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カメラを高校生に貸した。

 カメラを貸した。
 とりあえず今年いっぱい使ってみていいよ、と、5D2 24-105mmの組み合わせで貸した。

 以前写真の撮り方を教えることがあって、そのときは、f分の16を教えた。と言いつつ雨模様で、定型の露出ではなかったけれど。とにかくシャッタースピードとISOと絞りの関係を教えたかったのだ。
 何を撮るかは人それぞれだから教えるものではないけれど、どう撮るかは知識のあるなしが左右する。だからカメラの操作方法をまずは伝えておくことにしたのだ。

 持っているカメラはSONYのコンデジで、小さなセンサーだから絞りの効果は分かりづらい。マニュアルも使いづらいが、仕組みが分かってからオートにすれば、何も知らずにオートで撮ることと断然意味が違ってくる。

 雨の中、かなり大真面目に撮影してくれていた。こいつ、けっこう本気だな、と感じた。

 しばらくして、再び写真を教えることがあった。するとまだ、マニュアルで撮っているじゃあないか。オートとか絞り優先にしていいんだよ、と告げたが、見てみると一緒に来た友人も同じようにマニュアルで撮っているじゃないか。
 これはちょっといいかげんにはできないぞ…。

 とはいえ、自分が教えられることなんて高が知れている。
 今度はせいぜい光をどう見つけていくか、と、構図についてちょっと教える程度だ。
 普段美術を学んでいるらしいので、その辺りはむしろ僕なんかよりわかっている。となればあとは教えられることなんてもうない。

 そして何より、めちゃくちゃ一生懸命。
 朝の日差しに輝くクモの巣なんぞを、ピント合わないとか言いながら何度もトライしている。

 撮らせてもらったものを見せてもらった。
 僕が言うのも烏滸がましいが、とりわけうまい!とか、いいね! となるようなものはなかった。なんとなれば友人の方が構図的にしっかりしていたりする。

 でもね、なんかね、その粘り。
 とにかくきちんと撮りたくて、みんながスーッと通り過ぎて行くようなところでも、座り込んで何度もシャッターを切る姿勢。

 こいつにゃ、ちょっと何かしてやらねば…。

 人にそう思わせることってなかなかない。
 聞けば、休日も撮っていると言う。
 親から拝借したコンデジで、なかなかうまく行かない。だがとても楽しいらしい。
 親とはレンズ交換式のカメラの導入についても相談しているようで、しかしどんなカメラがいいか分からないでいるとのこと。

 だったら、とりあえずカメラ貸すからそれ使いながら考えてみては?

 貸したカメラは、ご存知のことだろうが、10年以上前のフルサイズカメラ。レンズはLレンズの24-105mm 鉄板の組み合わせで、Canonを売った際に、売り払うことができなかったボディだ。レンズも、ならばいつか何かで貸し出す時用にと残しておいたもの。
 個人的には、単焦点レンズを使ってもらって自分で寄り引きすることを覚えて欲しかったところだが、Canonのレンズはこれしかもうなかったし、汎用性は高いから、学校のイベントなどでも使えるだろう。それにフルサイズだからF4とはいえ、ボケも感じられるし、絞りの効果も分かるだろう。

 簡単に操作方法や、ピクチャースタイルについてとか、そう言ったことだけを教えて、あとはググってみなよ、と言って貸し出した。あとはまあ、自身がそれを使って、楽しいと思うか、いや、やっぱりいいやとなるかは問わないようにするつもりだ。

 果たして機材は人を成長させるのか。
 とか言ってみたものの、成長してもらいたいなら、機材は不便な方がいい。ただ、5d2なんてAFもロートルだし、やれることは今から見れば限られているわけで、レンズだってコンデジより倍率低いのだから、それよりは一眼レフを使っているというテンションを得ることの方がベネフィットがあると信じたい。

 スマホで事足りる時代である。
 でも、事足りる、と、楽しいから使う、は、意味が違う。
 意味が違うなら、撮れる絵も違ってくるはずだ。
 だからこんなに写真を気楽に撮れる今、カメラで撮りたいという人がいると背中を押したくなる(それは沼に突き落とすことにもなるのかもしれないが)。いろんなモノが集約されてオールインワンとなっている今、カメラで撮るという行為そのものが特別なんだと言うことを、つまりは、それを持つと進んで撮りに行きたくなるという気持ちを、その学生から改めて教えられた気がして、今日も夜な夜な新しいレンズなんぞを吟味してしまったりするのだ(そう言うことではないんだよ、自分)。

写真と文は関係ないのだけど、日常からお出かけから旅まで寄り添ってくれるのがカメラですよね。

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