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糖尿病専門医試験受験のススメ⑤

どーも、みなさん、えとえんです。

さてさて、ここからは二次審査対策に実際行ったことを時系列で纏めつつ、試験本番の実況中継についてつらつらと書いていきます。

一般的に試験対策までに必要な時間は3ヶ月程度と言われています。実際、7月中旬から本格的に勉強を開始して間に合ったので、概ねこれくらいの勉強時間があれば問題ないと考えます。

ネット上では3週間で合格した人とかおられるようですが、そこまで攻めたスケジュールは怖くてできませんでした。あくまで一般的な能力の持ち主ではどうだったのか、という観点で参考にしていただければ幸いです。

7月:世界一の塗り絵師、俺はなる!

勉強を開始したのは7月12日からでした。
なんでそんな細かい日程まで覚えているかって?
それは前日までTOEICの勉強をしていたからですよ。

試験対策はほぼゼロからのスタートでした。
何から手をつけたらいいのかわからず……ということはなく、我らがバイブルの「糖尿病専門医研修ガイドブック 改訂第8版」をまずは一周しよう!と読み始めました。

お持ちの方ならわかると思うんですが、この本、結構読みにくいんですよね。統計・基礎・臨床・倫理のすべてがこれ一冊にまとまっていて便利なのですが、頭から読み始めようとすると統計と基礎の高い壁に阻まれて挫折しがちです。しかも、臨床も総論と各論が入り乱れていて、どこに何が書いてあるか把握が困難。しかも基本的に同じフォントで単調なので、読んでるうちにどんどんと眠くなっていく

最初はガリガリ読んでくぞー!と意気込んでいましたが、読んでは寝て読んでは寝てを繰り返しているうちに、目で追っかけるだけでは頭に1mmも入らぬ!ということに気づき、マーカーで塗りたくるという古典的な勉強法にたどり着きました。

マーカーも初期は黄色マーカー単色だったのですが、重要そうなところに線を引くと、大抵のところを塗る羽目になり、1ページまるまる真っ黄色に
これではなんの意味もないだろう、ということで、多色マーカーに作成を変更しました。

多色マーカーでの塗り分け勉強法は割とポピュラーで、皆さんもすでに活用されていると思いますが、念の為簡単に説明します。
使用するマーカーは「黄・緑・オレンジ・ピンク・青」の5つです。
黄:最重要事項
緑:重要事項
オレンジ:対比構造の1つ目
ピンク:対比構造の2つ目
青:基礎的な分野
というように塗り分けていました。

最重要事項や重要事項の選定は、完全に独断と偏見です。最重要事項は「試験に出しやすそうな部分はここかな?」と予想して塗り分けていました。
重要事項は「ここ大事だよね」とか「これは知らんかったな」というところを塗っていましたが、分野によっては全部ページが緑になってしまったり……今後勉強する方は過去問に一度目を通してから塗り分けるとよりスムーズかもしれません。
オレンジとピンクは比較される内容がある場合に活用しました。場合によっては3つに分けて記載されていることもあったので、その場合は青を追加しました。
基礎的な部分で「これは出ても文句は言えん、でもみんなわからんやろ」というところを備忘録として青でマーキングしました。

このように塗り分けると、時間はかかりますが、塗り分けに頭を使うので、記憶の定着率という観点から考えると、ただ眺めるよりは効率的であったと思います。実質は塗り絵をしていたようなもんです。時折、考えるのが嫌で全部同じ色に塗ったりもしていましたが。

8月:一瞬TOEICに浮気する

8月に入り、本格的な塗り絵師となりました。読んでは塗り、読んでは塗り……。黄と緑のマーカーは3本くらい使いましたね。

ガイドブックが8割ほど読み終わったところで、何を血迷ったか、TOEIC対策を再開しました。昔からそうだったのですが、同じ勉強をずっと続けるのができない人間なんです。息抜きも大事だよね、ということで、8月20日から9月12日までは専門医試験からの逃避行を楽しんでいました。

ちなみに、この期間の勉強でTOEICのスコアは745→845に上昇。意外と上がって笑けました。

9月:本格的にやばいと思い始める

9月15日から専門医試験の勉強を再開し、17日にはガイドブックを読み終えました。あと1ヶ月は流石にやばいと思い始め、本気で取り掛かることに。まずは過去問をかき集め、問題の傾向を把握しました。とはいえ、前回も記載したように、あまり過去問が活用できず、特に論述は毎年様変わりしており、ヤマを張るのは困難です。最近のトピックから出ていることはわかりますが、特集や委員会報告とは無関係な内容もあり、窮地に陥りました。

