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逆噴射開催と読んだ本(20231026)

 逆噴射小説大賞が開催されて一ヶ月になろうとしています……一ヶ月!? うかうかしていると時が過ぎていきます! 

 現在は100作以上の作品が投稿されています。
 逆噴射の作品締め切りは10月31日の23:59までとなっております。滑り込みでも良いので、800文字で小説を書いてみるのは、いかがですか……! 
 出来が良ければコロナビール(ドリトスも可)がもらえます! 私も欲しい!

 しかしそういう私はまだ一作しか出していません。これからモリモリ書いていきます……!

 それはそれとして、最近読んでいて印象に残ったり良かったりした本の感想を挙げていこうと思います。以前の感想はいつ……2022年の9月……? あれから何があったんですか? 色々とありました。しかし、ひとまず私は本を読みました。なので感想を書いていきます。挙げていきます。


鴇田智哉『句集 エレメンツ』

鴇田智哉『句集 エレメンツ』素粒社、2020

生えている句を作りたい、と思ってきた。草や花がそこにあるように、俳句もまたある。草や花が何かの代わりとしてそこにあるのではないように、俳句もまた何かの言いかえとしてあるのではない。(……)だから私は俳句を、記録や報告や手紙、あるいは日記とは違って、造形物とか音楽に近いものだと思ってきた。今もそう思っている。

 句集です。書き方は素朴なものの、けっこう難解です。
 出てくる季語や単語はそれほど難しくないのですが、〈火が紙にくひ込んでゐる麦の秋〉〈近い未来へアロエの花せり出す〉など、前衛的な楽曲のように難しい俳句が配置されています。展示会に行って作品を眺めてみたら、思ったより難しいと気づくような。
〈電柱で今日の私に出くはしぬ〉は、電柱を鏡と見立てて自分を投影しているのか、別の解釈としては帰宅途中の電柱に疲弊した自分を見出したのか……? と様々な解釈に考え込む一句。しかも無季語なので取っ掛かりが見いだせない。
〈からだごと透けてあかるい冬の水〉冬の冷たさが頭からつま先まで抜けていき、どちらかというと意味を理解しやすい句。あかるいので、野外の水たまりをイメージしました。
 パズルのようにスッキリ解ける句もあれば、入り組んだ印象を受ける句もあり、ギミックを探してうろつきまわる気分。破調や無季語の俳句もあります。
 理解できそうな作品/理解が難しい作品が並列しているので、次第に自分の「理解」という概念もちょっとずつ変わってきます。十全な理解はどのようなものか。何を持って不理解とするのか、そうしたイメージも変化していきます。
〈ひるからのみんなが紙の旗を振る〉のように、解釈が何通りにも分かれそうな作品もあります。ちなみに私は太平洋戦争の時、戦地に出征する兵士を送り出す母親たちをイメージしました。
〈網戸から自分と同じこゑがする〉網戸を鏡合わせとして、ジョン・ウィックの鏡部屋張りに錯視の中で動き回るイメージ。
 ページ数は厚くないのですが、一句一句が絶妙に頭を使うことを要求しています。
 自由律俳句も混じっており、〈どれも優れていますがロッシャー〉〈ご飯ザムザにすっぱ抜かれるフットレス〉など、読者に簡単には理解させないフェーズに入った俳句もあります。ザムザってダイの大冒険? それとも『変身』で害虫に変わった人? 
 いろいろと悩みながら読みました。が、理解しきれていない部分も多々あります。何度も読み返したりメモをすることになりそうな本です。

 日本語はまだまだ伸び縮みすることを教えてくれる一冊です。


川上稔『境界線上のホライゾンⅣ(上・中・下』


川上稔『境界線上のホライゾンⅣ(上・中・下』、電撃文庫、2011

 様々な過去と思惑を秘めた奥州列強。武蔵の対応は――!?
 武田との歴史再現のため三方ヶ原の戦いに臨んだ武蔵。だが、強引な解釈による羽柴の登場により初めての敗北を喫してしまった。そして今、武蔵は関東IZUMOの巨大な浮きドック“有明”で大改修を受けていた。そんななか、関東の北に存在する奥州列強――伊達、最上、上越露西亜との協働について、武蔵は模索を始める。しかし、各勢力もそれに対し動き始め……。様々な過去と思惑を秘めた奥州列強と、はたして武蔵はどのように向き合っていくのか――!?

