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15年に渡る春が去った。

4月30日の朝、犬のハルが死んだ。15歳と11ヶ月だった。

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ハルが我が家に来たのは2005年の9月、僕の中学校の入学祝いだった。デパートのペットショップでじーっとこちらを見つめてくるミニチュアシュナウザーに家族全員が一目惚れしてしまった。

5月生まれなことや、父親の好きな映画『2001年宇宙の旅』に登場する人工知能の名にちなんで「ハル」と名付けた。

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顔を舐めるのが好きで、ハルの目の前で寝転がると顔がべとべとになるまで舐められた。

他の犬にもあまり物怖じしない性格で、散歩中はすぐにお尻を嗅ぎにいくが、大型犬が嗅ぎ返してくると、すぐに逃げるビビリな部分もあった。

ビビリと言えば大きな音も苦手だった。雷や花火がなる音がするとブルブル震えてゲージの中で小さく固まっていた。

高校時代の僕は半分帰宅部のようなものだったので、そうそうに帰宅してはハルとソファに一緒に座って『やまとなでしこ』の再放送を観たりしていた。

3.11のときも2人で一緒に家にいた。一緒にリビングの机の下に避難して、揺れが収まるのを待った。自分よりもハルが怖がっているものだから、なだめるのに精一杯で、自分自身の恐怖はどこかにいってしまった。

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ハルの転機は5歳の時。

脊髄梗塞で下半身不随になってしまった。

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トイレを自力でできなくなってしまったので、1日5回下半身をギュッと持ってウンチやおしっこをさせるのが家族の仕事となった。

母のリハビリの甲斐もあってか体を支える程度には下半身が機能するようになって、リードでうまく補助すれば散歩もなんなくいけるようになった。調子がよければ自力でも歩けた。

家の中は自由に歩き回った。鰹節が大好きで、母が味噌汁をいれるために出汁をとろうとすると、すぐにキッチンに向かった。毎朝散歩につれていきご飯をくれる父のことが一番好きだったので、帰宅すると玄関まで出迎えにいった。

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トイレや散歩に多少の不便はあれど楽しく過ごしてきたのだけど、ここ1年くらいでぐっと老化が進んできた。

まっすぐ前に進むことができず、かならず左に蛇行してしまうようになった。耳が遠くなり「ハル」と呼んでもなかなか気づいてもらえないことが増えた。

餌を全く食べなくなり、もうだめかなと思う時もあった。が、高級な餌に切り替えたところ食欲が復活した。がめつい奴だ。

「もうそろそろかな」なんて言いながらも、結構しぶとく生きるんじゃないかなと思っていた矢先、父からハルの死を告げるLINEが届いた。

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手間のかかる子だったし、死の予感がしてからも猶予は十分にあったから、後悔は一切ない。

でも、やっぱり今は寂しい。

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