アニメに学ぶ、女性差別を無くす方法 「リーゼロッテという人格」

女性差別はどうればなくなる?

最初からクライマックスのような話だ。
この記事をご覧になっているあなたには何か良い案があるだろうか?
まず挨拶代わりに悪手あくしゅから書いていこう。
・女性差別感情を持たないように教育する
・女性差別に対する取り締まりを強化する
・女性の社会的地位を高くする

これらのような対策は完全に逆効果となる。
女性差別と書いているのでピンと来ないかもしれない。少し言い換えてみよう。

・◯◯党に対する悪感情を持たないように教育する
・◯◯党に不利益を及ぼす可能性のある言動を厳罰化げんばつかする
・◯◯党員の社会的地位を高くする


どうだろう?
少し言い換えただけで印象が変わった。何やらクーデターや革命でも起こされそうに思えるが、これでも有効な対策だと思うだろうか?

上記のような対策は愚策中の愚策なのだ。差別の解消を目指す際に考えるべきなのは、何故差別されるのか?である。
「女叩きをする人間が女性の何を叩いているか」に注目しなければならない。

ただ、これは男性差別にも言えることだが、相手が「女である、男である」という事実のみによって叩いている意見は完全に無視して良い。こういった憎悪のみで属性全体を差別するような言説に耳を貸す必要はない。だが、そういった相手にレッテル貼りをして差別するような発言をすれば同レベルだ。これだけは覚えておいた方が良い。

なるべく広い範囲から女性の何が叩かれているのかを調べてみた結果、その傾向が見えてきた。それを適当に書き連ねるのは簡単であるが、「ならどうすれば良いのか?」ということが提示できなければ意味がない
よって逆に、モテたり、尊敬されたりする女性像を提示することで差別の解消のヒントにしたい。本当の意味でモテる女性像は、そのまま尊敬も集められる。尊敬する相手を差別する人間など、そうはいないだろう。
だが、変に堅苦しい内容ではつまらないので、ここはアニメに登場する女性をピックアップしようと思う。

だがその前に、モテるとはどういうことかを定義しなくてはモテについて語れないだろう。
モテるとは異性から好意を得ること、あるいは得ていることだ。

だが、モテには種類がある。汚い言葉で申し訳ないが、穴モテには特に注意が必要だ。
ハッキリ言って、女性は最低限女性として見られるレベルの見た目をしていれば、不細工だろうと、太っていようと、痩せ過ぎだろうと、性格が悪かろうと、社会的地位が低かろうと、貧乏だろうと、不人気だろうと、同じ水準の男性よりも圧倒的にモテる

ただし、アラサーまでは。ここからは別のモテ方が必要なのだ。

なぜか?それはもう知っているだろうが、性的価値だ。まずはそれを認めるところから始めなくてはならない
もし、これが認められないなら、
女性のアラサー以降のモテは壊滅的であるし、どれだけ訴えようともミソジニーを無くすことはできない。

さて、本題に入ろう。例に出すアニメのタイトルは以下だ。

ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん

この作品の主人公は「リーゼロッテ・リーフェンシュタール」という名家の令嬢だ。
王太子の婚約者であることからも家格も高い。
彼女は「マジカルに恋して」という乙女ゲームに登場する悪役令嬢だ。

「マジカルに恋して(まじこい)」の主人公はフィーネという庶民の女性であり、この世界の中では貴族のみが持つはずの魔法能力を持つことから、リーゼロッテや王太子のジークヴァルトらが通う、王立魔導学園へ入学することになる。
当然、乙女ゲーという仕様からジークヴァルトも攻略対象であり、ショタから教師に至るまでフィーネとの恋愛フラグがある
そして、リーゼロッテはラスボスなのだ。ここではそのリーゼロッテの魅力について学びたい。

利他精神がある

「あなたのような庶民が王立魔導学園の講義についてゆくのは大変でしょうね。よろしければ私からもご教授して差し上げましょうか?それとも見目麗しい殿方からしか教わりたくはないのかしら?」

ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さんep.1

学園の中庭でジークヴァルトからフィーネが勉強を教えてもらっている。それをリーゼロッテがとがめるのだが、これは迂闊うかつな振る舞いからフィーネの外聞が悪くなることを心配しての発言なのだ。嫌味を言いたかったわけではない
勿論、自分の婚約者であるジークヴァルトと仲良く見えたことに嫉妬した気持ちも含むのだろうが、彼女はそれによってフィーネをどうこうしたり、ジークヴァルトに八つ当たりするような「察してちゃんムーブ」をしない。
言い方こそキツいが、精神的に幼稚ではないのだ。
ちなみにリーゼロッテはジークヴァルトのことが大好きであり、どうでもよかったから当たり散らさなかったわけではない
そもそも、王太子かつ婚約者がいる身でありながら、公衆の面前で他の女性と二人きりになるというジークヴァルトにも問題がある。それが純粋に彼の優しさや気遣いであったとしても。

ともあれ、自分の気持ちを最優先せず、自らより身分の低い相手にも思い遣りを持って接することができる。また、相手の助けになろうとすることのできる精神性は、何歳になっても劣化しない好ましい要素だ。

ただ、誤解のないように言っておきたいが、現実ではツンデレである必要性はないのでマネはしないでほしい。

物語ではここでゲームをプレイする遠藤くんと小林さんの声がジークヴァルトに届くようになる。その声を神の声と信じるジークヴァルトに対して二人は助言をすることになり、この時はリーゼロッテにキスをすることを助言する。
ジークヴァルトはリーゼロッテの頬のあたりにキスするのだが、それによってリーゼロッテは赤面してしまい、それを見たジークヴァルトは驚く。
「私の婚約者が可愛い過ぎる」と。
まあ、この可愛いは今回話したいモテとは違うので深く考えなくてよい。

この時、ジークヴァルトはリーゼロッテを怒らせてしまうと思っていた。なぜならこれまでのリーゼロッテの態度から、自分(ジークヴァルト)を好きだ、などとは思えなかったからだ。そのリーゼロッテの態度の理由は後述する。

浅ましくない

「もっと努力を重ねなければ。あの方に相応しい存在となれるよう。」

ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さんep.1

自宅にて頬にキスされたことを思い出すリーゼロッテだが、その表情は明るくない。なぜなら、動揺してしまったからだ。

ジークヴァルトを好きだという気持ちが隠しきれなかったリーゼロッテはそれを自身の未熟さと考えた。

この発言は、もっとジークヴァルトに愛されたいから出たわけでない。

リーゼロッテの努力の方向性や目的は、

自分磨き(笑)

ではないのだ。その行動はジークヴァルトや国、貴族としての義務のためであり、投資と回収のような浅ましさが存在しない。
自らの利益のために他人を利用したり、不相応ふそうおう返報へんぽうを期待するようなマインドがリーゼロッテにはないのだ。このストイックさもせることのない魅力なのだ。

責任感がある

「我らリーフェンシュタール、王家のため、この国のため、殿下のため、神々より与えられしこの力を、正しく振るうことをここに誓います。」

ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さんep.2

遠藤くんと小林さんによってリーゼロッテとその従兄弟のバルドゥールに寵愛(ひいき)が与えてられた時のセリフが上記だ。
リーゼロッテはその家名が持つ義務や責任と向き合い、背負うことができる。
リーフェンシュタールという大貴族がもつ責任、王太子の婚約者であり、未来の王妃となる責任、神々から恩寵(ひいき)を与えられた者の責任。それらを果たそうという覚悟がある。それはまさにノブレスオブリージュであり、幼稚な被害者意識などない。

リーゼロッテの責任感の強さは美徳であり、自らの足で立つ者の誇りがある。他人におんぶだっこされているうちは永遠に精神的に子供なのだ。
自身の役割を自覚できる精神はいつまでも輝き続ける魅力だ。

社会性がある

リーゼロッテは夏休み中もジークヴァルトに会いたいのだが、彼の公務の邪魔とならないように自分の気持ちを抑えることができる
俗に言う「仕事と私どっちが大事なの!?」というようなマインドにはならないのだ。これは視野の狭い人間にはできないことだ。

