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蟻とハリネズミ、東雲に。 1

それにしてもみんないつの間にかいなくなるよな
だから別にそれがどうってわけでもないんだけど
ーー『Pellicule』(不可思議/wonderboy)

脳内住人と本心、外面と。

5DKの家にひとりで僕は住んでいる。
別にお金持ちだとかそんなんじゃなくて。
朝起きて、お水をいっぱい。youtubeを見ながらご飯を食べて、仕事に行く。帰って来たら真っ暗な部屋に明かりをつける。youtubeの音楽を聴きながら入浴し、インスタントラーメンでお腹が膨れて眠くなったら眠る。
いつも通りの日常がいつもと変わらずすぎていた。

そんなある日。
ぱっと目が覚めた時、窓の外は真っ暗だった。
時計を見ると4時半すぎ。
もう1度寝ようとするも、全く眠くなく、仕方なく起き上がった。
特にすることもないからコーヒー片手に部屋のガラス戸を開け、庭をぼーっと見ていた。
朝早すぎるからか、セミも鳴いていない。
静まり返った世界の中で、遠くの田んぼからカエルの鳴き声が聞こえてくる。
よっこらしょ、とあぐらをかいて空がだんだん青みがかって行くのを見つめた。

「何もしなくて大丈夫?」

唐突に声が聞こえた方を見ると床に置いたコップのすぐ横に蟻が一匹。
「毎日毎日こんな生活してて大丈夫かねぇ」
声と共にコップの裏からさらにもう一匹蟻が現れる。
「時間だけは平等なのさ」
「いつ死ぬか分からないから必死に生きなきゃいけないよ」
「やりたいことがない人生はクソだ」
「本気になれない時間は無駄だ」
「お前は本当にそれでいいのか?」
その後を追うように、次から次に蟻が出てくる。どこからともなく。
「蟻が喋って、る?」
コップの方から離れようと腰を持ち上げようと手をついた途端、
「ーー危ないっ!急に動かないでよ!」
今度は自分の背後から声がした。
びっくりしすぎて庭の方へ飛び退いた。
裸足に湿った土の感触が伝わって、気持ち悪かったが、自分の目の前にいた生物にそれどころではない。
ハリネズミだった。
喋る蟻の群の次は喋るハリネズミ。

それがそいつらとの出会いだった。

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