なにか打開策はないかと思案したところ、糖尿病総会のシンポジウムがオンデマンドで聴けることに気づき、20個ほど聴くことにしました。1個あたり3−4時間であり、全て聴くことはできませんでしたが、最新の話題を確認するという点で非常に役に立ちました。ちなみに、「これは流石に出ないでしょ」と思って聴かなかった「地域における糖尿病療養指導の取り組み」が、思いっきり試験に出題されたので、これから勉強される皆様に置かれましてはすべて出る可能性があると考えて拝聴されることをオススメします。

シンポジウムをある程度見終えたところで、雑誌「糖尿病」の特集や委員会報告を読み始めました。過去3年分程度が出題範囲とされていたので、学会ホームページからダウンロードし、またもや塗り絵を開始しました。ちょうどその頃出たiPad mini 6が大活躍。

コンセンサスステートメントや学会ホームページに乗っている指針などにも目を通し、いつの間にか10月になっていました。

10月:胃の痛みに耐えた23日間

9月から10月に変わる日の当直で、夕飯に付け合せのポテトを食べていたんです。そしたら突然、喉に詰まった感じがあり、「逆流性食道炎にでもなったかな」なんて思っていました。

PPIや漢方など、色々試しましたが、一向に良くならず、試験当日はほとんど食事が喉を通らなかったほどです。試験後にはウソみたいに良くなって、ストレス性の胃炎だったんだろうなと今考えるとわかります。

さて、そんな感じで、ここから激しいストレスに見舞われました。原因はわかってます。論述試験です。

とりあえず、ガイドブックから予想問題を作り、書き出す作業を開始しました。書き出す際に、黄色に塗り分けたところを重点的に抜き出したので、効率よく進むことができました。最終的には130問ほどになり、結構な分量となりました。

200文字の文章をそのまま覚えることはできないので、重要単語や数字をオレンジ色に変換し、赤シートを乗せるアプリを使って、まずは単語や数字を覚えることから始めました。最初は半信半疑だったのですが、単語を覚えるとなんとなく全体も思い出すことができ、非常に役に立ちました。

とはいえ、まっさらな紙の上に書くとなると話が変わります。うろ覚えで行けるほど甘くはありません。そのため、初心に帰って、全部手書きで複写をしました。デジタル化が進んだ昨今でも、アウトプットはやはり紙とペンに限ります。米に般若心経を書くような細かい文字で一心不乱に記している姿を見て、上司に「それはやり過ぎでは……」とドン引きされました。

10月14日には論述対策も一通り終わり、選択対策に移行。とはいえ、論述対策のためにガイドブックは2周しているので、対策としては細かい数字や表を覚えるといったことくらいでした。

10月20日から、過去問の見直し。このあたりから胃痛が激しく、食後はのたうち回るようでした。集中するためのコーヒーがここまで辛いものとは。過去問は、おおよその方向性を確認して終了としました。

10月22日はもう胃痛が強くて動けなかったので、ちらっと確認して終了でした。この日は16時間くらい寝てましたね。

10月23日に、前泊のため横浜へ。普段であれば前日はホテルのバーで一杯飲むと決めているのですが、胃痛のため断念。食事もまともに取れず、ルームサービスのクラブサンドをなんとか胃に押し込みました。

もう今日は何をやっても頭に残らん!早く寝よう!と20時にはベッドに潜り込みました。が、部屋は20階であるにも関わらず、信号機の「ポーン……」という音が届く残念な環境で、22時頃に鳴り止むまでは寝付くことができなかったです。今でもあの音を聞くと辛かった思い出が蘇ります。