 を、読みました。第四部です(一冊が800ページぐらいあります)。
 主人公たちが東北各地を回りながら旅をしつつ、最終的に越後で決戦に挑んでいきます。文体が特徴的であり単文なので、一度慣れるとスッと頭に入ってきやすいのが親切な設計。
 ページ数が厚いほどガンガン進んでいける快感はひとしおです。一度に読める読書量というのは限られていますが、面白い作品の場合、ものすごい数のページを進むことができます。昨日より50ページ進んでいる。100ページ進んでいる。進むのは自分の集中力のおかげでもあり、作者による構成のおかげでもあります。
 簡単そうに見える文章でも外側からぼんやりと眺めてみると、高度な造りがされているのだとわかります。勢力も主人公勢力と敵対勢力、第三勢力などが個別に描写されており、大河ドラマのようになってきました。
 また、巻頭カバーにはピンナップ集やHPっぽいリンクが載っています。リンク集が2000年代前半の個人HPみたいで、見てるとなんだか昔を思い出して笑ってしまいますね。令和だとHPってハブ空港みたいにシュッとした鋭利でスマートなイメージがあるのですが、平成時代のフォントや文字のぎっしりさを見ていると、油っぽさをイメージします。
 そして本の内容も、主人公たちが内紛したりロボット戦があったりと、ジャンルもせわしなく行き来します。大きな作品になると一作品でいろいろな作風が作れますね。
 この時点でガチャのシステムが導入されてるようなのですが、この時代はまだスーパーレアが最高位のようです。発見。


神林長平『グッドラック 戦闘妖精・雪風』


神林長平『グッドラック 戦闘妖精・雪風』ハヤカワ文庫、2001

戦術戦闘電子偵察機・雪風とパイロットの深井零は、未知の異星体ジャムとの熾烈な戦闘の日々をおくっていた。だが、とある作戦行動中に被弾した雪風は、零を機外へと射出、自己データを新型無人機へと転送する・・もはや人間は必要ないと判断したかのように。人間と機械の相克を極限まで追究したシリーズ第2作


 ナンバリング二作目。自身が乗り込む電子偵察機の雪風により、戦闘中に放り出されたパイロットの深井零。彼が雪風に舞い戻り、再び戦う話。
 前作までのアクション、戦闘機の装備偏重の話から徐々にトーンが変わり、キャラクターらが雪風についての考察や人間心理についての省察を深めます。
 新しいキャラクターである桂木中尉やフォス大尉、そして前作から続投している頼れる上司のブッカー少佐とともに議論が広がり、徐々に整理されます。哲学的であるため、複数の石を投げ込んだ湖のように、幾つもの論点が広がって波紋になり、さざなみが予測できない方向へと広がります。方向がわからないのにスラスラと読めてしまう不思議。
「フウム」とか「フムン」みたいな独特な言葉も多く、読んでいて楽しい。戦闘シーンの迫力も人間ドラマによって減じません。
 個人的に好きなキャラクターは、新登場であるロンバート大佐。ブッカー少佐や深井とはベクトルがまるで異なるので、いっそうドラマに深みが出ます。90年代でこのキャラクターを登場させられたことには帽子を脱ぐしかない。
 特筆すべきは、メンバーの個人個人でかなり散らばった行動を取っているにも関わらず、組織である特殊戦が瓦解しないこと。全員が人間的な強度や精神性が強いし本当にタフ。
 メンバーたちは人間性について議論しつつ、敵対生物(本当に生物なのかすら疑わしくなっている)のジャムにチームで挑もうとする気概がありました。
 ちなみに389ページ、戦闘機の装備品で〈凍った眼〉という空間受動レーダーがあるのですが、四作品目の『アグレッサー』(2022年発行)では〈フローズン・アイ〉と名称がオシャレになって再登場しています。時代の流れを感じますね!


今回は以上です。次は小説大賞の作品を投稿したい!
また、今回は#逆噴射小説大賞2023感想行為という、面白い企画も編まれています。要するに感想を流すのですが、ピックアップということもあり、私も参加したいですね……!
(終わり)

おまけ

 二作目が書けました。SF世界、妖精みたいな少女に連れられて妖精みたいな少女を探しに行く男の話。



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