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英国の新たな司法試験制度について

最近英国の司法試験制度が大幅に変更されたとのこと、変更前の制度で試験を受けた人の話を聞く機会もあり、また、自分自身日本のロースクールに所属しているということもあって、英国の新たな司法試験制度について、少し簡単にまとめてみようと思います(情報の正確性を担保できない部分もあるかもしれないので、あくまで参考程度に読んでいただければと思います)。

その前に、軽く日本とアメリカの司法試験制度についても、私の知りうる範囲で簡単にまとめておきます。


1.日本の場合

日本の場合はロースクール制度ができてから、司法試験は誰でも受けられる試験ではなくなり、現在は主に以下の2つのルートを経た人のみが司法試験の受験資格を得られることとなります。

  • 予備試験という試験を合格した後に司法試験を受験する。予備試験についての受験資格は特になし

  • 日本のロースクールを卒業後、司法試験受験資格を得て司法試験を受験する。なお、今年度から、一定要件を満たしたロースクール在学中の学生(ロースクール3年次所属の学生)も受験可能となる

予備試験は受験資格が特にないということから、司法試験を目指される様々な属性の人が挑戦する試験となっており(当然ロースクール生にも受験資格があるので、今ではロースクール在学中に予備試験を受けることが一つのスタンダードとなっているようです)、その分かなり合格率は低くなっています。
一方、ロースクールの場合学費の問題や、司法試験受験資格を得るまでに年数がかかるということで、やむなくロースクール進学をあきらめるというケースもあるようです。もっとも、今年度から在学中受験制度が始まり、また、いわゆる飛び級制度(法学部3年修了後、ロースクールの試験合格を得て、ロースクールの既習1年に入学できる制度)もあるので、ロースクール経由でも司法試験受験資格を得るまでの時間短縮はある程度できるようにはなってきているようです(もちろんすべての要件を順にクリアしていかなければいけないので、当然労力はかかってきます)。

2.アメリカの場合

アメリカの場合は、原則3年間のロースクールでの学習を経たあと、各州のBar exam(司法試験)を受けたのち、弁護士資格が得られるというスキームになっており、Bar examの合格率は州にもよりますが、日本の相対評価試験と比べると高く、日本との大きな違いは、司法試験に受かるか否かで弁護士になれるかどうかが決まるというよりも、ロースクールに進学し卒業できるかどうか、すなわちコスト面等の問題が大きいようです。

なお、日本人が現地の正規ルート以外でアメリカのBar examの受験資格を得るためには、今では日本のロースクールを卒業した後、現地で1年間のLLMコースを修了することで、NY州やCA州のBar examの受験資格を得られることとなります。日本のロースクール卒業が受験資格となったことで、弁理士や法務部員といった、必ずしも日本の法曹資格を有していない(そして日本のロースクールを卒業していない)人たちが、NY州やCA州のBar examを受けることのハードルが、以前よりも高くなっているようです。

3.英国の場合

さて、本題に入りますが、英国の場合は、2021年の新制度が始まるまでは、原則法学部かそれと同等のコースを卒業後、トレイニー期間等を経て弁護士になるか、外国ですでに法曹資格を有している人は、Qualified Lawyers Transfer Scheme (QLTS)という試験を経て、英国の法曹資格を得るというルートになっていました。
それが2021年度の新制度スタートにより、Solicitors Qualifying Examination (SQE) routeを得ることで法曹資格を得るというスキームに大幅に変更されています。なお、英国の弁護士はSolicitorとBarristerという2種類に分かれていますが、ここでは主にSolicitorをベースに説明をしていきます。

Solicitors Qualifying Examination (SQE) routeとは

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