10月24日:試験当日

せっかくですので、実況中継風に記載したいと思います。こんなメンタル状態だったんだなと感じていただければ何よりです。

なんだかんだで無事朝を迎えることができました。今回の試験会場はみんな大好きパシフィコ横浜。

ホテルからタクシーに乗り込み、試験開始30分前には会場入り。

近くのコンビニで勝負メシのおにぎり2つとオレンジジュースを購入、するも胃痛で食べることができず、おにぎり1つで断念。

試験会場に入ると緊張が高まる。試験の説明がアナウンスされるが、あまり頭に入ってこない。

論述試験が開始。深呼吸をしてページをめくる。まずは全体像を確認しよう。

1問目、神経障害の話か。これは書けるぞ。

2問目、SGLT2阻害薬の腎保護作用について……だと……。そんなの教科書はおろか、論文にだってコンセンサスを得た解答ないじゃねぇかよ。

3問目、妊娠糖尿病ね。これはラッキー問題だな。

4問目、おいおいおいおい、地域糖尿病療養指導士なんて何も知らんぞ。どうすんだこれ。

このあたりで「もう一回遊べるドン」と声がした気がする。

落ち着け、落ち着け自分、とりあえず、できるやつから書いていくんだ。

神経障害と妊娠糖尿病について記載。残り30分。

腎保護作用……確か製薬会社のMRさんに質問したときに、過剰濾過抑制と糸球体内圧の低下とか、マクラデンサとか言ってたな!とりあえずそれ、書いてみよう!

とりあえず8割は埋められたぞ。あと15分で療養指導士について書かねば。そういえば、うちの病院の看護師さんは地域糖尿病療養指導士だったな…地域ごとに決まってるとかなんとか、だった気がする。あとはダメ元で書くしかないか。

試験終了。各記述は8−9割。

会場全体に「ざわ・・・ざわ・・・」と暗雲立ち込める。
誰も「これ簡単だったわー!」などとほざかない。
今回、相当やばいんじゃあないか、これ。

ほどなくして選択試験が始まる。

論述試験に気圧されて、もはや平常心は失っていた。

問題文は頭に入ってこないが、脊髄反射で問題を解く。

初見の問題や、ややひねった問題があるものの、論述問題で感じた絶望と比べたら可愛いものである。

10分ほど時間を残して終了、マークミスがないか見直し。手応えとしては8割程度。

ここでお昼休憩に。同期と話をして、誰もが論述問題で躓いていることを共有する。

メンタルブレイクしているため、精神を整えるために近くのスタバに。

コーヒーを飲みつつ、口頭試験の順番を待つ。

15分ほど前に、試験会場前で待つ。窓から見えた空がバカみたいに突き抜けた青空で、今のこのモヤモヤした気持ちと交換してくれないかなぁ、なんて。

口頭試験は、労働衛生コンサルタント試験に比べたら非常にリラックスして受験することができた。サマーキャンプや市民公開講座を経験していないことによる減点はありそうだが、概ね8割弱の出来だろう。

会場の外にでると同期が死んだ顔をしている。なにやら「さかえ」の編集者にあたって、感想を聞かれたようだ。それはお辛かったですね、などと傾聴しながら、帰路へとついた。

結果!

ほんと、試験中はメンタルがジェットコースターしてました。というかすべて論述が悪い。しかも帰宅後に論述試験でケアレスミスが5個くらい発見して、もうひどく落ち込みましたよ。

とはいえ、こんな状況でも無事合格できました。
各点数は、論述:7割弱、選択:8割強、口頭:8割弱でした。
選択試験と口頭試験はほぼ手応え通りでしたね。論述も概ね7割かけたかな、という感覚と合致していたので、採点は妥当と感じます。

ただ、もう一回受けても合格できるかと言われると、怪しいところ。論述の運ゲー度合いがひどいです。ここ数年、ガイドブックと特集、委員会報告を読み込めばオッケー、という風潮がありましたが、今年は見事にそれをぶち壊して来ましたね

糖尿病学会からのメッセージとしては、基礎も臨床もしっかり経験してこいや、ということなんでしょうね。特に論述はいわゆる教科書にはどこにも載ってない内容だったので……。

さてさて、だいぶ長くなりました。ここまでお読みいただき誠にありがとうございました。

糖尿病専門医試験を受けよう、と思ったときに、あまり体験談的なものが見つからず、これでいいのか?と思うことがあったので、自分の体験を纏めてみました。たかが民間資格の専門医は、若手からしたらオワコンと言われるかもしれません。受験しようか迷う人もいるやもしれません。そんなあなたに、私が教授から頂いた言葉を贈ります。

糖尿病専門医は、何をするにしても、力になる資格です。

このnoteが、糖尿病専門医試験を受験する皆様の一助になれば幸いです。
試験勉強は辛いとは思いますが、ぜひとも頑張ってください

それでは、このへんで。

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