AIが進歩した近未来は、太古への先祖返り
3月16日、MicrosoftがCopilotと呼ばれる対話型のAIソフトを発表した。ワードやエクセル、パワポと統合され、Microsoft365のサーバー上に乗っているファイルのデータをchatGPTライクな操作感で新たなドキュメントやグラフ、プレゼンテーションにできるということらしい。
公式ページの謳い文句は次のようなものだ。(グーグル翻訳による)
Excelについても次のようになっている。
まあこうなってくると、企業も全体の方針を決めるトップマネジメントと現場の職人だけ居ればいいという感じで、いまExcelやWordでカタカタやってる管理のための管理をやるだけの中間管理職層は本格的にいらなくなる。会計ソフトがないExcelドカタな会社でも管理会計が一瞬で終わるようになる。人々が仕事をしているふりをするためのお膳立てをしているだけの会社もなくなっていく。
一方で、デジタルを介して得られる情報が、本当にそいつが考えていることなのかどうかわからないというストレスと取引コストが多大なものになって、結局アナログに、対面で腹を割って話さないと分からんということになる。
従って企業自体も小規模で、お互いに気脈を通じた相手と組んで、物理的に訪問したり対面したりできる圏内で商売していくことになるだろう。近代が終わって中世や古代に回帰していく。
もうすでに、会社は中世のギルドのように、同じような興味関心・スキルを持っている人同士の同好会みたいになっているところがうまくいくようになっている。うまくない会社は、昔ながらの上司が技術も知識も経験もないのに偉ぶっていて、周囲から嫌われている。ギルドではお呼びでない無能なおっさんが一番給料を取っているので、その他の構成員の士気を削ぎ、組織を機能不全にしている。
そもそもいまの会社組織を作る土台となっているライン・スタッフ型組織は、ビスマルクがナポレオンを倒すために作り上げた理論に基づくもので、近代の国民国家同士の戦争を戦うための組織だ。参謀(スタッフ)と現場(ライン)を分ける考え方は、コンピュータやネットがなく、情報処理に時間がかかる時代に、素早く現場の状況を本部に集約し、それを戦略に反映し実行するためには最適な組織論だった。
これは別に私が勝手に言っている話でなく、渡部昇一が『ドイツ参謀本部』という中公新書の本の中で書いている話だ。同著を読む時間がない人はこの書評が完結にまとまっていてよい。
このライン・スタッフ型の組織も成熟しすぎて、バカが偉そうに参謀ぶる例があまりにも蔓延るようになってきてしまった。デジタルが当然になりすぎたので、却ってアナログな情報を持っているラインの人間のほうが重要な意思決定に適しているような感じになっている。イージーマネーの時代が終わり、バカにバカみたいな給料を払う余裕がなくなってくれば、ライン・スタッフ型の組織もその役割を終え、いろいろな会社が中世のギルド型になっていくのであろう。
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