ピダハン族の存在は知っているだろうか?
アマゾンの原住民が世界の類のない幸せを享受している。
その理由は、経験の即時性を重視している。
これは自分の経験から外れた事実を重んじないメンタリティを意味する言葉で、簡単に言えば、物事をありまままに受け取る姿勢のことである。
その証拠に、ピダハン族は実際に見聞きしたことしか話さない傾向がある。
魚を捕った。
カヌーを漕いだ。
子供と一緒に笑った。
友がマラリアで死んだ。
彼らの会話はどれも現実にあった即物的なテーマに基づき、架空の話はほとんど見られない。
「もっとお金を持っていたら」や「あの時別の行動をしていたら」といった話題を持ち出さない。
言い換えれば、ピダハン族の会話には過去と未来は存在しない。
おかげで明日のことをくよくよと悩まず、過去の失敗に捉われず、ただ目の前の現在だけを楽しめるわけである。
そのため、彼らは特定の宗教を持たず、精霊や祖先の霊といった概念もなく、自らの成り立ちを説明する創世神話もない。
そもそもピダハン語の文法には、過去や未来の概念すらほぼ見られないというから驚きである。
今も狩猟採集で暮らす部族はいくつも存在するが、ピダハン族ほど特異な事例は珍しいだろう。
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