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WoodSpiritsコラム|「木の酒」は、なぜこれまで作られてこなかったのか?

こんにちは。WoodSpiritsプロジェクトマネージャーの辰巳です。
2025年冬に予定している「WoodSpirits/木の酒」の試験販売開始に向けて、「WoodSpirits」、「木の酒」のコラムにて紹介をしています。

“お酒づくりの起源”は、メソポタミア文明に?

突然ですが、“お酒づくりの起源”をご存知でしょうか?

これには諸説ありまして、ある論文では13,000前にはお酒が作られていたと記載されたり、8,000年前のお酒の容器の発見こそが起源だと主張される研究者がいたり、はたまたメソポタミア文明時の楔形文字を物証とする説があったり、、、と、現在でも議論され続けている問題なのですが、「メソポタミア文明が発展した紀元前3000~4000年前にはビールやワインの原型が存在した」ことが“お酒の起源”と言われることが多いです。

写真:ビールの起源を示したとされる「モニュマン・ブルー」
© Trustees of the British Museum

急に歴史の授業でも始まったのかと思われるかもしれませんが、もう少しお付き合い願えたらと思います。

それから人類は、様々な果実や穀物からお酒を作り出したり、お酒づくりと蒸留技術を掛け合わせて蒸留酒を誕生させたりと、数多くのお酒を生み出してきました。ただ、その原料は果実や穀物原料ばかりでした。(例外で樹液や乳製品を原料とするお酒もあります。)

そんな中、2018年に人類は、お酒造りにおいて新たな原料を手に入れました。
そう、それが木を原料とした「木の酒」です。

木の酒がこれまで作られなかった理由と、近代の工業技術

しかしながら、木は人類が誕生する前から世界中に存在してきたにも関わらず、なぜ人類は約5000年もの間、木を原料とするお酒を作ることができなかったのでしょうか?

ということで、いよいよ本題、第3回は「木の酒」は、なぜこれまで作られてこなかったのか?についてです。

この理由を説明するにはまず、木の構造からお話ししないといけませんが、それだけでもう1本記事が書けてしまうので、木の構造については、こちらのサイトをご覧ください!

秀建設株式会社HPブログより引用
https://hidekensetsu.com/gallery/Blog/Vol.3.php

簡単に言うと、木はリグニン、ヘミセルロース、セルロースが主成分であり、それらが複雑に干渉し合うことで、とてつもなく強固な構造になっています。

この内、「木の酒」で使いたい成分は「セルロース」です※1 が、外側をリグニンが覆ってしまっているため、なんとかしてセルロースを剥き出しにさせなければなりません。
剥き出しにする方法の一つとして、細かく木材を粉砕することのできる「湿式ミリング処理」※2 が開発されたことにより「木の酒」の製造ができるようになりました。

※1:なぜセルロースがお酒の源になるのかは別記事で解説します!
※2:湿式ミリング処理についてはこちらをご覧ください。

こんなこと、メソポタミア文明ではできないですよね。(笑)

このように、木を原料とする「木の酒」の誕生には、木の構造を細かく見る「ミクロ観察の技術」や、木の酒の源となる「セルロース」を剥き出しにするための「粉砕技術のナノテク」、さらにはセルロースをアルコール発酵する技術など、近年の高度な技術開発があってこそ成し遂げられたものであり、まさに令和を生きる我々だけが味わうことを許されたお酒と言えますね!


辰巳和也 / Kazuya Tatsumi|WoodSpirits プロジェクトマネージャー
1997年生まれ、大阪府出身。大阪大学大学院の博士前期課程を修了。同時期にウイスキー文化研究所のウイスキープロフェッショナル資格を修了していたことから、ファーストキャリアとして、ビール・ウイスキーの設備メーカーである三宅製作所に就職。同社では設計課として、ウイスキー新規工場の設備設計・立ち上げから既存酒造メーカーの設備アップグレードなどの業務を担当。その後、2022年4月にエシカル・スピリッツに入社し、新工場立ち上げ、サブスクリプションサービスおよびそれに特化したブランド「ENIGMA」の改修、「WoodSpirits」プロジェクトマネージャーなどを担当。


WoodSpirtis公式ブランドページ:https://woodspirits.ethicalspirits.jp/
WoodSpirtis公式Instagram:https://www.instagram.com/woodspirits_jp/


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