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留学生の入国時、ゆうちょ銀行口座開設手続きでの顛末


留学生が続々入国する4月

まもなく4月です。先日私が勤める日本語学校の卒業式が終わったばかりですが、すでに4月の新入生の迎え入れ準備で学校は慌ただしいです。日本へ留学で入国してくる学生さんは、まだ現時点では日本語が上手とはいえません。もちろんある程度の勉強はしていきているので、ひらがな・カタカナ・簡単な挨拶などは勉強していますが、将来日本で進学したり就職するための基礎として、日本語学校でみっちりと2年間勉強することになります。

在留資格「留学」で入国、しかし本音は仕事

これは中国以外の学生はほとんど共通と言っても過言ではありません。「留学ビザ」を得て日本に入って来たので勉強が目的かというと、実際は「仕事目的」で来たと本音を吐露します。もちろん将来日本の会社に正社員として入社するには、日本語学校でしっかり学び、JLPTという日本語の試験でN3、N2をクリアしていかなければなりませんので、仕事のための勉強として入国してきたというのは何も不自然ではないわけです。

留学生が入国してから行う手続き

  1. 市役所転入手続き(在留カードの裏に入国時住所を裏書き)・国保加入

  2. ゆうちょ銀行口座開設(メガバンクは入国後すぐには口座を作れない)

  3. 携帯電話契約

  4. 自転車購入、防犯登録

  5. 損害保険加入

  6. etc

日本語がまだわからないのに、様々な手続きがあります。もちろん日本語学校がサポートしますが、学校の先輩が国の後輩に通訳代わりになって指導することが多いです。

何よりもまず、「ゆうちょ銀行口座開設」が必要

アルバイトをすぐに始めたとしても、給料は1ヶ月先ですから焦ることはありません。しかし、携帯電話の契約が必要ですので、ゆうちょ銀行の口座開設は最優先ということになります。近くの郵便局に行って、「口座をつくりたいです。」といえばいいかというと、簡単にはいきません。口座開設は申込者にとっても時間を取られるだけでなく、金融機関にとっても大変な負担がかかること、らしいのです。最もメガバンクは入国したての留学生は嫌います。そもそも口座を作ってくれません。入国後半年くらいすると、しれーっと留学生たちはメガバンクの口座を作り出しますが、ビザ更新に時に求められる通帳コピーを出すことはありません。どういうことなんでしょうねぇ。

ゆうちょ銀行暗黙のルール「窓口手続きは1日3人まで」

2年前、私は10人程度をゆうちょ銀行の大きな支店の窓口につれていきました。露骨に嫌な顔をして「予約してないのぉ・・?」とつぶやく行員がいましたが、予約が要るなら今とりますから、日程を言ってください!!と強く申し上げたところ、つぶやいたスタッフはそそくさと裏に下がって、別の親切な女性スタッフが対応してくださり、全員分開設手続きができました。以後、4月になると留学生が殺到するので分散のため、「1日3人ルール」ができたのです。お互いに譲り合ったという感じです。

ゆうちょ銀行の支店長が来校「アプリが便利です。」→否

昨年の春でしたか、地元のゆうちょ銀行の支店長が来校されました。「口座開設アプリがあるから便利です。」とのこと。これって、スマホアプリですよねぇ??携帯・スマホを契約するのに銀行口座が必要なのに、銀行口座を作るのに携帯・スマホが必要って、順番が逆じゃないですか?と、私も辛辣に申し上げてしまいました。支店長さんも、「そうですね・・・。」ということで、あとはほぼ無言でお引き取りになられました。

ゆうちょ銀行の電話案内「アプリが便利です。」→否

つい先日です。ゆうちょ銀行の関西エリア担当部署から電話がありました。この春から新しくなったアプリが便利です。来店不要で手続き簡単にできます。そうですか。簡単ですか。手間が省けるのは学生?学校?それとも?・・・はっきり言って、「簡単になる」は私は信じていませんでした。案の定、詳しく調べると日本語入力はマストなので、新しく入ってきた留学生が自分でできるわけがありません。結局、日本人のサポートが必要です。私は、本来は銀行が引き受けるべき手間を日本語学校に押し付けるということか。日本語学校の教員も人件費がかかるんだ。その点どう思う?という趣旨を、極めて丁寧にお聞きしました。「申し訳ございません。勉強不足でした。そういうつもりでご案内したのではありません。」私、いやいやごめんなさいね。あなたに文句言ったわけじゃない。意見としてフィードバックしてくださいね。

