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アジアの駐在員は何を求めているのか。

 あまりこの話はしたくないのですが、やはりちょっと言いたい。海外(特にアジア)に来る日本人駐在員はそこで何を求めているのかを考えます。

 日本の外務省が毎年調査している「海外邦人数調査」というのがあります。2021年10月現在のが最新版ですが、これによると日本人の全世界の海外滞在者数は134万4900人。前年より若干減っていますが、これは新型コロナの影響です。このうちアジアに住む人は約39万6000人で、全体の29.4%を占めます。

 2019年の全世界の邦人数はこれまでの調査で最多の141万356人を記録しました。新型コロナがなければ、2020年から2021年にかけてさらに増えていた可能性があります。ただ、これらは大使館で登録し、調査に参加した人のみで、実際はこれよりはるかに上回るでしょう。

 この調査の人数のなかでどのくらいの人が自発的に海外に出たのかどうかはわかりません。推測でしかないのですが、おそらく駐在員とその家族が多いのかもしれません。駐在員は確かに会社の指示で出てきて、半ば強制的に海外に来ているわけで、いきたくなくても行かざるを得ないという人もいるでしょう。ただ、もちろん全員ではないですが、一部の海外駐在員には首をかしげる人も少なくありません。

 マレーシアにも多くの日本人が住んでいます。これまで会った日本人で、ご飯は朝昼晩、和食でないと駄目、ローカル食は一切食べられない、日本製品がないと生活ができない、ローカルとも日本語での意思疎通を求める人などがいました。特に日本の地方出身の男性に多く見受けられる現象ですが、果たして海外でこういった生活でいいのでしょうか。僕にとってはなんとも不思議でしょうがないのです。
 
 和食は僕もたまには食べたくなりますが、毎日2~3食も外食していたら、莫大な出費になります。下手すると日本より高い金額を出すことになります。まあ、駐在員はある程度お金をもらっているのでしょうから、その辺は気にしないのかもしれません。僕の場合はお金というより、ローカルが何を食べて考えているのかというほうが興味があるので、そういった観点からローカルと同じような目線になって生活しています。そうすることで、日本では発見できないいろいろな視点が見えてくるのです。これは海外に住むうえでの醍醐味ではないでしょうか。

 しかし、海外にいながら日本と同じ生活を求めていては、それほど多くのことを得ることがないのでは? ローカルとやり取りすることを拒否する日本人もいたり、ひたすら日本と同じ生活を求める人々。こういった人々は、自分の成長をも妨げていると思います。

 欧米に赴任する人はおそらくそれ相応に満足して生活しているのかと思います。日本人は昔から欧米に憧れているため、そこで生活できることは誠にハッピーでしょう。

 しかし、アジアに生活する日本人はどうもどこかそれとは次元が違う。なんだか心の中でローカルを馬鹿にしているのが透けてみえる人も多い。会社の命令で来て、ローカルを馬鹿にしてふんぞりかえっている人。どこか「自分は偉い」とも思っているのかもしれません。こういう人に限ってまともに語学もできない。そして、「あいつらはこうだから」という上から目線の一方的な考えを持っている人も多いのです。

 いやはや海外赴任してローカルを馬鹿にするのであれば、海外に出てこず、日本でじっとしていればいいのではと思います。その日本人にとっても接するローカルにとっても不幸なことなのです。

 人生いろいろだからそりゃ行きたくないところに赴任せざるを得ないこともあるでしょう。けれど、「来たくなかった」という思いは言わなくても態度でローカルにはわかってしまうもの。だったら、赴任させられた会社を辞めて日本で自分の道を歩めばいいのに、その勇気もない。まあ、嫌でもやらなければいけないのは会社員の宿命ですが、そういう態度になってしまうと本人や周りだけでなく、ローカルはそういう人を通して日本人全体をそう見てもしまうのです。その影響のほうが実は大きい。

 日本でも外国人が多くなってきています。特に都市には一定の外国人がおり、居酒屋やレストランでは下手すると日本語を話さずともコミュニケーションが取れてしまうこともあります。日本社会はもはや外国人(特にアジア人)なしにはやっていけないのです。ならば彼らの考え方を理解していくことで、社会がスムーズに行くのでは? その前哨戦がある意味で海外赴任かもしれません。

  自発的に海外に来た人はこういったことはありません。ローカルをばかにすることなぞ露にも考えないでしょう。そもそもそんなことをしていたら、生活自体が成り立ちません。といっても、日本で行き場がなくなって、「仕方なく自発的に」アジアに来てしまった日本人もいますが、なかにはローカルを馬鹿にする人もいます。こんな中途半端な人たちは海外で成功できるわけがありません。

 月並な言い方ですが、多様な文化にふれると人間的にも豊かになってきます。たとえ、嫌な国に駐在として赴任しても、その国やローカルから学べることは多い。ふんぞり返っている人はそこにも気づかない。いろんな機会を捉えて、自分の成長の糧にすればいいものを日本と同じような生活にこだわり続けて何になるのでしょう。結局、そういう人たちが求めているのは「現状維持」「成長をしたくない」ということなのでは? 余計なことかもしれませんが、それってその人が働いている会社にとってもよくないのでは、とも思います。「ああいった人間にだけにはなってはいけないものだ」と反面教師的に見えるのは僕だけでしょうか。 

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