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家族の風景

妹が結婚する。
わたしは3姉妹の長子で、中間子である妹が結婚し、近々式を挙げる。
未子の妹はすでに結婚し、可愛い子どももいるが、式は挙げていないので、家族で参列するのは初めての行事になる。

家族と情緒的に交流することが苦手で、そういう場面を避け続けていた。
犬が死んだときも、じいちゃんが死んだときも、悲しみの分かち合い方がわからず、ひとりで泣いて、悲しんで処理してきた。
今回、これは家族でエモくならざるを得ないイベントになるなと思うほど、なんだか自分のこころがロックされたようになり、妹との関係や思い出を思い出すことができないまま当日を迎えることは、彼女にも失礼だし、自分も人生を損している気分になるので、なんとか暗証番号を見つけて、ロックを解除し、やわらかいこころで当日を迎えたい。

ということで、いろいろと思い返してみる。
妹は一言で言うと、しっかりしすぎている。いわゆる中間子の特徴と言われている世渡り上手というやつだ。母に怒られているわたしをみて、陰でしめしめと笑い、自分はそうならないようにしっかり行動を改める達人である。
けんかも何度もしたはずだ。お調子者で言うことを聞かない妹を正そうとするほど、妹は逆上し、さらには殴りかかってきていた。
でもなんやかや言いながらも、一緒にゲームをしたり、テレビをみたり、たくさん笑い合って、あほなこともたくさんした。
年頃になると、お互い全く違うものを好きになった。例えば音楽も、わたしは少しマイナーな自分が好きだったら流行もなにも関係ない、というか、流行になんかのらないぞくらいのパンク精神だったわたしとは反対に、妹はAqua Timezや、ORANGE RANGEを聴いていた。他にも当時身なりに無頓着だったわたしに比べて、妹はギャルのようになっていった。というかギャルだった。
大人になってから、親との付き合い方など、妹から教わることの方が増えた。わたしは心配性でいろいろとすぐに親に相談する。すると、親はああせいこうせいとがやがや言い始め、最終的にわたしは疲れて言わなければよかったと思うことが多々あったが、彼女はそうなることすらも見越していて、「前もって言うからそうなるんやん」と一喝した。そんな彼女はだいたいが事後報告だった。ある日突然、繁華街で一人暮らしをすると家を決めてきたときは衝撃だったが、すげえなあと感心したことを覚えている。
妹はあまりお勉強ができないが、頭の回転が速く、きっと人より仕事ができるタイプの人間だ。そこでの話を漫談のようにおもしろおかしく話せるところも、本当に感心している。
恋愛の話はお互いほとんどしなかった。母経由で、妹の恋愛事情を聞いていたが、どうやらいい車に乗っている男を甘やかしてしまう傾向があるらしい。わたしたちは妹の彼氏をその車種名で呼んでいた。たとえば、「AUDIくん」とか「レクサスくん」とか、といった具合である。今回結婚するお相手は、「アルファードくん」である。若くしてそんないい車に乗っている男性を好んで見つけてくるあたり、やっぱりわたしとは違っていた。

友だちのようでいて、他人のように遠い、
愛しい距離が、そこにはいつもあるよ
とハナレグミが唄っているのがしっくりとくる。

妹が幸せで笑ってくれているだけで、わたしも幸せだ。
ただもし、彼女が悲しむようなことや困ったことがわかれば、じっとしていられないだろう。強気で、大きくなってからは泣き言を言っているところを一切みたことがないが、わたしを頼ってくれるかな。いざというときは頼ってほしい、は一番伝えたいメッセージかもしれない。

でも、わたしたちは今までどおり、楽しいをたくさん共有できればいい。悲しいは自分たちでそれぞれなんとかしてきた同志だから、これからもそれでいいのかもしれない。それがわたしと妹の距離感なのかもしれない。

暗唱番号を思い出した。