日本語学校に人件費の転嫁?と思うと腹が立つ

日本には「神Excel」という言葉があります。なんでも紙にすることを想定したデータの処理の仕方は批判されます。しかし、マイナンバーカードが苦労しているように、データ化、IT化するというのは、設計思想を間違うと逆に手間がかかるということがあるんです。ゆうちょ銀行の口座開設手続きも同様で、紙に書けば4枚で終わるものを、アプリでやるとああだこうだで時間が奪われるばかりです。1人だけなら簡単かもしれませんが、何十人もやっているとかならずエラーが起こります。私としては、なんでゆうちょ銀行の手間を省くためにに、こんなに私が苦労するの?と思うわけです。本来やる義務はないんです。留学生がこれから地域でお世話になるので、なるべくお手間をおかけしないように、というのが我々の本音です。勝手に行って来い!学校は知らん!というところもあるそうですよ。

紙とデジタルの融合の「申込書作成Webアプリ」は優れていた。

最近、ゆうちょ銀行のWebサイトから消えたようなのですが、口座開設申込書作成アプリが私は案外好きでした。これは、申込者がパソコンで情報をポチポチ入力すると、最終的に申込書PDFがダウンロードできます。この情報がオンラインでゆうちょ銀行に飛ぶわけではありません。一旦様式に情報が書き込まれ、その情報がおそらく大きなQRコードに埋め込まれた状態になります。そのQRコードを窓口で読み取って、手続きを進めるという形です。もちろん、この時点で申込書が完璧とはいえません。事情を聞いていいくうちに修正も入るでしょう。しかし、窓口で0からやるよりは速いのです。

「手続きアプリ」が実務上使えない理由


「便利です。簡単になります」と、安易な案内を受けた「手続きアプリ」。徹底的に研究しました。Webで説明を読むと、本人確認書類は「免許証」か「マイナンバーカード」とあります。おや?外国人は想定していない?。もちろんそんなことはありませんでした。アプリを起動すると、ちゃんと国籍を問われて、在留カードの有無を聞かれます。ちゃんと裏面も確認して、住所を入力していくことになります。なぜか免許証は住所変更の裏書きがあると手続きができないと書いてありますが、外国人の入国時は裏書きがあるのがデフォなので、裏書き読み込み機能がなかったら成立しません。
在留カードを読み込んだ。次は本人の写真か。これは、在留カードの写真と同一人物かを判定しているようです。時々、同一人物と認識されず、手続きが止まることがあります。鮮明でない写真を使っていることもあるからなんですね。まあ、これは申込者が悪いので、諦めて窓口に行くコースです。
次はメールアドレス。これは「ゆうちょダイレクト」の申し込みも兼ねているので、自分のメールアドレスが必要です。審査結果の連絡があるので、受信できるメールアドレスが必要とのこと。ちょ、ちょっと待ってください。メールアドレス(例えばGmail)くらいは持っているでしょうが、どうやって受信するの?と。「郵便局の方、携帯・スマホの契約がまだの方は、他の人から借りても口座開設申し込みができる」と言いましたよね?結局、国の携帯を無線LANに繋げないとできないのか。日本語入力設定もしなければならない。エグいほどサポートがいるじゃないか。電話案内の方は続けます。どなたか学校の方に端末を貸していただいて・・。今どき、スマホという端末を他人に貸すリスクわかってるでしょ?個人情報見られたくないんですよ。簡単に言わないでいただきたい。学校としては端末は貸せません。

まとめ:結局紙の申込書の勝利


悲しいかな、こういう結論になるんです。アプリで完結できないんですよ。誰かに負担を付け回しているだけです。ゆうちょ銀行としてはある程度の数をアプリ申し込みにぶん投げれば勝ちかもしれませんが、入力サポートという膨大ながら対価なき義務だけを課せられたら、日本語学校の経営なんてたち行きません。もうちょっとよい提案がない限り、アプリを使いなさいなんて、絶対学生には勧めませんよ。結局、2024年3月28日現在、ここまでです。入国後、実際に手続きを終えたら、また振り返りたいと思います。


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