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マレーシアではテロは起きない?

 パキスタンのカラチ市で4月19日、日本人5人が乗せた車が襲撃され、日本人がけがをする事件がありました。同国当局はテロと断定して犯人の行方を追っています。海外にいる日本人がテロに巻き込まれる事件はこれまで多数発生しています。さて、マレーシアでこれまでテロは大規模な発生していませんが、テロが起きる可能性はあるのでしょうか。


■ジャカルタでの経験

 僕は新卒でインドネシアのジャカルタで仕事をはじめて5年ほどいましたが、そこはテロの嵐でした。

 僕が移ったのは1998年の夏。その年の5月に32年間の独裁政権のスハルト政権が倒れて、まだそのカオスが続いている状態でした。

 政権を握ったハビビ大統領はスハルトの傀儡とみられ、国中いたるところで暴徒が暴れ、爆弾が飛び、何人も人が死にました。

 僕はジャカルタの比較的治安のいい地区に住んでいましたが、ある日、近くで手榴弾が爆発する事件がありました。そして、事務所近くの証券取引所、オーストラリア大使館なども次々と爆破され、さらに僕が住んでいた裏のJBマリオットホテルの玄関が吹っ飛ぶ事件も。とにかくあちこちで爆弾が吹っ飛び、毎日がサバイバルでした。

 そして、2001年にバリ島で日本人を含む202人が爆弾の爆発に巻き込まれた大惨事も発生。あの事件はちょうど土曜日の夜でしたが、僕はその一週間前にちょうど同じところにいたので、あと一週間ずれていたらやらていたところでした。この事件はインドネシアを離れようと決意した事件でした。

 こんなことがあったので、治安に関して僕は特に敏感になっています。マレーシアの隣のタイにもしばらく住みましたが、そこも伊勢丹が焼かれたり、爆弾が飛んできたりということもありました。昔、旅行でシーロム地区に行った時はホテル近くの建物に爆弾があたって一人が死亡する事件にも遭遇。タイは平和なイメージがありますが、現在でもかなり不安定な状態だと僕は感じています。

■マレーシアでのテロは?

 それでは、マレーシアはどうなのでしょうか。
 
 マレーシアはこれまで大規模なテロ事件が発生していません。ただ、2016年にプチョン地区のバーに手榴弾が投げられ、外国人20人がけがをする事件がありました。この事件は今では忘れられていますが、ほとんど唯一といっていいテロ事件だったとみられます。

 サバ州東海岸沿いでは外国人を含む人を誘拐し、人質を打ち首にする事件はこれまでに何回か発生しています。これもテロの一つとみなしていいでしょう。フィリピン南部のアブ・サヤフという武装組織の犯行なのですが、あの辺りには行かなければほとんど事件に巻き込まれることはありません。爆弾をそこで使うことはないようです。ちなみに、日本の外務省は渡航中止勧告をこの地域一帯に出しています。また、クランタン州とのタイ国境沿いでも爆破事件は時折発生しますが、それはタイ側であってマレーシア側では一切発生していません。

 マレーシア国内には一時期、武装勢力の「イスラーム国(IS)」を支持する人が結構いました。マレー人が中心で、これまでに支持者多数が逮捕されています。ISの黒い旗を携帯電話に入れているだけでも逮捕対象となっており、当局はこれについては厳しく取り締まっているのです。ただ、この人たちがマレーシア国内でテロ行為をするわけではなく、送金や人の派遣といったことに関わっていることが多い。

■テロではなく?

 上記から考えるとテロがマレーシアでは発生しにくいのではないかと思うのです。それはなぜでしょう。

 「マレーシアはテロリストの中継地点」と以前聞いたことがあるのですが、確かにこれまでテロリストとよばれる人はなぜか必ずマレーシアに入国して別の国に行っています。マレーシアに何かがあるのでしょう。

 そのため、テロリストが多い中でテロなんか起こしにくいという面があるのかもしれません。それと、やはり最大の理由は治安当局が厳しく見張っているというのがあると思います。

 マレーシアには現在、さまざまなところに防犯カメラが設置されていますが、警察当局はどうも顔認証システムを導入して、厳しく監視を続けているようです。

 強盗や窃盗事件が発生するとすぐに容疑者が逮捕されるのはそのため。4月14日にクアラルンプール国際空港の到着ロビーで奥さんを殺すため銃撃事件を起こしましたが、この犯人は数日後にクランタン州コタバルのクランタン州警察本部の前で捕まっています。タイに逃げようとしたらしいのですが、路上にいるところを逮捕しており、やはり何かしらの顔認証システムを使って追跡していたのかと推測します。

 マレーシアの治安がいいのは、やはり治安当局がしっかりと仕事をしている結果なのだとポジティブに考えていますが、それでもテロが今後ないとは限りません。イスラーム系の武装勢力がテロをマレーシア国内で起こさないという保証はありませんが、それでも限りなく低い気がします。ただ、暗殺事件は今後発生する可能性があると思います。

 先日、イスラエル人が逮捕されました。なんでも拳銃や実弾を大量に所持した容疑で捕まり、裏切った家族の一人を殺すためと自供しているようです。警察当局はそれは信じておらず、要人暗殺を企んでいたのではないかとみています。トルコ人やジョージア人ら10人以上も逮捕されており、何か企んでいたことは確かで、家族を殺すためにそんな大掛かりにやるでしょうか。

 現在、イスラエルとパレスチナの紛争は激化していますが、この流れでイスラエルが何かをしようとしたとも思われます。もしかすると今後も同様の事件が発生しないとも限りません。最も恐ろしいのは要人などが暗殺されること。一般庶民にはあまり関係ないとみられますが、それでもそれに巻き込まれる可能性はあるかもしれません。

 マレーシアは平和ですが、いずれにしても油断は禁物。治安情報についてはいつも敏感に情報収集をしておいたほうがいいでしょう。日本も今は物騒な事件が多く、油断はできませんが、自分の命を守るためには自分でどうにかしなければなりません。そこは人に委ねるのではなく、しっかりとご自身で判断して行動するようにしてください。

 


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