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OcuFesができるまで 2013年最大のVRコミュニティ誕生 (6)学生の頃からMRを研究し、Oculusの日本担当社員になった井口さん

2013年8月4日、10日に開催された、Oculus Rift DK1を用いたVR体験会Oculus Festival in Japan。そこには、実はMikulusの名前を名前を冠するコンテンツが二つ出展されていました。一つがGOROmanさんが開発したMikulus、もう一つが、今回ご紹介する井口さんが開発されたMikulus Kinectです。

ちなみに、当時はOculus向けのVRコンテンツに「lus」の語尾を付けるのが流行っていたので、初音ミクをモチーフにしたVRコンテンツの名前がMikulusになるという具合です。

井口さんとVRの関わりはOcuFes関係者の中でも長い側に入ります。学生だった2002年~2004年頃にMR(Mixed Reality)を使ったコンテンツ制作を研究されており、その後、モバイルゲームのエンジニアになられた後もVRへの興味を抱き続けていたといいます。

井口さんが学生の頃に制作したMRコンテンツ

また、少年期をアメリカで過ごした経験から英語に堪能だったため、Twitterでは英語のアカウントからも情報収集をしていました。歴史的名作3Dシューティング「DOOM」のエンジニア、ジョン・カーマック氏がTwitterでOculus Rift DK1を褒めていたことが、特に大きな興味のきっかけになったそうです。(※ちなみに、ジョン・カーマック氏は、後にOculusを担当するCTOに転身しています)

ジョン・カーマック氏がOculus Rift DK1に言及したツイート

こうしてOculus Rift DK1のクラウドファンディングに参加した井口さんは、到着するやいなや、VRコンテンツの開発を始めます。そして、Twitterで同じくOculus Rift DK1での開発に熱心だった人をフォローし始め、GOROmanさんら、当時のVRに熱心な人たちと知り合いになっていきます。

井口さんが当時住んでいた家と、GOROmanさんのXVI社のオフィスが近所だったこともあり、一時期はまるで放課後の部活のように、井口さんが仕事を終えるとXVI社に遊びに行くこともしょっちゅうあったそうです。

井口さんが熱心に取り組んだのが、Oculus Rift DK1とXbox 360のアクセサリーであるKinectとの連動でした。内蔵されたセンサーで人体の位置を取得出来るKinectを使えば、3DoFという自由度しか無かったDK1を、6DoFの自由度かつ、フルボディトラッキング(通称フルトラ)に拡張出来るという試みです。

首の回転だけが反映される3DoFと、回転に加えて前後左右上下の移動も反映される6DoF

初音ミクの3Dモデルを使ったコンテンツだったため、Mikulus Kinectと名付けられました。GOROmanさんが作成されていたVRコンテンツのMikulusとは別物ですが、互いに意識し合いながら開発していたようです。

そして、カフェで開かれるVR体験会「Oculus Festival in Japan」(OcuFes)開催の話題が出ると、XVI社にしょっちゅう遊びに行っていた井口さんはそのまま運営メンバーのチャットグループに加わります。自作のMikulus Kinectの出展者でもありつつ、同時に、初音ミクの権利元であるクリプトン・フューチャー・メディア社へのイベント開催への許諾をとる係としても活躍しました。

ちなみに、握手をする自分(プレイヤー)の3Dモデルとしてはカイトのモデルを使わせてもらっていたため、体験者の中には自分がカイトになっていることに感動している人もいたそうです。


こうしてOculus Riftにどっぷりはまった井口さんは、やがて、当時勤めていたモバイルゲームの会社を辞め、Oculusの日本チームを立ち上げる一員としてFacebook社(現Meta社)に加わります。日本市場からの要望を本社に届けたり、日本の開発者をサポートしたりするなど、日本のVRコンテンツ開発の成長に尽力されました。

2022年現在は独立してフリーランスのエンジニアとして引き続き、VR分野を中心に活躍されています。

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