自分にとっては得でも、全体として損ならば、それを望まないのが社会性だ。

多くの人間がワガママを抑えることによって社会は成り立っている。身勝手な振る舞いを自覚すらできない人間とは違い、リーゼロッテは自己をコントロールできる。
社会に生きる者としては最も重要な能力であるし、これをもつ者は魅力的だ。

ちなみに、リーゼロッテのツンデレだが、これは幼少期の経験が原因にある。

リーゼロッテは父によってジークヴァルトを紹介される。そして幼い日のジークヴァルトに恋をする。まあ、リーゼロッテも王子様に憧れる女の子な部分はあったのが、幼少期だからね。大人のそれとは違う。

(回想)
「お父様、私ジークヴァルト殿下が大好きよ。殿下にも私を好きになってほしい。それでね、結婚式をして、いつまでも幸せに暮らすの。」
「いいかい?リーゼロッテ。それは殿下にはお伝えしてはいけないよ。」
「どうして?」
「殿下はいずれこの国の王となるお方だ。誰が好きとか嫌いとか、そういうことを軽々しく言える立場ではないんだよ。」
「?」
「婚約者とは言えども、お前は臣下の身。殿下を煩わせてはならない。」
(回想終わり)

ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さんep.6

リーゼロッテは父の言いつけを守り、それ以降はジークヴァルトに対して彼を嫌っているかのように振る舞う
これが、ジークヴァルトがリーゼロッテからの好意に気づかなかった理由だ。
(遠藤神と小林神にツンデレを教えられるまでは)

女性向けコンテンツを男性がバカにする理由

この作品は、いわゆる乙女ゲー世界が舞台なのだが、男性も視聴しやすい仕様になっているのがすごいところだ。
通常の乙女ゲー世界系の作品は男性視聴者には嫌われやすい。もちろん視聴する男性も存在するが。

これは、男性が少女漫画を読まない理由とも合致する。というか、女性向けのコンテンツ自体が男性には嫌悪の対象となる場合が多い。

もしかすると勘違いしている方もいるかもしれないので、必要ないとは思うが、念のため明言めいげんしておこう。

決して、
「女性の価値観に近づくのが嫌だから」
ではない。

むしろ多くの男性は女性の価値基準を知りたいと思っていることだろう。
人間関係は相互理解が重要だからだ。

さて、では男性が女性向けコンテンツを好まない理由を書こう。と言っても、私が情報収集して得た意見などを分析してまとめたものだが。

まず、第一に主人公に好感が持てないことだ。
これに関しては女性の中にも同じ考えの方がいるだろう。

例えば、少女漫画の主人公は基本的に等身大の女性だ。そして、現実では男性から見えない部分も赤裸々に描いてある。その願望や内面に対して男性は共感できないのだ。
また、残念なことに作中で人気のある男性の性質が、実社会では関わりたくないタイプの人間のそれであることも多い。少し古いが俺様系というのもそうだ。最近では溺愛系が流行りなようだが。

冷酷な男性が私にだけ優しい。素敵だろうか?

普通に嫌なヤツだと思うが。

そもそも、そういった漫画では主人公はどんな役割を持っているのだろうか?人間的な成長や魂の輝きは存在するのか?

第二に展開。テンプレ化できてしまわないだろうか?

例)
イケメン(とりあえずあの女でもからかって暇つぶしでもするか。)
「お前、オレのものになれよ?」
おもしれー女「誰があなたなんかと!」
パァン!!(ビンタ)
イケメン(オレに堕ちない!?他の女とは違うのか?)「へぇ、、おもしれー女」

だいたいこんなのだ。もしくは、
例)
イケメン「お前など婚約破棄だ!オレには愛する人ができた!お前と違って本当のオレを愛してくれる!」

A被害者の私(ラッキー!好きなように生きよ!)

