さいクリーチャーを採用しているデッキでもタフネスの方が大きいなら、《突撃陣形》は有用である。
 1/2のクリーチャーがタフネスで殴ることで実質的に2/2として振舞うならば、《突撃陣形》は2マナで+1/+0の修正を掛けていることと同じだということがわかるだろう。
 無条件に全体強化を行うエンチャントの相場が3マナということを考えると、2マナの《突撃陣形》は全体強化エンチャントとして割と破格な性能をしていることが窺える。……もちろん、パワーよりタフネスの方が高いクリーチャーで統一できるならという条件がつくが。

 また、パワーの小さいクリーチャーを大量に採用するデッキでは、高パワーを狙い撃ちにする全体除去を用いたり、潜伏であったり、パワーを上昇させたくないことが時折ある。《突撃陣形》はタフネスで戦闘ダメージを与えるため、低パワーのまま打点を上昇させることができるのだ。
 特に3マナ払って+0/+1する起動型能力はタフネスの上昇と共に《突撃陣形》自身の常在型能力によって事実上+1/+1と同等の結果を引き起こしながらパワーを上昇させない。
 あるいは全体のタフネスだけを上昇させるエンチャントなどで打点を上昇させながら、パワーの値は小さいままという状態を維持できる。
 その昔、タルキール・ブロック(まだブロック制の時期だ!)がスタンダードであった頃、当時最強クリーチャーと呼ばれた4マナ4/5の《包囲サイ》を4積みし、《突撃陣形》を2枚だけ添えたデッキを公式が紹介し、そのタイトルが《突撃陣形》であったことに殺意を覚えたものだが、おそらくこの2マナでわずかに打点を上昇させる使い方がWotCの想定したものだと思われる。つまり、今、書いている《突撃陣形》の側面こそが、《突撃陣形》のメインのデザインなのだ。キレそう。

 ともあれ、《突撃陣形》は採用するクリーチャーを選りすぐれば2マナでパワーを上昇させずに打点だけを上昇できるというおいしいとこどりのカードへと変貌する。
 一般的にクリーチャーはパワーが高いほど良いとされているため、2人対戦での構築でお呼びはかからないだろうが、EDH(統率者戦)ならば1枚制限の構築の都合や統率者とのシナジーの都合上、低パワーでタフネスの方が微妙に高いクリーチャーを多く採用することはあるはずだ。
 もしパワーを上昇させたくないが打点の上昇はしたいということがあれば、是非《突撃陣形》の採用を考えてみてほしい。

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