クィア人類学についてのメモ

去年Cultural AnthropologyでQueer Anthropologyの特集がされたが、その中のMargot Wiess(SM実践の民族誌を出している)が分析視角としての「クィア」(クィア・スタディーズ)の可能性と、人類学が持つ可能性とを架橋するような議論を展開していた。これはインドネシアのゲイについて書いたTom Boellstorffが2007年の著作で人類学とクィア・スタディーズとの"coincidence"を指摘した流れを汲んでいる。従来の非異性愛者についての人類学が「ゲイ、レズビアンを人類学的に調査・研究する」という域にとどまりがちで、Kath Westonが1993年のレビューで指摘したように、非異性愛の事例を世界各地から収集する"ethnocartography"にとどまっていたのに対し、クィア人類学はむしろクィア・スタディーズと人類学が既に出会っていたその一致点を探して、両分野の理論的対話、融合の可能な点を模索するところから出発しようとしているように見える。となるとでかいのがクィア系でむしろ有名な人類学者Gayle Rubinの論文(1984年の"Thinking Sex")で、人類学(もしくは社会科学)で「クィア」をどう使うか考える上での一つの参照点だろう。

Boellstorff, Tom. 2007. Coincidence of Desire: Anthropology, Queer Studies, Indonesia. Durham, N. C.: Duke University Press.

Rubin, Gayle, 1993(1984), “Thinking Sex: Notes for a Radical Theory of the Politics of Sexuality”, In The Lesbian and Gay Studies Reader, edited by H. Abelove, M. A. Barale, & D. M. Halperin, 3-44, New York: Routledge.

Weiss, Margot. 2016. Always After: Desiring Queerness, Desiring Anthropology. Cultural Anthropology, 31(4):627-638.

Weston, Kath. 1993. Lesbian/Gay Studies in the House of Anthropology. Annual Review of Anthropology, 22: 339-367.

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