B被害者の私「そんな、、私はあなたを愛しているのに」
新しい女(ニヤッ)

共通ルート
もっとハイスペックなイケメンに溺愛される。更にモテモテ。

共通ルート
イケメン「やり直したい」
被害者の私「もう遅い!」


安定感すら感じる。

いつものことだが、
・私は悪くないのに誰かにハメられる(妹、姉、母、友人、親戚、etc)
・なんか追放される(出ていく)
・実は有能でモテモテで
・新天地で溺愛されて
・群がる男性をバッサバッサ
・嫉妬する女性をバッサバッサ
・めちゃくちゃモテるけど私は趣味に生きるだけ、なのにイケメンに気持ち悪いくらいアプローチされて困っちゃう
・お前たち(周りの女性)が憧れてるイケメンは私がそでにしている
・逆恨みで女たちから嫌がらせされちゃう(華麗に返り討ち!もしくはイケメンが頼んでもないのに守ってくれる!周りの女を脅してくれる!)
・有能な私の才能、あるいは美貌びぼうがバレちゃう
・みんな私の顔色をうかがっている

少し意地悪かもしれないが、今思いつくだけでもこのくらい出てくる。

男性でこれを愉快だと思えるのは、甘く見積もっても少数派だろう。もはやポルノだ。多くの男性は女性作家に、ではなく、女性向けコンテンツにこのような嫌悪感がある。

だからこそ、リーゼロッテはすごいのだ。

この作品は元々は小説家になろうで連載され、その後カドカワBOOKS書籍化された。
そしてB's-LOG COMIC掲載され、コミック化もされた。
書籍化媒体女性向け作品と男性向け作品が混在しているものの、漫画化された月刊誌女性向けのものだ。
内容から考えても、この作品が女性向けであることは明白だろう。

だからこそすごいのだ。

乙女ゲー世界というのはその性質上、攻略対象が複数存在する。男性はとにかく移り気な女性が嫌いである。

自分以外の男性の影を感じると、「次行こ」となるのが多数派だ。むしろ、そこで諦めない男性は危険だ。本記事の内容とは関係ないが、ここで退かない男性は、もし将来的に交際することになると、DVやモラハラ、性加害などを起こす可能性が高い。

話を戻そう。

乙女ゲーの主人公はフラグの関係上、多くの男性と関わり、フラフラすることになる。
これに好感を持つ男性はほぼいない。これは少女漫画も同じだ。(交際後、マンネリ化防止のために別の男性が登場する展開などを含む)

しかし、主人公のライバルポジションのリーゼロッテは婚約者に一途であっても良い。

ここが上手いのだ。

その上、性格身分相応の自覚があり、責任感があり婚約者の威を借ることなく私利私欲で動かず他責せずに反省ができ思いやりがあり社会性がある

付け足すなら、
気遣いをしていたのがバレると、たまれなくなって走り去ってしまうようないじらしさがあるし、恥ずかしいと赤面して涙ぐんでしまうほどに元々は感情豊かなのだ。そんな彼女が自分の感情を抑えて頑張っている。応援しない理由があるだろうか?

そんなリーゼロッテに不快感を覚える男性はそうはいない。穿うがった見方をすればこの作品も溺愛系のエッセンスをもっている。それが足枷あしかせにならないのはすごいことなのだ。

まとめ

リーゼロッテは可愛いのだ。解説の小林さんが「リゼたん可愛すぎぃぃっ!!」と荒ぶるほどに可愛いのだ。私もそう思う。
だが、それはそれとしてリーゼロッテにはその可愛さ以上に素晴らしい性質がある。
それがここまでに挙げた要素であり、尊敬に値する美徳なのだ。

人から尊敬されるには相手より上位に立てば良いというわけではない。偉そうにしたところで尊敬は得られない。

人として評価されなくてはならないのだ。これは同時にモノ扱いを脱却する方法でもある。
男性からモノ扱いされてしまうというあなた。女性向けコンテンツの中でモテている女性のマネはやめた方がいい。現実ではモテない。穴モテはモテではない。

尊敬とは奪い取るものではなく、与えられるものでもなく、自らそれに値する価値を示して得るものなのだ。

性愛の対象としてのモテは長続きしない上に、モノ扱いを招く。真のモテではない。
尊敬される女性こそモテる女性だと言える。 
この道の先にこそ差別をなくす未来があると私は思う。

未視聴の方は視聴をお勧めする。

ちなみに、アニメのエンディングテーマがとても良い。是非ともフルバージョンを聴いてほしい。

参考

ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん
原作著者 恵ノ島すず
アニメーション制作 手塚プロダクション

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